蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ディパーテッド

2007年11月15日 | 映画の感想
昔、アメリカ(だったか・・・)映画で、登場人物のほとんど全員が死んでしまうというストーリーがはやったことがあって、日本でも、似たような作品がいくつか作られたことがあったようです。

私が覚えているのは(映画ではありませんが)、本宮ひろしさんが、マンガ(たしか「大ぼら一代」というタイトルだったと、記憶していますが・・・未確認)の連載が終わった後に「一回そういうのをやってみたかった」とコメントしていた気がします。
しかし、最終回近くになって突然(あまりそれまでのストーリーとはつながりなく)次々死に始めたので、連載を読んでいた私は「ストーリーが行き詰って、もう投げ出したくなったんじゃないの?」なんて生意気に思っていました。

字幕によると「departed」というのは「死者」のことで、この映画でも登場人物はほとんど殺されてしまいます。

マット・デイモンが警察にもぐりこんだ(ギャング側の)モグラ役。モグラの役目についてあまり苦悩することもなく、ひたすら自己中心的に自分の利益(だけ)を追求する、という役柄でふだんの彼の役のイメージとは少々違う感じ。

一方ディカプリオは警察がギャング側に送りこんだモグラ(覆面警官)の役。こちらはなんとか覆面警官というやっかいな立場から逃れようとするけれどうまくいかないという設定で、これもふだんの役のイメージからすると違和感がありました。
マット・デイモンとディカプリオを入れ替えるとぴったりする感じなのですが、スコセッシのディカプリオびいきが出た配役なのでしょうか。

モグラ同士の戦いという、かなり入り組んだストーリーをわかりやすく説明していますが、毎度のことながらこの監督の作品は(現代にあっては)少々長すぎるように思いました。
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中国雑話 中国的思想

2007年11月13日 | 本の感想
中国雑話 中国的思想(酒見賢一 文春新書)

中国史に関するエッセイ。
あとがきによると著者は、自分の書いた中国の史話について中国人から「中国ではこんな考え方はしない」といわれるのを大変恐れているそうで、中国人の思想や考えの背景になっていそうな事物について研究することで、そういう事態を避けようとしているそうです。

冒頭の一編は劉備に関するエッセイですが、その他はそうした中国人、中国史のバックボーンとなっていそうな、仙人思想、関羽信仰、孫子、中国拳法などが主題となったものとなっています。

正直にいうと、全般にテーマをさらっとなめた程度の内容が多くて、その独特の視点、解釈に特徴がある酒見さんの小説と比べると、やや期待はずれの内容でした。
ただ、中国拳法に関するいろいろな挿話は、私自身全く知識がなかったので興味深く読めました。
中国拳法って何千年も歴史があるのかと勝手に思っていたのですが、太極拳など有名な拳法が盛んになったのは清朝のころからだそうです。
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硫黄島からの手紙

2007年11月08日 | 映画の感想
作ったのはクリント・イーストウッドなんだけど、登場人物はほとんど日本人でセリフは日本語。カットバックシーンとかに若干ウソっぽい感じがありますが、外国人製作とは思えない出来です。(というより日本人が作る戦争映画より随分マシなような気も・・・)

栗林中将は、慈愛に満ちた父親という感じの描かれ方で、部下に厳格で有能な将軍というイメージはありません。(現実には家族への手紙の内容からは想像できないほど士官には厳しい要求をする人だったらしいですが・・・)

主役の二宮さんは、この映画に限らず、各方面で俳優として評価が高いようです。私は彼の出演作を初めて見たのですが、なんかやる気なさそう、だるそう、という雰囲気が漂っていて、今ひとつかなあ、と思いました。

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銃士伝

2007年11月05日 | 本の感想
銃士伝(東郷隆 講談社文庫)

東郷さんの著作を読むのは初めてなのですが、モデルガン関係の雑誌の編集をしていらしたという経歴からして、銃器に関心が高い方なのでしょう。

この本は、銃に絡んだ日本史のエピソードを材料にした短編集で、長篠合戦、関が原、幕末、明治期、日中戦争、太平洋戦争と時代順に9編が並べられています。

「銃士隊」(長篠合戦における細川家の部隊の話)、「香水」(桐野利秋の話)、「木の上」(太平洋戦争のペリリュー島の攻防の話)の3編が気に入りました。

「銃士隊」は戦国期の鉄砲の使用方法が詳細かつリアルに描かれ、臨場感がありました。

「香水」は、「人斬り半次郎」と恐れられた桐野が、(史実かどうか知りませんが)実は香水を愛用するような洒落者だったという話で、短い話ながらダンディでありながらハードボイルドな桐野像が新鮮でした。

「木の上」はすご腕日本人狙撃手をアメリカ側から描いた話。ペリリュー島の攻防戦は一般にはあまり有名ではありませんが、アメリカ側の損耗率はおそらく第二次世界大戦中最悪といわれるほどで、(最後は悲惨なバンザイ突撃で終わったものの)日本の中川大佐を中心とした戦闘指揮は(純軍事的には)もっと評価されてもいいものでしょう。
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カポーティ

2007年11月04日 | 映画の感想
斬新な取材方法や文体で、ニュージャーナリズムの旗手とされた作家カポーティが、代表作「冷血」を書き上げていく過程を描いた映画。カポーティは、その作品もさることながら、特異な私生活ぶりもアメリカでは(ややスキャンダラスに)有名だったようで、そうした背景をよく知っていたなら(私はよく知らないのだが)、この映画はとても楽しめそうだ、と思った。

カポーティは、田舎で発生した一家皆殺し強盗犯の一人に何度も面会して、その信頼を得て内輪話を聞くことで「冷血」を書いていく。犯人の方は自分がネタにされていることには気づいておらず、有名な作家の助力で多少なりとも情状を良くできないかと考えていたようですが、やがて作品が完成に近づく頃、犯人は死刑となってしまう。

全般にカポーティに批判的な感じがするのだが、画面に出てくる役者は丸っこい感じのキューピーみたいな外見で、話す声は幼い女の子のように甲高いので、見ている私は、「ホントはこいつ、そんなに悪い奴じゃなにのかも」みたいな印象を抱いてしまった。
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