殿は今夜もご乱心

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手抜き料理・お雑煮

2023年01月05日 10時46分38秒 | 手抜き料理
明けましておめでとうございます。

旧年中は大変お世話になりました。

このブログを訪れてくださる皆様の温かいお気持ちをたくさんいただいて

とても幸せな一年でした。

ありがとうございました。

引き続きまして、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



さて、昨年12月。

いつものように同級生ユリちゃんのお寺で料理をした際

彼女のご主人モクネン君が、会食中の一同にたずねた。

「皆さんのおうちは、どんなお雑煮ですか?」


「うちは鶏です」

「うちは焼きアナゴ」

皆は順番に答える。

牡蠣とかブリとか出てくると思ったが、ほとんどこの二種類に落ち着いた。


変わったところでは、鶏の雑煮にあんころ餅を入れる人もあった。

香川県だか、お雑煮にあんころ餅を使う土地があるそうだけど

この人は地元の人。

一度やったら癖になり、今ではあんころ餅でないと物足りないそうだ。

面白そうなので、私も一度やってみたい。


他に珍しかったのは、料理番仲間のマミちゃん。

人参、大根、里芋、ゴボウなどの野菜だけだそう。

さすが、天才野菜料理人だ。


やがて、私が答える順番がきた。

「牛肉です」

ええっ?!…一同は驚く。

そうなのだ。

雑煮の話になると、たいてい何を入れるか聞かれる。

聞かれるから、答える。

で、驚かれる。

このパターン、もう慣れっこさ。


私の好みで牛肉を入れているのではない。

結婚した家では、牛肉だっただけ。

夫の祖父が三重県の人だったので、松坂に近いからか

雑煮は牛肉ということになっていたのだ。


最初は私もびっくりした。

実家では祖父の好みによって元旦がハマグリ、2日がブリ

3日が焼きアナゴと決まっていたので、肉を使うことが信じられなかった。

しかし大衆食堂の汁物みたいにカジュアルな味は

海うみしい実家の雑煮より食べやすく感じて、すぐに馴染んだ。


「牛肉?!」

モクネン君も細い釣り目を見開いて驚いていたが、祖父が三重県…と言ったら

「あ、松坂がありますからね」と納得し、「食べてみたいなぁ」と言った。

「いいですよ…寒いうちに、こちらで作りましょうか」

私は答えた。


牛肉の雑煮は簡単なので、以前から作りたい献立の一つだった。

しかし一度、ユリちゃんに打診したら顔色が変わった。

「牛肉はダメッ!予算がかかり過ぎる!」

その鬼のような形相とみみっちい発言に、私はかなり鼻白んだものである。

焼肉やステーキをやらせろと言うのではなく、たかが雑煮の具だ。

他の献立と支出のバランスを取って、予算内に収めるのは常識でねぇか。


が、モクネン君の許可があれば大丈夫だ。

しめしめ、これで2月のお寺料理は安泰じゃ…と思っていたら、彼は言った。

「お正月のお雑煮会はどうですか?」


ユリ寺では正月の3日、お寺で行う初勤行(はつごんぎょう)の後

檀家さんたちとお雑煮を食べる習慣がある。

お雑煮といっても豚肉団子と白菜の鍋物に、お餅も一緒に入れるカジュアルな形。


我々夫婦は毎年、このお雑煮会に参加している。

料理番のメンバー、マミちゃんとモンちゃんはお布施が必要と聞いて近づかないので

檀家さん以外はうちら夫婦だけだ。


始めの数年は、お経とお雑煮会に参加して帰るお客だった。

が、一昨年だかその前からか、作る側に回った。

記事にしたけど、「本場のチヂミを食べさせる」と言い出した韓国人の檀家さんがいて

その人と料理番の檀家さんとの調整をすることになり、早めに行ったのが運のつき。


以後、どうせやらされると思って早めに行くと

八百屋でも開くのかと思うほど大量の白菜や白ネギ、キノコ、大根なんかが

買って来たままの姿で山と積まれていた。

鍋のダシと豚肉団子はユリちゃんの兄嫁さんが下ごしらえをしてくれているし

後片付けは檀家さんが手伝ってくれるものの、夫や皆が初勤行のお経に参加している間に

一人で洗って切って盛り付けるのはけっこうな大仕事。

