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shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

My Generation / The Who (Pt. 2)

2011-06-08 | Rolling Stones / The Who
 私は喜び勇んで自室へと駆け上がってアンプのスイッチを入れ、盤をターンテーブルに乗せた。針を落とす瞬間の何とも言えない緊張感、十分許容範囲内のサーフェス・ノイズ、そしてモノラル特有の音の塊がダンゴ状態でスピーカーから物凄い勢いで飛び出してきた時の天にも昇る心地良さ... やっぱり50~60年代の音源はアナログ、それも絶対にモノラル盤に限ると思う。これはあくまでも私個人の好みなのだが、音場的に広がった音ではなくゴリッとした密度の濃い音に、ツルツルスベスベではなく野太くザラついた音にリアリティを感じるのだ。ロックンロールは何はさておきエネルギー感、グルーヴ感に尽きる、というのが私の信条。この迫力満点のサウンドを体験してしまえば、疑似ステレオなんてニセモノは気持ち悪くてとてもじゃないが聴いてられない(>_<) とにかく VG- となっていたこのレコードだが、見た目のヴィジュアル・グレードは VG+ で、ウチのオーディオ装置での実際のプレイ・グレードは EX+ コンディションだった\(^o^)/
 このアルバムは全12曲入りで、うち9曲がオリジナルで3曲がカヴァーという構成。1965年ということで、いかにも60'sといった感じのブリティッシュ・ビート・グループっぽい曲と、R&B 色の強い曲が巧くバランスされて収められているが、そんな中で強烈な存在感を誇っているのがビートリィでも R&B 風でもない、まさにザ・フーというバンドのオリジナリティーここにありといった感じの凄まじいグルーヴで聴く者を圧倒する2曲、A⑥「マイ・ジェネレイション」とB⑥「ジ・オックス」であり、この2曲をそれぞれ LP の両面ラストに持ってきた絶妙な曲配置にも脱帽だ。
 A⑥「マイ・ジェネレイション」はザ・フーを、いや60年代ロックを代表する1曲だが、これはもうザ・フーの4人にしか作り得ない原始的なエネルギーに満ち溢れたロックンロール。イントロからアクセル全開で縦横無尽に暴れ回り、0分55秒から “ドゥンドゥン ドゥドゥドゥン ドゥンドゥドゥ ドゥンドゥン~♪” とハードボイルドなソロを炸裂させるジョン・エントウィッスルのカッコ良さにはゾクゾクさせられる。 “リード・ベース” という、ベース・ギターの概念をひっくり返すような空前絶後のソロである。2分24秒あたりから爆発的な勢いで叩きまくるキース・ムーン怒涛のドラミングも圧巻だ。
 これまで聴いていた CD もオリジナル・モノ・ミックスということで中々良い音を聴かせてくれたが(←「デラックス・エディション CD 」に入ってるのはギター・リフが欠落した中途半端なステレオ・ヴァージョンなので要注意!)、さすがにオリジ盤の音圧は凄まじい。まるでラオウの天将奔烈、北斗剛掌波の直撃を食らったような感じである。それと、ただ本能の趣くままに暴れているような感じを抱かせる3人のアンサンブルだが、緩急というかメリハリの付け方が絶妙で、急加減速を繰り返しながら3分20秒を一気に駆け抜け、そこにつっかえたように歌うロジャーのヴォーカルが乗っかって、これ以上ないと思えるぐらいのタテノリ・グルーヴを生み出しているところもザ・フーならではだ。
 B⑥「ジ・オックス」はメンバー4人の共作によるインスト・ナンバーだが、私の耳にはどう聴いても “ザ・フー版ワイプ・アウト” 。キース・ムーンの破天荒なドラム・スタイルはジーン・クルーパやバディ・リッチといった古き良き時代のスウィング・ビッグ・バンドのドラマーからの影響を感じさせるのだが、ここではベンチャーズのメル・テイラーを彷彿とさせる凄まじいグルーヴ感(←「ライヴ・イン・ジャパン」みたいなドタバタ・ビートが最高!)がめちゃくちゃ気持ちイイ(^o^)丿 ジョン・エントウィッスルの轟音ベースはまるで “ブレーキの壊れたダンプカー” みたいな暴れっぷりだし、ロック界屈指のリズム隊が叩き出すグルーヴに拍車をかけるようなニッキー・ホプキンスのピアノもノリノリで、スリリングな疾走感と血湧き肉躍るような高揚感を煽り立て、破壊力抜群の暴力的なサウンドを生み出している。1965年の時点で、ヴォーカル抜きのインスト・ナンバーでこれほど聴き手の心をワシづかみに出来るバンドはザ・フーをおいて他にはいなかったのではないか。尚、タイトルの“オックス”とはベースのジョンの愛称から取られたもので、「スワンの涙」とは何の関係もない(笑)
 アルバムの半分近くを占めるビートリィなナンバーの中では何と言ってもB③「イッツ・ノット・トゥルー」が出色の素晴らしさ。メロディー良し・演奏良し・コーラス・ハーモニー良しと三拍子揃った名曲名演で、特に「ハード・デイズ・ナイト」の頃のジョン・レノンのようなロジャーの辛口ヴォーカルが気に入っている。 “務所にいたとか、11人もガキがいるとか、中国人とのハーフだとか、父親殺しだとか、どれもこれもみんな嘘っぱちだ!” という歌詞もユニークで面白い。多分ザ・サン(←悪名高いイギリスのゴシップ大衆紙)あたりへのあてつけなのだろう。
 ビートルズっぽいということではA④「ラ・ラ・ラ・ライズ」やB①「キッズ・アー・オールライト」なんかモロにそれっぽいし、A③「ザ・グッズ・ゴーン」ではストーンズっぽさが顔を覗かせる。そうかと思えばジェームズ・ブラウンの A②「アイ・ドント・マインド」や B②「プリーズ・プリーズ・プリーズ」、ボ・ディドリーの B④「アイム・ア・マン」のようなコテコテの R&B カヴァーをやっていたりと、非常にヴァラエティーに富んだ構成で聴く者を飽きさせないところもこのアルバムの大きな魅力の一つだろう。そしてそれを可能にしているのが様々なタイプの楽曲に合わせて歌唱スタイルを微妙に変える器用さを持ったロジャーのヴォーカルで、キース、ジョン、ピートという超名手揃いのザ・フーの中にあって何かと過小評価されがちなロジャーだが、私に言わせればザ・フーのリード・ヴォーカルは彼以外には考えられない。
 ブリティッシュ・ロック史上に燦然と輝くザ・フー衝撃のデビュー・アルバム「マイ・ジェネレイション」、執念で手に入れたこの UK オリジ盤は一生モノのお宝だ。今年はコレを聴いて鬱陶しい梅雨を乗り切るぞ!!!!!

