shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Red Rose Speedway」イスラエル盤

2022-05-29 | Paul McCartney
 「Red Rose Speedway」のイスラエル盤が届いた。発送は3月の末なのにゴールデンウイークを過ぎても届かず、ひょっとしてロシアのドローンに撃ち落とされたんちゃうかと不安だったのだが、2ヶ月近くかかって何とか無事に到着したのだった。一体どこに寄り道しとったんや?
 イスラエル盤は本家ビートルズとジョンのソロ(←当然ヨーコとのコラボ作品は論外...)に関してはほぼコンプリートを達成し、ポールのソロに関しても残すところ3タイトルだけというところまでまで迫っていたので、その内の1枚である「Red Rose Speedway」シルバー・パーロフォン盤が出品されたのを見つけた時はめっちゃ嬉しくて(→因みに残す2タイトルは「Venus And Mars」と「Wings Over America」なのだが、Discogsにも載ってないし過去10年以上 eBayで出品された形跡もないしで、イスラエル盤が出てるのかどうかすら怪しいが...)、速攻で BUY IT NOW したのだった。
 というのもこの「Red Rose Speedway」というアルバム、ポールのソロ作品の各国盤の中では「Wings Wild Life」に次いで入手困難だからだ。実を言うと半年ほど前 Discogsに「Red Rose Speedway」のペルー盤が出品されたのを見つけた時に “どーせペルー盤なんて狙ってるヤツ他におらんやろ...” と余裕をブッこいてセラーに現物写真を送れとちんたらメールしている隙にライバルにかっさらわれた苦い経験があり、今回その二の舞は何としても避けたかったのだ。イスラエル盤って市場に出て来さえすれば価格自体は安いのだが、絶対数が圧倒的に少ないのでチャンスを逃すと中々手に入らない。
 今回入手した「Red Rose Speedway」は€20で盤質もNMと問題なし。ジャケットは見開きではなく、このアルバムとしては珍しいシングル・タイプだ。いつものように盤面を徹底的にクリーニングしてからレコードに針を落とすとA①「Big Barn Bed」がクリアーかつクリスプな音で鳴り始めた。イスラエル盤のお家芸とでも言うべき太いベースの音に支えられ、この曲独特のグルーヴがめちゃくちゃ心地良く伝わってくる。
 一転してスロー・バラッドのA②「My Love」ではポールの情感豊かなヴォーカルを実に上手く表現しており、最初は音を分析的に聴いているのにいつの間にか音楽そのものに引き込まれてしまっているのだから大したものだ。B-SELSのSさんにも聴いていただいたが、“とてもキレイで繊細な音してますねぇ...” と感心しておられた。続くA③「Get On The Right Thing」の爽快感やA④「One More Kiss」の軽やかさ、そしてA⑤「Little Lamb Dragonfly」の噛めば噛むほど味が出るスルメ感(?)と、このアルバムの魅力を十分すぎるほど引き出した見事な音作りだ。
 「Red Rose Speedway」のB面は後半が巨大メドレーになっているが、私はAB面全体を通して1枚のトータル・アルバム的な聴き方をしている。そもそもこのアルバムに入っている曲は超有名曲「My Love」以外はすべて地味ながら聴くたびに味わいの深まる佳曲が揃っており、しかも曲想に統一感があるので、一気通聴すると大きなうねりの中に身を任せてポールのメロディーに浸れる気持ち良さがあるのだ。つまり「Red Rose Speedway」という大曲が1曲あって、それが12楽章に分けられた組曲のようなアルバムという捉え方である。「My Love」はさしずめガーシュウィンの「Porgy And Bess」における「Summertime」みたいなモンだろう。
 だからこのアルバムは曲単位で単品聴きしたり、小さな音で聴いたりしても面白くない。大音量で1枚通しで聴いてこその「Red Rose Speedway」であり、そういう聴き方をすることによって、ベースが気持ち良く張り出すイスラエル盤の音作りがこのアルバムの魅力を最大限に引き出すのだ。
 ということで、今回もイスラエル盤は大当たりでめでたしめでたし(^.^)  今のところ、70年代前半にプレスされたイスラエルのシルバー・パーロフォン盤にハズレ無しだ。
Medley: Hold Me Tight/Lazy Dynamite/Hands Of Love/Power Cut (2018 Remaster)