蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

アメリカン・ハッスル

2015年01月02日 | 映画の感想
アメリカン・ハッスル

主人公のアーヴィンはクリーニングなどの商売が本業だが、エイミーというパートナーを得て貸金の仲介をするフリをして手数料だけを取り逃げする詐欺で大儲けしていた。
しかし、FBIの囮捜査に引っ掛かり、他の詐欺師への捜査への協力を強いられる。
協力しているうち、カジノ誘致にからんで市長や大物議員、マフィアまで登場する贈賄事件に巻き込まれることになる・・・という話。

実話に基づくストーリーで、アーヴィン役のクリスチャン・ベイルは1:9の髪型やデカいサングラス、太鼓腹までモデルの実在の人物とそっくりにしたらしい。
このため、私ははじめのうちアーヴィンがベイルだとは気づかず、主役はもう少し後で出てくるんだろうなあ、と思っていた。
何しろ冒頭から、肥満体型のアーヴィンがヅラをノリで頭に張り付けて髪型?を整えているという、何ともショボいシーンからスタートするので、事前に知っていない限り、この主役をあのベイルが演じているとは、誰も気づかないんじゃないだろうか?

ベイルのこうした怪演にひっぱられるように、妻役のジェニファー・ローレンス(この人も、あの「ウインターズ・ボーン」の少女役と同一人物とは思えない)、愛人役のエイミー・アダムスも画面からはみだしそうな勢いのパワフルさ。少々ややこしい筋を追うより、3人の躍動を楽しむ映画だと思えた。

エイミー・アダムスのFBI捜査官を誘惑するシーンが印象的で、「たまらんなあ、こんなことされちゃ」って感じだった。

蛇足:「hustle」に「詐欺」という意味があることを、今回初めて知った。
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数字は武器になる

2015年01月02日 | 本の感想
数字は武器になる(野口悠紀雄 新潮社)

著者の経験にいると工学の大学院で研究しているときより、大蔵省に入ってからの方がはるかに多く数字を使う機会があったという。官僚や政治家は数字を好み、説得するには数字が不可欠だったからだ。

ここから先は私の推測だが、官僚や政治家と交渉する時に使う数字は何も高等数学により導き出すものではなく、四則演算、歩合、せいぜい負の数の概念(赤字の表現)が必要なくらいで基本的に小六までに学習することで充分なはずだ。数列や微分なんていってもセンセイ方に通じるわけがない。

私も仕事の中で数億円、数十億円の投資が算数程度の計算による想定で決定される場面を何度も見てきた。結局、投資の結果なんてやってみないとわからないので、投資効果の想定は、それらしく出来ていて計算経過が誰にでもわかるようになっていれば十分だと思う。計算の途中で微分なんか出てきたらそれだけで、怪しいものと思われるのがオチだ。

著者もおおよその規模のイメージを数字で把握することが重要、と主張し、フェルミの方法論を提案している。
例えば、日本のGDPが約500兆円(ここ数年変わらないので覚えやすい、という軽口が面白かった)と覚えておくと、経済関係の数字の妥当性の検証がしやすい、というのは「なるほど」と思えた。

エニグマの話からはじめてRSA暗号を説明した章(RSA暗号の仕組みは本書ではややわかりにくい(というか紙幅の関係もあってかよくある程度の説明にとどまっている)。「仮想通貨革命」での説明がバツグンにわかりやすいので、興味のある人には薦めたい)、
そして、
大航海時代のリスク分散の仕組みからはじめて、リスクに挑戦しなくなった日本企業を嘆く章もよかった(イタリア等では資本の集積が十分でないゆえに危険分散の技術が発達し、中央集権が進んで王権に国富が集中していた中国では危険分散の技術が発達しなかった、という説が面白い)。「航海が必要だ。生きることは必要でない」というハンザ同盟のモットーが印象的だった。

なお、著者の作品はちょっとしたこぼれ話を紹介するコラムがとても面白く、本書はその数が多くて満足できた。本文の方は著者のエッセイの愛読者としては「これ読んだことあるな」と思ったものもけっこうあったが。
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