The Who- My Generation Bass Solo


The Who - The Ox - John Entwistle ( Check More Info)


The Who - It's Not True (A Whole Scene Going 1-5-66)

My Generation / The Who (Pt. 1)

2011-06-05 | Rolling Stones / The Who
 キタ━━━(゜∀゜)━━━!!! 今年に入ってUKロックのオリジ盤熱が再燃したことは前にも書いたが、ついに本年度最大の収穫とでも言うべき1枚をゲットした。それがこの「マイ・ジェネレイション」、言わずと知れたザ・フーのデビュー・アルバムのUKオリジナル盤である。このアルバムが発売されたのは1965年12月なのだが、発売元の Brunswick レーベルが67年に閉鎖されたこともあって実際に店頭に並んでいた期間が2年弱と非常に短く、そのまま “幻の名盤” 化してしまったという曰くつきのレコードだ。
 それから13年後の 1980年になってやっと Virgin レコードから再発されたが、(←ジャケット右上のレーベル名も Brunswick から Virgin に変えられていた )、オリジナル・ジャケットそのまんまのカウンターフィット盤(←いわゆるひとつの海賊盤ですね)が出回ったり、21世紀に入ってからもあの Classic Records から200g高音質盤がリイシューされたりと(←大好評につきその後更に150g盤でも再々発されたらしい)、とにかくこのアルバムの人気は凄いモノがある。この盤の権利はバンドではなく当時のプロデューサー、シェル・タルミーが持っており、そのせいでこのアルバムだけ中々CD化が実現しなかったこともアナログ盤人気に拍車をかけたのかもしれない。
 私はまずCDで安く買い、何度も聴き込んで “コレは一生モノ!” と思えた盤だけをオリジナルLPで買うことにしているので、アナログ再発盤には何の興味も無い。大枚叩いてLPを買う理由はただ一つ、良い音で聴きたいから、それも可能な限り最高の音で聴きたいからである。特に50~60年代に出たレコードのオリジナルLPは再発盤やCDの薄っぺらい音とは異次元の濃厚にして豊潤、迫力抜群のサウンドが楽しめるので、大好きなレコードは可能な限りオリジ盤を入手したいのだ。
 しかしこの「マイ・ジェネレイション」は上記のような理由で希少盤化してしまい、オークションでも中々出てこない。英Record Collector Price Guide によると状態の良い物は£400(= 約53,000円!)もするという(゜o゜)  試しにヤフオクで調べてみると 38,000円と52,500円の2枚が、eBay では £125 と£300の2枚が出品されていた。そんな超入手困難盤ではあるが、やはりザ・フーの全アルバムの中で最も若々しいエネルギーに満ち溢れたこのデビュー盤は何としてもUKオリジ盤で聴きたいと思い、4月の半ばからずぅ~っと密かに狙い続けて何度も獲り損ねた挙句、先月末にやっとのことで落札したのだ。それも£27という信じられないくらいの超安値、送料込みでも4,500円である。これが喜ばずにいられようか?
 このアイテム、商品説明に “Record is in Very Good Minus Condition with a lot of surface marks/light scratches, however it plays very well with no skips or pops. Picture Sleeve is in Good Condition” とあり、 “マイナス” という言葉や “たくさん擦り傷あり” “それでも針飛びは起こさずちゃんと聴けますよ” という表記でコレクター達が敬遠したのかもしれない。私は盤の写真をパソコンに取り込んで拡大解析し、 “コレくらいのキズやったらモノ針使えばイケルやろ...” と判断して入札したのだが、余りにも安く落札できたのでかえって不安になり(←この気持ち、ワカる人にはワカリますよね)、実際に届くまではハラハラドキドキだった。
 で、先週の水曜日に仕事から帰ると待ちに待ったこのアルバムが届いていた。イギリス特有のスモール・パケットを開封して中からこのジャケットが出てきた時は大袈裟ではなく感無量(^o^)丿 スリーヴ・コンディションは Good (この場合の Good は “良い” ではなく “及第点” ぐらいの意味。レコードのグレーディングで G というのは下から数えて2番目なのでコレクターはあまり手を出さない)となっていたが、裏ジャケに茶色いシミと小さな書き込みがあるだけだし、表ジャケなんてキレイなもので45年前のレコードとして考えれば極上品だ。
 さて、いよいよ肝心の盤質である。恐る恐る盤を取り出してみると、確かにセンターレーベルにはスピンドル・マークがコレでもかとばかりに盛大に付いているが、盤そのものの傷は予想に反して数えるぐらいしかないし、そのどれもが浅いもので、オルトフォンの太いモノ針ならこの程度の傷など笑い飛ばしてしまいそうだ。きっと前オーナーはこのレコードが大好きでかなり聴き込んだのだろう。そして愛情を持って大切に扱ってきたのだろう。こんな風に色々と妄想するのもアナログLP蒐集の楽しみの一つなのだ。まぁコンディションが予想よりも遥かに良かったからこんな悠長なことを言うてられるのだが... (つづく)

↓キース・ムーン中心のカメラ・ワークに注目!
The Who - My Generation

The Kids Are Alright DVD / The Who (Pt. 2)

