蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

貧者の戦争

2022年03月13日 | Weblog
貧者の戦争

ウクライナは貧しい国ではないが、軍備を比較すれば、お大尽のロシアに比べると貧者といえるだろう。
その貧者が玄人の予測に反して長い時間リッチマンの攻勢に耐えている。

欧米諸国から供与された携帯兵器(対戦車砲、対空砲)の威力が想像以上らしい。
映像をみると、民間人の乗用車のトランクで運ばれてきた対戦車砲ジャベリンは、おおよその方向を合わせてボタンさえ押せばあとはミサイルが勝手に?的中させてくれるように見える。
もっとも「どのあたりに敵がいるのか」を知るのが最も難しいわけだが、おそらくそこは欧米諸国からほぼリアルタイムでロシア軍の位置情報が提供されているのだろう。

ジャベリンも決して安価とは言えない平気だが、多分全量供与による武器で、ほぼ素人が操作する携帯兵器で1台数億円はしそうな新鋭戦車(と乗員)が撃破されてはたまらない。これが航空機ならなおさらだ。
同じような理屈でたった1発の長距離ミサイルで建造費が数千億円規模の大型空母が無力される恐れがある。

アメリカや西側諸国は、中東やアフリカ、アフガンで自分たちがリッチ側としてこうした貧者の(コストが安い割に破壊力があなどれない)兵器に苦しめられてきたのだが、それが今は逆転しているし、背後に高度なインテリジェンス支援があれば、さらに効果的なのだろう。

健闘が伝えられる貧者側ウクライナだが、量的な軍事力では対抗できるはずもなく、味方からのリアル打撃力による支援も期待できない状況で、守っているだけでは遠からずすり潰されるように主要都市を占拠されてしまいそうだ。
大変不謹慎なもの言いになってしまうのだが、戦史に興味がある人なら、ハリコフといいう地名と現在の戦況からマンシュタインのバックブローを連想するかもしれない。
1943年2〜3月、スターリングラードで甚大な被害を受けた南部のドイツ軍は勢いに乗ったソ連軍の攻勢によって戦線の維持すら難しくなっていたが、南方軍集団のマンシュタイン司令官は、残った機動戦力をかき集めてソ連軍の伸び切った補給線を突き、逆転攻勢に成功、ハリコフを奪回した。
ウクライナ空軍は相応の兵力を維持しているそうだし、マンシュタインのような知恵者が出現して乾坤一擲の攻勢でキエフ前面のロシア軍を追い払う・・・そんな夢想をしてしまった。

独ソ戦では、3月も下旬になると今戦地になっているあたりは泥濘化し、軍隊としての機動はほとんどできなくなって休戦状態になったそうである。土木技術が発達した今ではそんなことはないのかもしれないが、ロシア軍もあまりモタモタできないと思い始めているかもしれない。
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