shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ゴールデンスター・ツイン・デラックス / 梶芽衣子

2013-10-15 | 昭和歌謡
 少し前のことになるが出張で大阪へ行く機会があり、用事が予定より早く済んだので久しぶりにレコード屋を廻ってみることにした。特にどのレコードを探してというのではなく、何か掘り出し物があればエエなぁぐらいの軽いノリで思いついたのだが、この1年ほどオークション一辺倒だったので今時のレコ屋事情はどーなってるんかいなという好奇心もあり、とりあえずミナミの日本橋界隈から攻めてみることにした。
 いつものようにミント→ナカ→サウンドパック辺りからスタートし、順に南下していくコースを取ったのだが、どのお店も “おっ!” と目を見張るような盤はないし、何よりも客が少ない。大阪では老舗の一つだった大十が閉店していたのにもビックリ(゜o゜)  ネットオークション全盛の今、商品の回転が悪いレコード屋は生き残っていけないというシビアな現実を見る思いだ。次に行ったディスクJJなんかもうガラガラで閑古鳥が鳴いており、大十の次はココがヤバそうな雰囲気だ。結局6店廻って収穫はゼロ、このまま手ぶらで帰るのも癪なので、梅田方面も行ってみることにした。
 まず最初に行ったのが第2ビルB2Fにある名曲堂。ここは小さなお店なのに商品の回転が速く面白いレコードが見つかることが多い。今回も弘田ミコたんのシングル盤に一瞬心が揺らいだが、結構なお値段だったので泣く泣くパス。ネットでもお店でも自分の考える値付けより高いものは絶対に買わないのが貧乏コレクターの鉄則だ。
 次に行ったのは一時期このあたりにいくつも店を構えてブイブイいわしていたカーニバル・レコード。今はさすがに経営が厳しいのか2店舗に統合して細々とやっているようだが、ここの歌謡曲LPの在庫は意外と充実しているので侮れない。さすがにそれまで廻ってきたどの店よりもブツが豊富やなぁ... と感心しながらエサ箱を漁っていてヒョイと引いたのがこの「ゴールデンスター・ツイン・デラックス / 梶芽衣子」というベスト・アルバム。裏返して曲目を見ると、彼女のオリジナル曲に加えて「アカシア」や「カスバ」、「東京流れもの」といった昭和歌謡の大スタンダード曲のカヴァーが入っているではないか! これらはみんな6枚組CDボックスにすら入っていない未CD化音源ばかりで、彼女のカヴァーと言えば「夢は夜ひらく」しか知らなかった私はテンション上がりまくり(≧▽≦)  盤質がNMで1,900円なら超お買い得だ。いやー、ホンマに梅田まで来た甲斐がありましたわ。たまには出張もエエですな(^.^)
 このアルバムは2枚組で、A面とC面に「恨み節」や「修羅の花」といった彼女のオリジナル曲を配し、B面にはカヴァー曲、D面には映画「女囚701号さそり」のサウンドトラック(←芽衣子姐さんのナレーションがこれまたカッコエエのよね...)を23分丸ごと収録という構成になっている。家に帰ってイの一番にターンテーブルに乗せたのは当然B面のカヴァー曲集だ。
 まずは西田さっちゃん、いや60年代歌謡曲屈指の名曲B-①「アカシアの雨がやむとき」だが、彼女の少し細いけど芯のある伸びやかなヴォーカルが気持ち良く、オリジナルとは又違った味わいの “芽衣子のアカシア” が楽しめる。ただ、エンディングの軽薄なギターが曲想をまったく理解していないかのような無神経さでゴチャゴチャうるさいのが玉にキズ(>_<)  以前藤圭子特集の時に取り上げたB-②「芽衣子の夢は夜ひらく」は歌・演奏・アレンジすべてにおいて文句なしの名演で、この曲のカヴァーでは1,2を争う愛聴ヴァージョン。イントロのピアノに続いて聞こえてくる “ラララ ララララ~♪” が強烈な吸引力で聴く者を “芽衣子ワールド” へと誘うキラー・チューンだ。
アカシアの雨がやむとき

芽衣子の夢は夜ひらく


 B-④「東京流れもの」も藤圭子特集で取り上げた名曲で(←梶芽衣子と藤圭子ってキャラが被ってるところがあり、カヴァー選曲の傾向も似てますね...)、芽衣子姐さんの東映任侠路線の王道を行くようなやさぐれヴォーカルが細かいところまで好アレンジの行き届いたバックの演奏と相まって実にエエ味を出している。この曲のカヴァーでは “剛の藤圭子” と “柔の梶芽衣子” が私的トップ2ヴァージョンだ。B-⑥「カスバの女」はこのブログではお馴染みの愛聴曲で、ちあきなおみでこの曲に目覚め、青江三奈で更に深くハマり、藤圭子でトドメを刺された私にとってこの曲は重厚なイメージが染みついていたので、最初この芽衣子ヴァージョンを聴いた時は何か物足りなく感じたのだが、二度三度と聴くうちに彼女の愁いを帯びた儚いヴォーカルが心に沁みてきて脳内リフレインが止まらなくなり “この曲でこんな表現法があったのか!” とまさに目からウロコが落ちる思いだった。
東京流れもの

カスバの女


 カヴァー曲以外では映画「明日なき無頼派」の主題歌C-①「ジーンズぶるうす」がいい。さすがはバリバリの女優さんだけあってこの手の “語り風” ストーリーテリングものは抜群に上手い。凡百の歌手とは説得力が違うのだ。ちあきなおみの「喝采」を書いた吉田旺による歌詞も秀逸で、特に “ロックにブルース ウォウ ウォウ ウォウ~♪” のラインなんかもう最高にカッコイイ(≧▽≦)  日本刀や出刃包丁だけでなくショットガンも似合うクール・ビューティー(笑)、梶芽衣子のやさぐれた歌世界が堪能できる名唱だ。又、映画「さそり」シリーズの挿入歌A-③「女の呪文」もアーリー70'sな雰囲気が横溢しており、ある意味オリジナル曲の中で最も彼女の持ち味にピッタリな曲かもしれない。要所要所を引き締めるストリングスや隠し味的に使われているシロフォンなど様々な楽器が絶妙な器楽アレンジを施されており、この曲の名曲度アップに大きく貢献している。
ジーンズぶるうす

女の呪文
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