2011-06-01 | Rolling Stones / The Who
 (32)「スパークス」は彼らとしては珍しいインスト・ナンバーで、アルバム「トミー」収録のスタジオ・ヴァージョンよりも「ライヴ・アット・リーズ」のボートラとして世に出た火の出るようなライヴ・ヴァージョンの方が圧倒的にカッコイイ。この映画ではウッドストックでのライヴ映像が使われており、白いつなぎのジャンプスーツで切っ先鋭いソロを連発するピート、何かに憑りつかれたかのように髪を振り乱しながら一心不乱にタンバリンを乱打するロジャー、あんまり画面には映ってないけど地響きを立てるような轟音ベースでサウンドの基盤を支えるジョン、奇人が鬼神と化して背後から猛烈にフロントマンをプッシュしまくるキースと、彼らのレベルの高さを改めて知らしめるようなハードボイルドな演奏で、まさに “ザ・フーは男でござる” を地で行くダイナミックなプレイの応酬が圧巻だ。
 (33)「バーバラ・アン」は言わずと知れたビーチ・ボーイズの大ヒット曲(←オリジナルはリージェンツなんやけど、今やもう完全に “BB5の曲” ですな...)のカヴァー。キース・ムーンはザ・フーに加入する前はサーフィン・バンドに入っていて、自身ビーチ・ボーイズの大ファンというから人は見かけによらないものだ。ピートは “俺が嫌いなビーチ・ボーイズを奴は大好きなんだ。” と言っているし、キースとプライベートでも仲の良かったロジャーは “もしもビーチ・ボーイズのメンバーになれるチャンスがあったなら彼は喜んでザ・フーを辞めていただろう。僕らはキースを喜ばせるためによくこの曲をやってたんだ。” とインタビューで語っている。キース・ムーンがドラムを叩くビーチ・ボーイズというのも聴いてみたい気がするが(←でもそれってハーマンズ・ハーミッツのドラムをボンゾがやるようなモンやな...)、ここではシェパートン・フィルム・スタジオでの和気あいあいとしたリハーサル風景が楽しめる。
 キーをもっと上げて歌えと促すロジャー、それに応えて渾身のファルセットで歌うキース、ニコニコ笑いながらゆったりとベースをつま弾くジョン、BB5は嫌いとか言いながらダック・ウォークまで披露してノリノリのソロを聴かせるピートと、みんなホンマに楽しそうだ。特にピートのラウドなギターが爆裂した瞬間にホンワカ・ムードのポップ・ソングからバリバリのロック曲へと変化する所が最大の聴き所。ただ、同じ歌詞を繰り返すキースに対してピートが言った “We did that bit there. Does it come in twice, that bit?” を日本語字幕で “同じこと2回できる?” となってるのは意味不明。 “それ、さっきと同じやん。その歌詞2回も続くんか?” という意味だと思うのだが...(>_<)
 この DVD の日本語字幕には他にも酷い誤訳が一杯あって、ロジャーが “My main ambition is to get back on the road... with the horrible Who, the worst rock 'n roll group in the world.” と語っているのを “世界最低のバンド、フーをもう一度軌道に乗せたい。” はいくら何でもアカンやろ。 “俺はこの愛すべき騒音バンド、フーともう一度ツアーに出たいんだよ。” という意味じゃないのか? そーいえばピートが言った the Fillmore in New York (←ロック・ファンなら誰でも知ってるライヴの殿堂フィルモア・イーストのことですね)を “フィルムホール” とやられた日にゃあ、もう開いた口が塞がらない。その昔、ライヴ・エイドで再結成したゼッペリンのメンバー紹介の時に、フジテレビが雇ったド素人同時通訳がメンバーの名前すら知らずに “ロバート・パワーズとジョン・トンプソンです!” (←誰やそれ???)とやって大笑いさせてもらって以来のアホバカ訳。ロック関係の字幕はせめて最低限の音楽知識を持ったプロにやってもらいたいものだ。
 (37)「フー・アー・ユー」は元々大好きな曲だったが、この楽しさ溢れるビデオクリップを見てますます好きになった。ヘッドフォンをした頭に黒いガムテープをグルグル巻き、赤いTシャツを着て張り切るキースの百面相(?)ドラミング、そしてジョン、キース、ピートの3人でじゃれ合いながら(笑)仲良くコーラス・ハーモニーをキメる姿が微笑ましくて心が和む。めちゃくちゃキャッチーな曲でありながらロック魂溢れるプレイで要所要所をキッチリ引き締めるあたりはさすがという他ない名曲名演だ。
 (41)「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」は「フーズ・ネクスト」の時に貼り付けたリカット・ヴァージョンが極めつけだと思うが、あの映像の元になったのがこの映画で使われたシェパートン・ライヴの時のもの。跳んだりはねたりと元気一杯の“人間風車”ピート・タウンゼンド、マイクを “いつもより多めに回しております” ロジャー・ダルトリー、 “男は黙ってサッポロビール” を貫きながら驚異の速弾きで魅せるジョン・エントウィッスル、そして巨星墜つる直前の最後の輝きを見せるキース・ムーンという、ザ・フーの魅力を凝縮したような素晴らしい映像で、ロジャーとピートのシンクロナイズド風車(←4分30秒あたり)は見ていて楽しいし、シンセのインターバルを突き破るかのようにロジャーが雄叫びを上げ、ピートがジャンプ&スライディングをキメるシーンがスローで映し出される瞬間(←7分50秒あたり)なんかもう鳥肌モノだ。
 演奏を終え、ドラム・セットを飛び越えてヨロヨロと前に出てきたキースにピートが “よぉやった!” とばかりに抱きつくシーンもこの数ヶ月後にキースが急死することを考えれば万感胸に迫るものがある。ピートにはこれがキースとの最後のギグになるかもという予感があったのかもしれない。その後、エンド・ロールのバックに「ロング・リヴ・ロック」が流れ、過去の様々なライヴのエンディング・シーンが走馬灯のようにフラッシュバックされる演出もニクイなぁ...(^o^)丿
 この映画には演奏シーン以外にも、73年にメンバー4人で「ラッセル・ハーティ・プラス」という番組に出た時のハチャメチャ・インタビュー(←キースがどんどん服を脱いでいってパンツ一丁になったり、ピートの服を破いたりと、ムチャクチャやりたい放題してます...)や音楽的リーダーとしての苦悩を吐露するピートの単独インタビュー、キース・ムーンとリンゴ・スターの掛け合い漫才(?)みたいなお喋りなど、ファンにとっては見所満載である。
 ボーナス・ディスクでは「ババ・オライリー」と「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」の演奏シーンでメンバー一人一人を単独で追ったマルチアングルが面白く、特にジョン・エントウィッスルの凄腕ベースには驚倒させられること間違いなし! “ディレクターズ・カット” と銘打ってはいるが、ディスク1の内容は通常盤と同じようなので、カタギのファンは通常盤、コアなファンはこちら、ということでいいと思う。
 最高に “人間臭い” バンド、ザ・フー。そんな彼らの魅力を見事に捉えたこの DVD はザ・フーのファンだけでなくすべてのロック・ファン必見のロック・ドキュメンタリー映画の傑作だと思う。

The Who Bust Out (Sparks at Woodstock)


Keith Moon - The Who (Barbara Ann)


Who are You


Wont Get Fooled Again

The Kids Are Alright DVD / The Who (Pt. 1)

