蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

海炭市叙景

2011年01月19日 | 本の感想
海炭市叙景(佐藤泰志 小学館文庫)

函館市をモデルにした海炭市という架空の地域で暮らす人々の生活を描いた短編集。
著者は1990年に自殺しており、最近映画化されて注目され、文庫で再刊されたもの。

基本的に、貧乏くさくて暗い話が多いが、淡々とした描写のせいか、あまり抵抗なく読み進めることができた。

冒頭の「まだ若い廃墟」(これが一番印象深かった作品)をはじめとして、いくつかの短編で「待つ」ことが主題となっている。待っている人の焦燥感や不安や希望がうまく表現されていて、一種ミステリ的な興味(「待っている人は現れるのか?」「現れたらどうなるのか?」)がかきたてられる。

この作品が発表(雑誌連載)されたのは1989~90年ころで、バブル絶頂の頃。
デフレと失われた20年に苦しむ今の日本のムードにはぴったりとフィットする(だからこそ再注目されたのだろう)けれど、発表当時はさほど評判にならなかったというのも無理からぬところだろうか。


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センター試験の時期。
高校生時代(私が受験したころは「共通一次試験」と呼ばれていて、実施2回目だった)には、現代国語が好きな科目で、特に選択肢方式の試験は「簡単すぎるんじゃない」と思うほど得意だった。
文章読解などは余りにも出題者の狙いがミエミエなことが多く、一見して「これしかない」と判断できることが多かった。

ところが、理系の国語が苦手な人は、「選択肢の違いがわからない」「論理的に解答が導けない」などと嘆いている。その気持ちがどうしても理解できなかった。

一方で、私は数学がとても苦手。共通一次でも平均点を取るのがやっとだった。今度は同じ理系の人に「共通一次の数学なんてやさしすぎて差がつかない」なんて言われてしまう。「うーん、理系と文系の谷は深いなあ」と思った。

今でも新聞に掲載されたセンター試験の現代国語の問題をやってみたりする。パズル感覚でおもしろい。試験慣れしていないせいか、あるいは歳のせいか、特に文学系の文章読解は、昔みたいにスッパリ大根を切るような調子?で判断できなくなっている。


長男が右手のひじが痛いというので、医者にいったら、骨折寸前と言われる。思春期特有の症状だとか。添え木はあまりにもオーバーだが、人生初めての体験に、息子は妙にうれしそうだった。そういえば私は50年近く生きてきて添え木をしたことがないなあ、と思った。(2011.1.18(火))
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