蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

頬に哀しみを刻め

2024年07月16日 | 本の感想
頬に哀しみを刻め(S.A.コスビー ハーパー)

黒人のアイクは庭園管理を行う小さな会社の経営者。息子のアイザイアはゲイで男性のデレクと結婚していたが、二人は銃撃され殺害されてしまう。デレクの父で白人のバディ・リーは進展しない捜査にいらだち、アイクにともに犯人探しをしようと誘う。アイクは気乗りしないが、ある事件をきっかけにバディの提案に乗ることにする・・・という話。

殺された息子たちは人種は違う(黒人と白人)が夫婦で、代理出産させた娘を育てており、二人ともに親たちはゲイに理解がなく息子たちを受け入れることができない。アイザイアの父はかつてはギャングの有力メンバーで殺人罪で服役経験があり、デレクの父はアル中で銃器の扱いに習熟している・・・という設定だけでも読む前からクラクラしてくるが、アメリカではありふれた光景なのだろうか。

主人公がスネに傷持つ身という設定はよくあるが、その傷はやむにやまれない事情があってのもので、本当はいい人なんですというパターンが多い。
本書の主人公のアイクはそういう類型から遥かに遠い。発想が非道なギャングそのもので、終盤にアイクが思いつく一発逆転のアイディアは、これまでに読んだり見たりしたことがないような(主人公としては)極めて悪辣(だが痛快でもある)なもので、読んでいる方がびっくりしてしまった。そこの辺りが本書の強い魅力になっていると思う。

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