2011-05-29 | Rolling Stones / The Who
 「ザ・キッズ・アー・オールライト」は1979年に公開されたザ・フーのドキュメンタリー映画で、デビューからキース・ムーンの死の直前までのライヴ映像、ビデオ・クリップ、インタビューで構成されている。楽器を壊して大暴れするステージや個性溢れるメンバーの言動(特にキースの奇人変人ぶり!)、人を食ったようなインタビューなど、彼らのクレイジーな側面にスポットを当ててその魅力を見事に描き切ったという点で、数多く出ている彼らの映像作品の内でもベストと言っていい秀作だと思う。
 DVD の43チャプターのうち曲の演奏シーンは約半分の20チャプターで、(22)「サブスティテュート~ピクチャーズ・オブ・リリー~マジック・バス」を除けばどの曲もほぼフル・コーラス見れるのが嬉しい。私が60'sフーの最高傑作と信ずる「アイ・キャン・シー・フォー・マイルズ」が最終段階でカットされたのとアルバム「クアドロフェニア」がほとんどシカトされている点(←せめて「ザ・リアル・ミー」は入れて欲しかった...)を除けば選曲的にもベスト・アルバムとして楽しめる内容だ。
 この映画はまず彼らの名刺代わりの1曲とでもいうべき(1)「マイ・ジェネレイション」で幕を開ける。アメリカのTV番組「スマザーズ・ブラザーズ・ショー」出演時のライヴで、司会者とのやり取りからも彼らのユーモアのセンスが窺えるが、注目はやはりエンディングでのお約束の楽器破壊。ピートがアンプにギターを突き刺す前から煙が出ていることからも分かるようにコレは彼らの楽器破壊をネタにしたコントみたいなモンなのだが、キースが裏方を買収して限度を超える火薬を仕込んでおいたらしく、アンプの爆発が強烈すぎてキースは爆風に吹っ飛ばされピートの髪も爆発状態... 大暴れする3人を尻目に表情一つ変えないジョンにも笑ってしまうが、コレはもうほとんどドリフ大爆笑のノリである。映画のオープニングとしてもインパクトは抜群だ。
 (2)「アイ・キャント・エクスプレイン」は「シンディグ」出演時のもので、デビュー直後の生硬な4人が見れる貴重な映像だ。特に若かりし頃のキース・ムーンの天才的なスティックさばきとワルそのもののロジャーのふてぶてしい歌いっぷりに目を奪われる。(4)「ババ・オライリー」はこの映画撮影の為に500人程度のオーディエンスを招いて行われたシェパートン・スタジオでのシークレット・ライヴの映像で、本調子ではないキースの分までカヴァーしようと張り切るピートやロジャーのハイテンションなパフォーマンスが必見だ。(7)「ヤング・マン・ブルース」は1969年のロンドン・コロシアムでのライヴだが、ライヴ・バンドとしての全盛期にあった彼らの素晴らしいプレイに圧倒される。名盤「ライヴ・アット・リーズ」やワイト島フェスでの演奏と遜色ないカッコ良さだ。
 (11)「トミー・キャン・ユー・ヒア・ミー」はドイツのTV番組出演時の口パク映像で、メンバーが横一列に並んで楽しそうに歌っている姿が微笑ましい。まるで CSN&Y みたいな爽やかなコーラスはあんまりザ・フーらしくないのだが...(>_<) (13)「ピンボール・ウィザード」、(15)「シー・ミー・フィール・ミー」は共にウッドストック・ライヴからのもので、正直言ってロック・オペラ路線があまり好きではない私だが、ライヴになると話は別。やっぱりザ・フーはライヴ・ヴァージョンがいい(^.^) 1975年のアルバム「ザ・フー・バイ・ナンバーズ」から唯一選ばれたのが(20)「サクセス・ストーリー」で、空中高く投げ上げられたゴールド・ディスクをジョンがライフル射撃で撃ち落とそうとするも失敗し、マシンガンを取り出してゴールド・ディスクを木端微塵に破壊するというビデオ・クリップが面白い。
 (25)「ア・クイック・ワン」は1968年にストーンズの「ロックンロール・サーカス」に出演した時の完全ヴァージョン。この曲は短い曲をつなぎ合わせて一つのストーリーに仕立て上げた組曲形式、彼らの言葉を借りればいわゆるひとつの “ミニ・オペラ” で、翌年の「トミー」への布石となった重要なナンバーだ。私はアルバム1枚丸ごと(というか「トミー」も「四重人格」も2枚組...)ロック・オペラというのは途中で中だるみがしてどうも苦手なのだが、この曲は “ミニ” というだけあって異常なくらいのハイ・テンションが持続し、息つく暇もなく8分近い熱演が楽しめる。このザ・フーの演奏が盛り上がりすぎて、それとは対照的に演奏がイマイチ精彩を欠いていたメイン・アクトのストーンズ側が番組自体の放送中止を決定、長年お蔵入りしていたという伝説の名演なのだ。確かにミックが嫉妬するのも頷けるくらいの凄まじい盛り上がりようで、特に後半部分で一気呵成にたたみかける爆発力は圧倒的! この曲はスタジオ録音テイクも含めモンタレーやリーズのライヴでも聴けるが、この “R&R サーカス” ヴァージョンが一番好きだ。(つづく)

My Generation


The Who - I Can't Explain


The Who - Success Story


The Who - A Quick One While He's Away (Rock and Roll Circus)

Live at Leeds / The Who (Pt. 2)

2011-05-25 | Rolling Stones / The Who
 このアルバムはオリジナルの6曲入り LP、それをそのままデジタル化した初期盤 CD、ボートラ8曲を追加した14曲入りの25周年エディション CD、更に「トミー」パートを大量に追加した33曲入り2枚組デラックス・エディション CD、そしてその2枚組+“リーズ翌日のハルでのライヴ CD 2枚”+“オリジ盤を模した6曲入りレプリカ重量盤 LP”+“「サマータイム・ブルース」の7インチシングル”という超弩級の40周年記念スーパー・デラックス・コレクターズ・エディションと、もうワケがわからなくなるぐらい様々な “商品” が入り乱れて流通しているが(←この調子でいくと50周年にはスーパー・ウルトラ・ハイパー・デラックス・スペシャル・プレミアム・コレクターズ・エディションとか出そうやな...)、私としては「ライヴ・アット・リーズ」はオリジナル・フォーマットの6曲入り LP を可能な限りの大音量で聴く、というのが一番だと思う。
 A①「ヤングマン・ブルース」はミシシッピー在住のジャズ・ブルース・ピアニストであるモーズ・アリソンが1957年にプレスティッジ・レーベルからリリースした「バック・カントリー・スイート」(←渋っ!!!)に「ブルース」というそっけないタイトルで入っていた1分半の瀟洒な弾き語り4ビート・ジャズを換骨堕胎してゼッペリンもブッ飛ぶようなバリバリのハードロックに仕立てたもので、モーズ・アリソン盤を持っているにも関わらずライナーノーツを読むまでは全くそれとは気がつかなかった。下に一緒に貼っときましたので興味のある方は聴き比べてみて下さい。
 それにしても凄い演奏である。メンバー全員が鬼神の如きハイ・テンションで凄まじいまでのエネルギーを放射しながら暴走し、 “これぞハードロック!!!” と叫びたくなるようなスリリングな展開を見せている。ピート、ジョン、キースの3人がそれぞれリード・ギター、リード・ベース、そしてリード・ドラムという感じで、ザ・ワン・アンド・オンリーなアンサンブルが爆発する瞬間のこの快感は筆舌に尽くし難い。2分を過ぎたあたりからのロジャーのヴォーカルはロバート・プラントとタイマンを張れそうなカッコ良さで、まさに “世界最強(最凶???)のライヴ・バンド” の看板に偽りナシの大名演だ。
 A②「サブスティテュート」はイギリスで「マイ・ジェネレイション」の次のシングルとして5位まで上がった彼らのヒット曲(←「恋のピンチヒッター」というトホホな邦題は何とかならんかったんか...)。いかにも60'sビート・ポップス然としたスタジオ・ヴァージョンに比べるとこのライヴ・ヴァージョンはキースの怒涛のようなシンバル攻撃によってパワー・ブーストがかけられ、演奏の重心が下がったような感じで躍動感溢れるロックンロールに仕上がっている。
 A③「サマータイム・ブルース」は言わずと知れたエディ・コクランのロカビリー・クラシックスのカヴァーだが、原曲に潜む攻撃性を見事に引き出して全く新しい「サマータイム・ブルース」を作り上げているところが素晴らしい。特にビックリしたのがジョンのテケテケ・ベースで、最初聴いた時は “このギター誰やねん?” と思ったぐらいだ。ザ・フーもベンチャーズが好きやったんやね(^.^) ピートのエッジの効いたギターもめちゃくちゃカッコ良く、 “真夏の憂鬱” なんか吹き飛びそうな勢いで突っ走っている。
 A④「シェイキン・オール・オーヴァー」はジョニー・キッド&ザ・パイレーツがオリジナルで、1960年に全英№1に輝いたヒット曲。ロジャーのヤクザなヴォーカルは貫禄十分で、ジョンのベースもうねりまくって毒を撒き散らす。そしてキタ━━━(゜∀゜)━━━!!! 2分30秒あたりからピートが刻むこのギター・リフはどこをどう聴いても「ゲット・バック」そのものだ(^o^)丿 アップルのルーフトップ・コンサートで寒さにかじかむ手で見事なリズムを刻んでいたジョージ・ハリスンの姿が目に浮かぶ。コレはピート流のビートルズへのオマージュだろう。ビートルズ・ファンはこのリフを聴いて萌えましょう。又、この “ゲット・バック・リフ” から入魂のギター・ソロへとなだれ込むところも鳥肌モノで、ピーンと張り詰めた緊張感にゾクゾクさせられる(≧▽≦) 尚、たまたまゼッペリンのヴァージョンもYouTubeで見つけたので一緒に貼っときます。
 B①「マイ・ジェネレイション」は15分近いトラックだが、あの「マイ・ジェネ」を延々やっているのではなく、いくつものパートから成り立っている組曲風の演奏だ。オリジナルの「マイ・ジェネ」は2分40秒ぐらいまでで(←ブンブンうなりを上げて縦横無尽に駆け巡るジョンのベースに驚倒!)、一転して「シー・ミー・フィール・ミー」へと繋がり、インプロヴィゼイション・パートを経て、8分40秒を過ぎたあたりからアグレッシヴなハードロックへと転じ、「スパークス」から一瞬の静寂の後、最後の大暴れとばかりにゼッペリンの 1st アルバムみたいなサウンドが荒れ狂う凄まじいエンディングを迎える。もう参りましたと平伏すしかない見事な構成力だ。
 B②「マジック・バス」はボ・ディドリー風のビートがユニークなナンバーで、キースが叩くウッドブロックとジョンが刻む単調なベースラインのリズムに耳を傾けていると、 “さぁこれから無茶するぞ!” と言いながらピートのギターがやってきてひと暴れ、ロジャーのブルースハープは絶妙なアクセントになっているし、ジョンは頭の線が2,3本切れたような感じでベースを弾き倒している。キースに至ってはもう無線状態だ。たった3一のアンサンブルでこれだけの破壊力を持ったサウンドを作り上げるとは、いやはや、ザ・フー恐るべしである。
 前回取り上げた「フーズ・ネクスト」を “綿密に練り上げられた美しいハードロック” とするなら、この「ライヴ・アット・リーズ」は “聴く者をアブナイ衝動に駆り立てる凶暴なハードロック”。 ブリティッシュ・ロックが最も熱かった時代の空気を生々しく伝えてくれるプリミティヴなエネルギーに満ち溢れたロック史上屈指のライヴ名盤だ。

