蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

孤独の価値

2015年01月14日 | 本の感想
孤独の価値(森博嗣 幻冬舎新書)

森さんがデビューした頃は、世間一般にはネットがあまり普及していなかった。森さんは自作のホームページで日記を毎日更新(ほぼ間違いなくデイリーに更新されるので読むのがとても楽しみだった)して、作品制作のプロセスを公開していた。一時期まではメールで感想を送るとほぼすべてにリプライしたりしていたらしい。
今では当たり前のように思えることも、当時としては極めて斬新で「すべてがFになる」から始まるS&Mシリーズの人気上昇に大きく貢献していたと思う。
一方、森さんは、ホームページの日記の中でも、こうした活動は自らの著作のプロモーションにすぎない、という主旨のことを繰り返し述べている。並の作家なら、あえて「商売のためにやってます」なんて本音は言わないのだろうけど。
このように、森さんは、ネットを通して繋がるという点においては先駆者なのだが、本書ではそうしたコミュニケーションは必ずしも必要ではなく、一人っきりで深く考えに沈むことに本当の価値があると述べている。

森さんは大学の先生を辞め、今は奥様と二人(+2頭の飼い犬?)かなり人里離れた場所で、拘束が少ない自由な生活を送っているそうで、このような日常を、理想に近づけたものであると述べている。
私などもそうした静謐な生活への憧れはあるものの、おそらく、2週間もしたら人ごみが恋しくなってしまいそうな気がする。
孤独に耐える精神力?がないと孤独の価値を実感することはできないということだろうか。
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ターニングタイド 希望の海

2015年01月14日 | 映画の感想
ターニングタイド 希望の海

無寄港・単独搭乗のヨットでの世界一周レースに参加予定だった友人が怪我をしたため、代理として参加したヤン。舵の修理のために近寄ったカナリア諸島で、フランスへの密航を企てる少年がヨットに忍び込んでしまう。
途中の島などで降ろそうとするが、うまくいかない。次第に順位をあげたヤンは優勝を望める位置につけるが、少年を乗せたままでは失格になってしまうため、彼をどうするか悩む・・・という話。

この映画を見て知ったのだが、最近のヨットのハイテク化?はすごいものがある。レースの順位や他の競争相手の一をディスプレイに表示できるし、テレビ電話で家族やレースの本部とはいつでも通話可能だし、体調が悪くなればいしの診断を仰ぐこともできる。救命ボートが発出されれば(落水したものとして)緊急警報が本部で鳴り響く。(よく考えたら、ヨットのハイテク化というより、単に通信技術の進歩というべきか・・・)

なので、単独・無寄港といっても、昔ほど危険ではなさそうなのだが、実際にヨットに乗って撮影した(と思われる)画面を見ると波は高いし、ヨットは大揺れ、海水面はすぐそばにあって今にも転げ落ちそうに思えてしまう。十分な訓練や経験がないと、とてもヨットになんか乗れないなと感じさせてくる。

このようにヨット航走の臨場感がバツグンにいいので、ストーリーの柱であるはずの(忍び込んだ)少年のエピソードがなくて、単なるヨットレースのドキュメンタリーみたいな作品であっても十分に面白かったと思う。
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