shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

モノラルのブラジル盤で聴く「Abbey Road」

2019-03-29 | The Beatles
 「モノラルのブラジル盤で聴く」シリーズ第3弾は「アビー・ロード」だ。本国イギリスではオリジナル・アルバムとしてはこのアルバムからステレオ盤オンリーになったわけで、世界的に見ても「アビー・ロード」のモノラル盤がリアルタイムでリリースされたのはブラジルのみ(←イギリスではモノラル・ミックスのオープンリール・テープが発売されたらしいが...)のようだ。
 「アビー・ロード」といえばシンフォニックなサウンドのイメージが強いので、それをモノラル盤で聴いたらどんな感じだろうと興味を持った私は「ラム」「ヘイ・ジュード」に続くターゲットとして早速 Discogs で検索。ブラジル盤らしくGやらG+が並ぶ中で1枚だけ VG+盤が出ており、しかもその商品説明に“Excellent copy almost without any hiss.”(盤質良好でほとんどヒスノイズ無し)とあったので即決。€50が高いのか安いのか分からなかったが、ブラジルのセラーにしては送料が €22と安かったので買いを決めた。
 届いた盤は前回の「ヘイ・ジュード」と同じくブラジル独自のサンドイッチ式ジャケット(←背表紙が無く、ビニールでペラペラの表ジャケと裏ジャケを包んである...)で、裏ジャケにもレーベルにも Her Majesty 表記は無い。一体どんな音で鳴るのか興味津々で盤をターンテーブルに乗せ、針を落とした。
 まず A①「カム・トゥゲザー」だが、ベースがゴツゴツした岩のようにドドドッと迫ってくる様はこれまで聴いたことのない面白さで、まさにベースがブンブン “唸る” という形容がピッタリの怪演だ。A②「サムシング」ではリンゴがパワーアップして “スーパー・リンゴ”(笑)になったような感じで、とにかくドラムスのアタック音が強烈。これぞモノラルの醍醐味である。ベースの重低音がズシリズシリと響く A③「マックスウェルズ・シルバー・ハマー」はポールのヴォーカルがめっちゃ近く感じられてビックリ。ただ、シンセの音は当然ながらステレオ盤と比べるとかなり控えめだ。
 A④「オー・ダーリン」ではポールのシャウトが火の玉ストレートとなってスピーカーから飛び出してくる。まさに硬質な音像が眼前に屹立するといった按配だ。A⑤「オクトパス・ガーデン」はポールの独創的なベース・ラインの妙技を存分に味わえるところがいい。ただ、例のブクブクという効果音はかなり引っ込み気味だ。A面で一番ステレオ盤との違いを感じたのが A⑥「アイ・ウォント・ユー」で、ステレオ盤の “左右にフワーッと広がって音の海に飲み込まれるような感じ” とはまったく異なり、音の世界がやや平面的で小さく感じられてしまうのが難点。高域の伸びもイマイチで、この曲にモノラルは合っていないと思った。
 B①「ヒア・カムズ・ザ・サン」ではポールのベースがしっかりと自己主張しており、まるでジョージのヴォーカルとタイマン勝負しているように聞こえるところが実にユニーク。いやぁ~、ブラジル盤って結構オモロイわ(^.^) しかし B②「ビコーズ」はイマイチ。B③「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」も悪くはないが何か違和感があるし、B④「サン・キング」もステレオの方が合っている。
 B⑤「ミーン・ミスター・マスタード」~B⑥「ポリシーン・パン」~B⑦「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウインドウ」と続くあたりはB面の大メドレーの中で唯一モノラルに合っていると思えたパートで、それまで休憩していた(?)リンゴが俄然張り切り出したように聞こえるのが微笑ましい。やはりロック色が強いトラックとシンフォニックな色合いの濃いトラックではモノラル・サウンドとの相性が段違いだ。
 B⑧「ゴールデン・スランバーズ」~B⑨「キャリー・ザット・ウエイト」~B⑩「ジ・エンド」と続くパートは音場が狭いモノラルには不向きで、“これじゃない感” が濃厚に漂う。ただ、B⑩におけるリンゴのドラム・ソロをモノラルのドスンとくる力わざで楽しめたのはよかった。 B⑪「ハー・マジェスティ」はステレオの方がいい。
 ということで、稀少なモノラル盤「アビー・ロード」を聴いてみて感じたのは、A面はモノラルで聴くと結構新鮮で面白いが、B面の大メドレーはやっぱりステレオの雄大なサウンドが合っているなぁということ。これは想定の範囲内ではあったが、実際に聴いてみると何曲か面白いトラックもあったので、ビートルズ・コレクションの中にこういうのが1枚ぐらいあってもエエかな...というのが正直な感想だ。よって満足度の点数評価は70点ぐらいか。