Young Man Blues - The Who (Live at Leeds)

Mose Allison Young Man's Blues Mose Allison Sings 1959


Shakin' All Over - The Who #Live at Leeds#

Led Zeppelin - shakin all over
コメント (2)

Live at Leeds / The Who (Pt. 1)

2011-05-23 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーの真の凄さはライヴを見ないと(or聴かないと)わからない、とよく言われる。今でこそ様々なコンサート映像が DVD化されて簡単にその壮絶なライヴ・パフォーマンスの全貌に触れることができるザ・フーだが、1964年のハイ・ナンバーズ名義によるレコード・デビューから1983年のピートによる解散宣言に至るまでの約20年間の間にリリースされた公式ライヴ・アルバムはこの「ライヴ・アット・リーズ」1枚きりである。
 90年代に入って初めて「フーズ・ネクスト」を聴いて彼らの魅力に瞠目するという “遅れてきたザ・フー・ファン” の私も、遅まきながらその噂のライヴを聴いてみようと早速このアルバムを購入した。アルバムといっても私が買ったのはもちろん CD で、しかも25周年エディションとやらでリミックス&リマスターが施され、更にボートラ8曲が追加された超お買い得盤(←その後33曲入りの「デラックス・エディション」も出たけど...)である。「トミー」のロック・オペラ路線に馴染めなかった私もこのライヴ盤で聴けるハードなロック・サウンドは見事にツボで、大好きな「サマータイム・ブルース」や「マイ・ジェレネイション」も聴けて大喜びだった。
 それから数年が経ち、私は50年代ジャズも聴くようになってアナログ・オリジナルLPの音の素晴らしさに開眼、CD で買って内容が特に気に入った盤は “一生モノ” としてオリジ盤LP も買うようになったのだが、やがてその対象はジャズからロック、ポップス、歌謡曲にまで広がった。特に今年に入ってからは自身何度目かのオリジ盤熱再燃で(←サムとデイヴに感謝!)、ザ・フーやクリーム、フロイドといった60's~70'sのブリティッシュ・ロック系で未入手だったUK盤を中心に獲りまくっており、この「ライヴ・アット・リーズ」も激しい競争を勝ち抜いてゲットした嬉しい1枚だ。
 アルバム・ジャケットは当時の海賊盤を模したそっけないもので、タイトルのスタンプの色は赤、青、黒の三種類が存在する。しかも付属品のポスターの文字や見開き内ジャケ左下のクレジット印刷の色の違いなどで何種類ものエディションが存在し、一体どれが1st プレスなのか識別が難しいというコレクター泣かせの盤なのだが、私はコレクターじゃないので音さえ良ければ 2nd プレスでも 3rd プレスでも、ドイツ・プレスでもインド・プレスでも(?)全然OKだ。レコードは聴いてナンボであり、重箱の隅をつつくように考古学的に研究するのはあまり好きではない。因みに私が獲ったのは NM の赤トラ盤、落札額は£17だった。
 この「ライヴ・アット・リーズ」、オリジナルLPの収録曲は全6曲と少なく、トータルで40分にも満たないのだが、アルバムを一気通聴してみて驚いたのは聴き慣れた14曲入りCDとは同じ音源でありながら受ける印象がかなり違うということ。CDでもそれまでの60'sビート・ポップスやロック・オペラ路線とは激しく一線を画すバリバリのロック・サウンドが楽しめたが、オリジナル・フォーマットのLPの方はまるで初期のレッド・ゼッペリンを彷彿とさせるような凄まじいハードロック・アルバムと化しており、その野放図なエネルギーの放射に圧倒されるのだ。
 よくよく考えてみるとザ・フーとレッド・ゼッペリンというのは似ている部分が多い。バンドの音楽的リーダーは派手なステージ・パフォーマンスとは裏腹に頭脳で勝負するタイプのギタリスト(P.タウンゼンド/J.ペイジ)であり、サウンドの要となるドラマー(K.ムーン/J.ボーナム)は豪放磊落なプレイでバンドを引っ張ったがプライベートでムチャクチャした挙句アルコールとドラッグで夭折。ベース(J.エントウィッスル/J.P.ジョーンズ)は寡黙な仕事人というのも同じだし、ヴォーカリスト(R.ダルトリー/R.プラント)は共にカーリーヘアで胸をはだけて歌うというところまでクリソツである。違いと言えば胸毛の有無ぐらいだが(笑)、とにかくこの2つのバンドは不思議なくらいにキャラがかぶっているのだ。
 そのせいかどうかは分からないが、このレコードをプロデュースしたピートは相当ゼッペリンを意識していたようで、それがこの偏った選曲に表れているように思う。膨大なセットリストの中から選ばれているのはヘヴィーでアグレッシヴなナンバーばかりで、全英トップ3シングルの「ハッピー・ジャック」や「アイム・ア・ボーイ」は外されている。このあたりにピートの “60'sビート・グループからの脱却” と “究極のハードロック・アルバム制作” という明確な意図を感じるのだ。
 又、大ヒット・アルバムとなった前作「トミー」からの曲が1つも入っていないのも、 “同じことをやるのは絶対にイヤ!” が信条のピートが “ザ・フー=トミー” というイメージの固定化を嫌ったからではないか。新作ライヴ・アルバムに「トミー」の楽曲を入れるのは彼の言葉を借りれば “厚顔無恥” な行為なのだろう。この選曲からはロック・オペラじゃなくてもザ・フーは凄いんだぜ、という自負がビンビン伝わってくる。
 要するに、ウッドストックやワイト島フェスティバルでの圧倒的なパフォーマンスで自信を深め、ライヴ・バンドとして最も脂がのっていたこの時期のザ・フーのハードボイルドな一面をギュッと濃縮還元して1枚のレコードに仕上げたのがこのアルバムなのではないかと思う。 (つづく)

