殿は今夜もご乱心

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デンジャラ・ストリート 過ぎたるは及ばざるがごとし

2022年04月15日 19時23分58秒 | みりこんぐらし
私の住む川沿いの通りは、後期高齢者だらけのシルバーストリート。

老人ならではの事件がよく起こるため

私はここをデンジャラ・ストリートと名付けて久しい。


とはいえ近頃は、その後期高齢者が少しずつ減ってきている。

亡くなる人や老人施設に入る人もいるが

離れて暮らす子供に引き取られる人もポツポツと出始めたからだ。


うちの隣で一人暮らしをしていた90才になるおばさんも

先週、広島市内で暮らす長男の家に行ってしまった。

おばさんは息子夫婦が実家に戻って一緒に生活する日を待ち続けていたが

息子夫婦にその気が無いので、自分が息子さんの家に行くことを決心したのだ。

住民票も移したので、隣は完全な空き家。

おばさんが亡くなるか施設に入ったら、家は売りに出されるだろう。

テレビで過疎の村人がよく言ってるけど

隣の家が真っ暗って、ホンマに寂しいものなのね。



さて、デンジャラ・ストリートでは今、老人の体操教室がブーム。

閉鎖されて久しい塾の建物があり、去年、そこを無料で借りて集会所にしたが

毎週金曜日の午後1時半から3時まで、老人はその集会所に集まって体操をする。

市から福祉関係だか介護関係だかの人たちが来て、指導を受けながら行うのだ。

そうすると、市から自治会に補助金が出るシステム。


うちの義母ヨシコはもとより、近隣のシルバーたちがこぞって参加するので

体操教室は大盛況。

あんまり多いので、最初の頃は2回に分けてやっていた。

コロナで休んだ時期もあったが、3月から再開され

ヨシコも嬉々として通っていた。


そして今月の始めの金曜日。

この日は、年に一度の体力測定をするという。

もちろんヨシコはいつものように近所のおばあちゃんたちと誘い合い

足取りも軽く集会所に出かけて行った。


が、帰ったら寝込んでしまった。

その日は、市から福祉だか介護だかの人が大勢来て

ストップウォッチを片手に、様々な動作が何分で何回できるかを測定し

できた回数によって点数をつけて得点表を作成したという。

最高得点は5点。

皆は燃えた。

ヨシコも5点が欲しくて頑張った。

そして腰をやられたのだ。


私は腹を立てた。

年寄りはライバル心が強い。

ライバル心で生きているようなものだ。

ひとまとめに老人と言っても、年令や既往症によって一人一人の能力は異なる。

それを並べて競わせ、点数までつけたら無理をするのは当たり前だ。

再起不能になったらどうしてくれる。

看病するのはこっちだぞ。

ヨシコの話では、市の福祉だか介護だかの人って優しくていい人みたいだけど

チヤホヤと手厚そうでいて、やってることは残酷じゃないのか。


以後、ヨシコは腰痛で歩くのもままならず、私はサポートに忙しくなったが

それより残念なのは、彼女が体操教室に行けないことだ。

週に一度とはいえ、姑のいない1時間半は、嫁にとって貴重だった。

ヨシコが留守なので、金曜日は夫の姉カンジワ・ルイーゼも来なかった。

それが、元の木阿弥だ。

残念。



あ、そうそう、ルイーゼといえば去年の秋

一人息子のおみっちゃんちゃんに待望の赤ちゃんが誕生。

現物は見てないが、ルイーゼが嬉しそうに見せてくれた画像では丸々と太った女の子だ。

ルイーゼも人の子だっらたらしい。

うちの息子たちは独身、ヨシコにひ孫を見せるのは不可能なので

外孫のおみっちゃんちゃんが頑張ってくれて、心からホッとしている。


おみっちゃんちゃん夫婦は、結婚して5年ぐらいになるだろうか。

なかなか赤ちゃんができないので、不妊治療をしたという。

ものすごくお金がかかったらしく、数百万の実費はルイーゼの旦那が出した。

ルイーゼの家では、お金は全て旦那が握っているのだ。

この4月まで待てば法改正で保険適用になったが、待てなかった。

親が出すのだから、待つ必要は無いか。


おみっちゃんちゃん一家はひと月かふた月に一回程度、広島市内から実家へ孫を見せに来る。

その時はヨシコもルイーゼ宅へ行き、ひ孫を見るのが慣例になった。

ただし、一家が実家に滞在する時間は2時間と厳重に決められている。

スケジュール管理はお嫁さんの方針という話だが

単に旦那の実家で長居をしたくないだけかもしれない。


おみっちゃんちゃんは順調にお嫁さんの実家に取り込まれ

ほとんどそっちで生活している様子だ。

なんでもお嫁さんの兄夫婦が両親と絶縁しているため

お嫁さんの両親は、おみっちゃんちゃん夫婦に跡を取らせるつもりだという。

ルイーゼは、嫁の実家に入り浸る一人息子に心穏やかでないが

自分も同じことをしてきたので文句は言えない。


ともあれルイーゼは初孫の帰省を楽しみにしていて、洋服やおもちゃをせっせと買い込んでいる。

孫へのプレゼントは、お祖母ちゃんの楽しみだ。

しかし前回、それらを渡した時

「こんなモンいらん。

何かくれる気なら、その分の現金くれ」

おみっちゃんちゃんに強い口調で言われたそうだ。

一緒に居たお嫁さんが黙っていたことから、おみっちゃんちゃんの発言には

彼女の意向が含まれているのは明白である。


これにはルイーゼのみならず、ヨシコも衝撃を受けたらしく

ルイーゼに送られて帰宅するなり、それをうちの息子たちの前で話した。

通常、ルイーゼ関係の良くない話は絶対にしないヨシコだが

今回は黙っていられなかったようだ。

「母さんなら、血の雨が降る」

「俺らの命は無いじゃろう」

息子たちはしみじみと言い、私も否定できなかった。
コメント (2)
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