病院の厨房を彷彿とさせる重労働に正月早々、腹が立った。

大量に余るのを見越した野菜は今後の数日間

お寺人が個人的に食す鍋物の材料になるとわかっているからだ。

「どうせやらされるんなら、気持ちよくやりたい」

私は思ったものである。


だから正月のお雑煮会で牛肉雑煮を作れというモクネン君の提案を、私は快諾した。

4玉だか5玉だかの白菜を始め、大量の野菜をひたすら洗って切り続けるのと

牛肉雑煮を作る労働量はさほど変わらない。

いや、冷たい台所で冷たい水を使って延々と野菜の処理をするより

家であらかたの下ごしらえをして持ち込める後者の方が楽だ。


そういうわけで、私はお雑煮会の雑煮を作ることになった。

この近辺では異端らしき牛肉雑煮が皆の口に合うか否かは不明だが、かまうものか。

野菜洗いが無いだけマシじゃ。



そして当日がやってきた。

この日、なぜか長男とその彼女が手伝ってくれると言い出して、料理番は3人になった。

彼女はエプロンを持って来て、「何でも言いつけてください!」と張り切っている。

二人で準備や片付けを手伝ってくれたので、助かった。


会食の人数は総勢13名。

うちの一家4人とユリちゃん夫婦、兄嫁さん母娘、いつもの兄貴に

檀家さんはわずか4人。

年々、順調な衰退ぶりである。



問題の牛肉は、我が家と同じ物。


安いバラ肉やコマ切れでは雑煮の味が変わってしまうので、牛ロース一択。

グラム900円のをうちは3キロ、寺には別に領収を書いてもらって1キロ

年末に買って冷凍しておいた。



台所が寒いので、真っ先にダシを沸かして火の気を確保。


液体の昆布ダシとカツオ節でダシを取り、牛肉を入れてアクを取ったら

酒と薄口醤油をドバドバ、塩とミリンを少々。



参加者が何人であろうと、土鍋は三つと決まっている。


家で下ゆでした大根、金時人参、里芋をあらかじめ鍋に入れておく。

初勤行が終わったら、熱々のダシをこの土鍋に張って会食の席に運ぶのだ。

うちでは個別のお椀に注ぐので、鍋の場合、どうやろうかと考えたが

この方式以外に無さそう。



《トッピングのゆでた水菜とカマボコ》


彩りや味のバランスから、牛肉雑煮にこのトッピングは欠かせない。

これも家では個別のお椀に雑煮を入れてから飾るが、寺は鍋なのでそうはいかない。

そこで最初の一杯はカラのお椀に水菜とカマボコを入れておき、その上から雑煮を注いで

二杯目からは各自で好きなようにトッピングしてもらう方式を取った。



《牛肉雑煮・鍋バージョン》

ここにお餅を入れる。

お餅は毎年、個別のナイロン袋に入った餅もどき。

プラスチックの鏡餅の中に入っている、長持ちするやつだ。

あのプラスチックの鏡餅をバラして、中身を使う。

本当のお餅だったらもっと美味しいと思うが、予算もあろうから余計なことは言わない。



《ブリの照り焼き》


雑煮だけではナンだと思い、朝、作って持参。



《焼き芋》


主食兼おやつのつもり。

長男の彼女様がお切りになられた。

これも朝、アルミホイルに包んでストーブで焼き、持参。

肉を買った問屋さんは、超甘いサツマイモも分けてくれるのだ。

私には甘過ぎて、あんまり食べられない。

品種は紅はるか。



牛肉雑煮は大好評で、いつもはあまり食べないモクネン君を始め

ほとんどの人がお代わりをした。

来年も作ることになるかも。

ブリの照り焼きと焼き芋も、争奪戦。

他に食べる物が無いから、当たり前か。



食後の片付けが終わり、帰ることに。

ユリちゃんはいつものように、最後まで私が立て替えた材料費の清算を言い出さないので

こっちから領収書を出して、「お金くださいな」と言う。

息子たちも食事をいただいたので、請求するのは肉代だけにした。


ともあれ、こういうところ一つを見ても

彼女が口でありがたがるほど感謝してないのはわかる。

払わなくていいかも状態を狙っていると受け取られても、これでは仕方がないわね。


が、それはそれ、これはこれ。

感謝されたくてやっているわけではない。

自己満足、それでいいと思っている。
コメント (6)
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