Summertime Blues-The Who (Live At Leeds)


The Who - My generation- Live at Leeds (PART I)


The Who - My generation- Live at Leeds (PART II)

Who's Next / The Who (Pt. 2)

2011-05-18 | Rolling Stones / The Who
 このアルバムは1969年の大ヒット作「トミー」に続くロック・オペラ第2弾として構想されていた「ライフハウス」が企画倒れとなりノーマルなロック・アルバムとしてリリースされたもので、ピートは “「ライフハウス」の残骸” などと呼んでいたが、いやはや、凄い残骸である。あのグリン・ジョンズをプロデューサーに迎え、ダイナミックでライヴ感溢れるサウンドを盤に刻み込むことに成功しているし、それまでのアルバムに比べても楽曲のクオリティーが格段にアップしている。
 しかし一番の目玉はシンセサイザーの大胆な導入だろう。私はハッキリ言ってシンセの安っぽい音は嫌いなのだが、このアルバムで彼らはその無機質なループ音をまるでリズム楽器のように使うという斬新な発想で絶妙なグルーヴ感を生み出しており、 “シンセは悪!” と信じ込んでいた私にとってはまさに目からウロコという感じだったし、シンセの音がヴォーカルやギターをより引き立てる名脇役として使われているところが何よりも凄いと思う。
 このアルバムを聴くまではザ・フーというとどうしても “飛んだり跳ねたりして暴れるわ、楽器はガンガン壊すわで、まるで荒れる成人式みたいなライヴ” というイメージがあったのだが、シンセのループ音が長々と続く①「ババ・オライリー」のイントロにはビックリ(゜o゜) 何じゃいコレは?と思っているといきなりガーン!と叩きつけるようにピアノが何度も入り、キースのパワフルなドラムスが爆裂、続いて満を持したようにロジャーの力強い歌声が響き渡るところなんかめっちゃカッコイイし、後半部でヴァイオリンがシンセやドラムと組んずほぐれつしながら疾走していくところなんかもう快感の一言だ。そこには暴走するライヴとは対極に位置する知的なロック・バンドの薫りすら漂う。まさに曲良し・演奏良し・アレンジ良しと三拍子揃ったキラー・チューンである。
 シンセと言えば、私がこのアルバムを知るきっかけとなった名曲⑨「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」でも大活躍だ。イントロや間奏で “ピポポポ...♪” という無機質なシンセのループ音をキースのワイルドなドラミングが突き破り、ピートのアグレッシヴなコード・ストロークが炸裂するところが一番の聴き所(≧▽≦)  いつもながらキースの縦横無尽に暴れまくるドラミングの一打一打はまさに圧巻で、この味を覚えるとザ・フー中毒者完成(?)である。ジョンの地を這うようなベース・サウンドはズンズン腹に来るし、気持ちよさそうに歌うロジャーは水を得た魚のようだ。これこそまさにザ・フー名曲数え唄、掟破りの逆シンセ、サウンドのワンダーランド、アックスボンバー三つ又の槍である(←何のこっちゃ!) 8分を超える長さを全く感じさせないザ・フー屈指の名曲名演だ。
 この①と⑨に挟まれた残り7曲も驚くほどレベルが高い。正直なところ、彼らの他のアルバムには何曲かイマイチな曲が入っていることが多いが、この盤には捨て曲が1曲も無いのだ。そんな中でも特に気に入っているのが②「バーゲン」(←コレは “取引き” の意味で、バーゲン・セールとは何の関係もない...)で、くすんだトーンのフォーキーなイントロから一転してキースのドラムが一閃、ロジャーのドスのきいたヤクザなヴォーカルが切り込んでくるところが最高だ(≧▽≦) ザ・フーというとどうしてもキースのドラムス、ピートのギター、ジョンのベースといった風にインストのプレイヤーばかりに目が行きがちだが、ロジャーのヴォーカリストとしての急成長もこのアルバムの聴き所の一つで、特にこの曲の “ザ ベスト アイ エ~ヴァ ハァ~ド♪” と伸ばす所なんかめちゃくちゃ巧いと思う。もちろんキースは相変わらず絶好調で、効果的なフィルインを随所に入れるなど、秘術を尽くして、死力を尽くしてダイナミックなサウンドを作り上げており、ロックな衝動に溢れたカッコ良いナンバーになっている。
 コンサートの定番となったザ・フー・クラシックス⑧「ビハインド・ブルー・アイズ」は静と動のコントラストが実に見事な構成になっており、後半一気に盛り上がってエンディングで再びスローな1st ヴァースでシメるところがたまらない(^.^) コレ、ホンマにグッときまっせ。
 アコギが実にエエ味を出してるブルージーなナンバー③「ラヴ・エイント・フォー・キーピング」、ホーン・セクションの使い方が絶妙なミディアム・テンポのロックンロール④「マイ・ワイフ」、ニッキー・ホプキンスの静謐なピアノのイントロから一転して中盤以降ドラムス乱れ撃ちといった感じでキースの独断場と化す⑤「ザ・ソング・イズ・オーヴァー」、後半に向かって徐々にテンポアップして盛り上がっていく展開がザ・フーらしい⑥「ゲッティング・イン・チューン」、一風変わったサウンド・プロダクションと軽快なノリが楽しい⑦「ゴーイング・モバイル」と、様々なタイプの曲が収められているにもかかわらず、アルバムにビシッと1本芯が通っているような印象を与えるあたりがザ・フーのロック・バンドとしての懐の深さだろう。
 このアルバムにはロックンロールの原始的なエネルギー、うねる様なグルーヴが見事に封じ込められている。ザ・フーを聴かずしてロックを語るなかれ、そう声を大にして言いたくなるようなブリティッシュ・ロックの金字塔的アルバムだ。

WON'T GET FOOLED AGAIN - Special Edition Recut


The Who - Baba O'riley (live Keith Moon)


The Who-Bargain [Who's Next]


The Who, Behind Blue Eyes, with Lyrics, Roger Daltrey

Who's Next / The Who (Pt. 1)

2011-05-16 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーはビートルズ、ストーンズに次ぐブリティッシュ・ロック第3のバンドと言われながらも欧米での圧倒的な人気・ステイタスに比べると日本での認知度は不当なぐらいに低い。それは多分彼らがシングル・ヒット志向のグループではなく №1ヒットを持っていないため、洋楽をヒット・チャート(特に全米)という形で紹介することの多い日本の音楽風土の中で埋没してしまったからだろう。又、AC/DC のケースと同じように怒濤のようなタテノリ・グルーヴで聴く者を圧倒していくその演奏スタイルが、泣きのギターソロを好む日本のロックファンにイマイチ浸透しなかったのかもしれない。だから “ザ・フーって名前だけは知ってるけど曲は聴いたことがない” という人も多いのではないだろうか?
 私が初めて彼らの名前を耳にしたのは洋楽を聴き始めてすぐのことで、何かの本の「ヘルター・スケルター」の曲目解説に “ザ・フーは誰よりもうるさいダーティーなロックンロール・ナンバーを作った、というメロディ・メイカー誌の記事(←「アイ・キャン・シー・フォー・マイルズ」の事らしい...)を読んだポールが、じゃあ自分も作るしかないと思ったのがきっかけで出来た曲” とあるのを読んで、天下のポール・マッカートニーにそこまでさせるザ・フーというバンドに興味を持ったのが最初だった。
 運良くラジオの60's ビート・グループ特集みたいな番組で何曲かエア・チェックできたのだが、その中で気に入ったのが「マイ・ジェネレーション」と「サマータイム・ブルース」。今にして思えばこの時に “ザ・フーと言えばこの2曲” という刷り込み(?)が出来てしまったようで、バンドのイメージとしては現役バリバリというよりも “懐かしのビート・グループ” に近いモノがあった。
 この頃の私はミュージック・ライフや音楽専科といった音楽雑誌の記事から貪欲にロックの知識を吸収しいったのだが、あいにくザ・フーが目立った活動をしていなかったこともあって、彼らに関して入ってくる情報と言えば、楽器を壊しまくるド派手なステージ・パフォーマンスのこととか、キース・ムーンの奇行であるとかといった、音楽以外のことばかりだった。
 私がリアルタイムの新譜として彼らのアルバムを聴いたのは1978年の「フー・アー・ユー」が最初で、シングル・カットされたタイトル曲の “フゥ~ アーユー フッフッ フッフ~♪” というキャッチーなサビのコーラスが脳内リフレインしていた時期があった。今の耳で聴けばこの曲は「ババ・オライリー」から続くシンセ・サウンドを効果的に使ったアレンジの集大成のようなナンバーなのだが、洋楽ロックを聴き始めてまだ2,3年というド素人の私は、バンド名をタイトルに盛り込んで “アンタ一体誰なん?” を連呼するこの面白い曲を軽快なポップ・ロックという感覚で楽しんでいた。
 真の意味で私が彼らの魅力に開眼したのは例の「カンボジア難民救済コンサート」を見た時で、あのコンサートの主役はポール・ファンの私の目から見ても間違いなくクイーンとこのザ・フーだったように思う。ユニオン・ジャックが一番似合うのは彼らだということをイギリスのファンはよく知っているのだ。NHK放送分は「ババ・オライリー」がカットされて3曲のみだったのが惜しまれるが、マイクをブンブン振り回すロジャーや腕をグルグル回してパワー・コードを弾き続けるピートのパフォーマンス(←人呼んで “風車奏法” って、ビル・ロビンソンかよ...)はめちゃくちゃカッコ良かったし、「シー・ミー・フィール・ミー」の後半部の異常なまでの盛り上がりようはまるでハマースミス・オデオン全体が揺れているような凄まじいノリの嵐。この思わず身体が動いてしまうようなグルーヴ感こそがザ・フーの本質であり、このライヴ映像を見ても何も心に湧き上がるモノがなければその人は所詮ザ・フーとは縁がなかったということだろう。とにかく私はこの時初めて彼らの凄さを垣間見れたように思う。
 お調子者の私は早速 “あの感動をもう一度!” とばかりに名盤の誉れも高い「トミー」を借りてきて聴いてみたのだが、コレが全くの意味不明。そもそもロック・オペラって何なん?という感じでワケが分からないままに2枚組が終了。しかも78年にサウンドの要とも言うべきキース・ムーンを失ったザ・フーは80年代に入ってすぐに解散、私の中で彼らは再び “過去のバンド” になろうとしていた。
 そんな私がザ・フーという名前を久々に耳にしたのはそれから約10年経った1993年のこと、大好きなヴァン・ヘイレンがライヴ・アルバム「ライト・ヒア・ライト・ナウ」でザ・フーの「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」(邦題:「無法の世界」)をカヴァーしたのだ。恥ずかしながらザ・フーのオリジナル・ヴァージョンを聴いたことはなかったのだが、ヴァン・ヘイレンのカヴァーを聴いてその圧倒的なグルーヴ感にシビレまくり、 “ザ・フーにこんなエエ曲あったんか!” と慌ててこの曲が入っているCDを買いに走ったのを覚えている。それがこの「フーズ・ネクスト」(1971年)であり、私的には文句なしにザ・フーの最高傑作アルバムなんである。(つづく)

Who Are You by The Who


The Who See Me Feel Me


【おまけ】相変わらずエディー凄っ!アレックスはムーニー憑依状態でノリノリやね(^.^)
Van Halen - Won't Get Fooled Again ( LIVE inside the 5150 studio )

Love You Live / Rolling Stones

2009-05-20 | Rolling Stones / The Who
 私が一番よく聴くストーンズは以前にも書いたように60年代後半の “完全なるオリジナリティーを確立した” 頃の盤なのだが、70年代の盤も同じくらい愛聴している。ブライアン・ジョーンズの死、オルタモントの悲劇を乗り越え、ビートルズというライバルがいなくなったロック界で、いささかも初期の衝動を失うことなくその熱いロックンロール・スピリットを武器に彼らは転がり続けた。
 まずは彼らの代表曲の一つである「ブラウン・シュガー」入りで例のアンディ・ウォーホールの “ジッパー付きジャケット” でも有名な「スティッキー・フィンガーズ」、ロックンロールやブルースに加えてスワンプ・ロックにまで手を染めたごった煮風2枚組「メインストリートのならず者」、個人的には全米№1ソング「悲しみのアンジー」よりも「スター・スター」の疾走感に魅かれる「山羊の頭のスープ」、アルバム・タイトル曲が私のようなロックンロール愛好家のアンセムとなった「イッツ・オンリー・ロックンロール」、ロン・ウッド加入が吉と出てサウンドにふてぶてしさのようなものが加わった「ブラック・アンド・ブルー」と、もう出すアルバムすべてが傑作なのだから恐れ入る。これらのアルバム群はすべてリアルタイムで経験したものではなく60年代ストーンズを聴いた後で1枚ずつ買っていったのだが、そのきっかけとなったのが、個人的にはスタジオ・アルバムも含めて彼らのベストと信ずるこの2枚組ライブ・アルバム「ラヴ・ユー・ライヴ」である。
 今もパソコンに向かいながら聴いているのだが、それにしてもこのテンションの高さは何なのだろう!アグレッシヴでアナーキーでとてつもなくワイルドなロックンロールのアメアラレでこの時期の彼らがいかにノッていたかがダイレクトに伝わってくる熱い演奏だ。まずはリオのカーニバルのような打楽器の乱れ打ちからELPの「庶民のファンファーレ」のイントロが流れ、この究極のロックンロール・ショーがスタートする。いきなり響き渡る①「ホンキー・トンク・ウイメン」のギター・リフがたまらなくカッコイイ(≧▽≦) ②「イフ・ユー・キャント・ロック・ミー」が信じられないことにいつの間にか「ゲット・オフ・オブ・マイ・クラウド」に変わっている。この繋げ方、ニクイねぇ!キースが歌うノリノリの④「ハッピー」→このネチッコさにハマるともう抜け出せない⑤「ホット・スタッフ」→言葉を失う最高のロックンロール・ナンバー⑥「スター・スター」と、もうA面だけでメシ3杯は食えそうだ(^o^)丿 
 B面に入ると一転、①「ダイスをころがせ」、②「フィンガープリント・ファイル」、③「ユーガッタ・ムーヴ」、④「無情の世界」といったブルージーなナンバーの波状攻撃だ。更に4面中唯一トロントの小さなクラブで録られたC面はブルージーどころか完全なコテコテ・ブルースを嬉々として演奏しており、ミックのハーモニカも聞けるわ、ボ・ディドリーの曲も演ってるわで、これを聴けば彼らのルーツが明確に浮き彫りになるという寸法だ。
 ブルースもエエねんけど、やっぱりストーンズはアップテンポのロックンロールに尽きると考えている私のようなロックンロール・アディクトにはD面はこたえられない展開で、①「イッツ・オンリー・ロックンロール」、②「ブラウン・シュガー」、③「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」、そして④「悪魔を憐れむ歌」と、ストーンズ全キャリア中最高の19分32秒が満喫できると言っても過言ではない。特に④はスタジオ音源を遙かに凌ぐファンキーなノリが圧巻だ。もしあなたがロックンロール大好きで、万が一このアルバムをまだ聴いたことがないとしたら、ぜひとも一聴をオススメしたい。英語に See Naples and die. (ナポリを見て死ね)という諺があるが、まさにListen to LOVE YOU LIVE and die! と言いたくなるような、ロックンロール・ライブ名盤中の名盤だ。

Rolling Stones - Sympathy For The Devil

Through The Past Darkly / Rolling Stones

2009-01-23 | Rolling Stones / The Who
 音楽の話をしていてローリング・ストーンズの話題になると私はいつも「どの時代のストーンズが一番好き?」と聞いてしまう。何と言っても約半世紀の間第一線で活躍しているバンドなのだ。昔「ストーンズは変わらへんからどれを聴いても同じ」と誰かが言ってたのを聞いたことがあるが私は全然そうは思わない。確かにミックのヴォーカル・スタイルやキースのギター・サウンドに大きな変化は見られないが、出てくるバンドの音はちゃーんとその時代を反映したものになっている。私が一番好きなのは、古いR&Bやブルースを再生することから脱却し、独自のロックンロール・スタイルを完成させた60's後半(シングルでいうと「黒く塗れ!」~「ホンキー・トンク・ウイメン」あたり)のストーンズで、この時期がストーンズの純粋な熱気という意味では最高だと思う。ミックのヴォーカルは成熟し始め、キースはリズム・ギターでR&Bに不可欠な音の壁を築き上げ、ビル・ワイマンとチャーリー・ワッツのリズム隊は腰の入ったバック・ビートに徹し、そして当時のリーダーであるブライアン・ジョーンズはキーボードからシタールまで様々な楽器をこなし、まさにストーンズ・サウンドの要の役割を果たしていた。そんな最も脂の乗ったストーンズの魅力が凝縮されたベスト盤がこの「スルー・ザ・パスト・ダークリー」。手持ちのCDが薄っぺらい音だったのでUKオリジナル・モノラル盤を eBay で取ったのだが、期待通りの迫力満点な音に大満足。ただ、マニアが喜ぶ八角形の変形ジャケットは実用性ゼロで不便極まりない(>_<) 中身の方は言わずもがなの素晴らしさで、ビートルズの真似をして失敗した「サタニック・マジェスティーズ」の教訓から再び基本に戻って彼ら本来のストレートなロックンロールで勝負した①「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」が実にすがすがしい。やっぱりストーンズはこうでなくちゃね。④「夜をぶっとばせ」はゴキゲンなピアノがサウンド全体を支配、途中ビートルズやビーチ・ボーイズみたいなコーラス・ハーモニーが聴けるところなんかもストーンズとしては異色のナンバーだが、この疾走感溢れるノリはさすがストーンズという他ない。64年録音の⑤「ユー・ベター・ムーヴ・オン」は⑪「シッティン・オン・ア・フェンス」と共にこの盤では初期の録音で、どちらもどこか懐かしいというかホッとさせるサウンドだ。ジョンとポールがコーラスで参加した⑥「ウィー・ラヴ・ユー」は私の大好きな曲で、緊張感溢れるイントロのピアノ、強靭なグルーヴを生み出すリズム隊、混沌としたサウンドの中から顔をのぞかす歪んだギターや咆哮するブラス群と、ムチャクチャ一歩手前で見事なバランスを保ちながら音楽が前へ前へと進んでいく様はめっちゃスリリング!⑧「シーズ・ア・レインボウ」は凛としたピアノの音色が耳に残る実にメロディアスなポップ・ナンバーで、ジョン・ポール・ジョーンズのストリングス・アレンジもお見事。ストーンズらしくないということであまり話題に上らないが、これは名曲だと思う。イントロのギターの入り方がめちゃくちゃカッコイイ⑫「ホンキー・トンク・ウイメン」は粘っこいリズムが生み出すグルーヴ感が最高だ。バック・トゥー・ザ・ルーツ... ストーンズにとってこれ以上のものはない。このようにして激動の60'sを乗り切ったストーンズは更に加速しながら70'sも転がり続けることになる...

We Love You - The Rolling Stones RARE VIDEO