殿は今夜もご乱心

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デンジャラ・ストリート防災編

2020年07月10日 10時58分25秒 | みりこんぐらし
豪雨の報道に胸を痛める今日この頃です。

皆さまは大丈夫でしょうか?

一昨年、こちらで猛威をふるった豪雨が

今年は別の地方を襲ったと思うと他人事とは思えず

ニュースを見ていると涙が出ます。

心よりお見舞い申し上げます。



さて私の住む川沿いの通りは、後期高齢者だらけのシルバー・ストリート。

老人ならではの出来事がよく起きるので

私はこの一帯をデンジャラ・ストリートと呼んでいる。


先日はこの地方にも、大雨が降った。

一昨年の西日本豪雨で川の水が増え

多くの家が浸水したデンジャラ・ストリートには緊張感が漂った。


それでも今年は少し気が軽い。

一昨年の豪雨以後、土砂が堆積したまま放置されていた川に

この6月、やっと予算がおりて

業者が川底の砂を大々的に撤去したからだ。

工期は1ヶ月に及び、住民は激しい騒音や振動に悩まされながらも

耐え忍んだ。

そして工事は6月末に終わり、1週間後に今回の大雨。

「間に合って良かった」

住民は胸をなでおろすのだった。


が、夕方になって、自治会長から連絡があった。

「夜に満潮を迎えるので、一昨年よりも被害が大きくなりそうです。

川底は綺麗になりましたが、それ以上の増水が予想されます。

大事な物は二階に上げて、すぐ逃げられるように準備をしてください」

このことを我が家に連絡してきて、隣の家にも伝えろと言う。


それを聞いて震え上がり、泣きながら仏壇を拝む義母ヨシコ。

そこへ会社の用事で私に電話がかかる。

数字がからむ、込み入った内容なので長くなった。

「自治会長さんからの連絡を隣に言わないと…」

ヨシコがちょうど帰って来た長男に訴えたので

長男は私の携帯で隣の家に電話をかけた。


ヨシコは初めてのスマホで、おっかなびっくり話していたが

87才の隣のおばさんは一人暮らしなので、話し始めると長い。

普段、あまり人と話さないため、話す機会をつかむと

いつまでも話し続ける。

句読点や息継ぎが無いので、会話終了のきっかけがつかめないのだ。

その肺活量だか技術だかは、あっぱれと認めるが

つかまると長くなるから避けられるようになり

さらなる孤独へと陥る図式には気づかない。

それが老人というものだろう。


その日も例のごとく、おばさんの餌食となったヨシコだが

耳が遠いので聞き取りにくいため、スマホで話しながら

隣の家へ行ってしまった。

私は電話が終わり、家でヨシコとスマホの帰りを待つ。

が、なかなか帰って来ない。


私は雨の中へ持ち出されたスマホが心配になり

隣の家へ行ってみたら、二人は玄関で話し込んでいるではないか。

しかも直接会話しているのではない。

ヨシコはスマホで、隣のおばさんは家の電話で

向かい合って大真面目にしゃべっとる。

「そうなのよ〜、川がね〜」

「怖いね〜」


あんたらの方が怖いわ…と思いつつ

「直に話したら?」と言って、ヨシコからスマホを取り上げる。

「どうやって切るんか、わからんかったけん」

ヨシコは、大事な時に長電話をした私が悪いと言いたいらしい。


そして迎えた夜。

一昨年の教訓を生かし、食べる物をふんだんに作ったり

洗濯をできるだけしたり

亡きアツシ愛用の室内トイレを引っ張り出したりの準備をして寝る。

もちろん服を着て、靴も用意。

私だけ。

結果、川の水は大丈夫で

我がデンジャラ・ストリートはことなきを得たのだった。



ここからは余談になるが、敵は思わぬ所から現れた。

翌朝起きたら、家中が停電している。

道路の街灯は点いているので、どうも我が家だけらしい。

電力会社に電話したら、雨の中を市内の委託業者が来てくれた。

彼が言うには、電気温水器が漏電したために

安全装置が働いて停電したそうな。


うちの電気温水器は古く、部品はもう製造されてない。

以前から、次に壊れたら買い換えしかないと言われていたし

我々もそのつもりでいた。

けれども本当の問題は、温水器が設置されている場所だ。


昔、この温水器を設置した裏の納屋は、屋根があって乾燥していて

電気温水器を置くのにふさわしい場所だった。

しかし近年、この納屋のコンクリートの床は

雨が降るたびに水浸しとなり、ちょっとした小川といったあんばい。

もちろん温水器はコンクリート製の高めの台座に設置してあるが

水がその高さを越えてしまうようになった。


原因としては、それだけ雨がたくさん降るようになったという

自然の理由に加え、人工的な理由も存在する。

まず30年前、空き地だった所へ隣のおばさんの家が建ったが

盛り土をして、うちより1メートル以上高い土台にした。

それはけっこうなことだが、その行為によって湿気が多くなっただけでなく

山水の流れる進路が変わり、裏山からの水が我が家を目指す結果となった。

さらに裏の家や畑の持ち主が、それぞれ年老いてくると欲が出るのか

自分の土地を広げたい一心で、境界線にあった側溝を埋めてしまった。


そのため今や、うちの納屋は雨が降ると滝のように水が噴き出す

とってもみずみずしいスペース。

つまり電気温水器を設置するには危険な場所となり果てたので

たびたび漏電が起きるようになった。

今回の雨もひどかったので、漏電は必然であった。


新調したところで、また漏電、停電、修理の繰り返しになるのは目に見えている。

今の電気温水器は進化しているかもしれないが、基本、電気は水が苦手。

今回は比較的涼しい日だったので、エアコンが止まっても耐えられたが

そうでない日も必ずある。


それでも電気にこだわるとなると、別の場所にしなければならない。

古い家に新しい物を取り付けるとなると、厄介な大工事になるものだ。

お金も惜しいが、そうまでして成し遂げる気力そのものが私には出なかった。


義父母はひたすら旅行とゴルフと身を飾ることに血道をあげて

家には何のメンテナンスも施さなかった。

やがて義父の会社が倒産しそうになり

借金のカタに取られそうだったこの家を我々が買って

義父母の住まいを確保したはいいが

今になって壊れ始めた家のあちこちにお金をつぎ込む生活。

我々が修繕費用を出すまで騒ぎ続けて勝つ、ヨシコの手口に嫌気がさし

こんなばあさんと暮らすようになってしまったのも

一種の災害に思えてくる。

その点、私の防災意識は低かったといえよう。


で、ガスにした。

以前、電磁調理器が壊れた時、ガスコンロに変えたのと同じく

夫の友人に頼んだ。

電気温水器からの脱却ということで、すごく安くしてくれて

即設置、即解決。

ガス料金は高いというけど、納屋を建て直して電気温水器を買うのと比べたら

あまり大差は無いような気がする。

もう漏電が無いと思ってホッとしたからか

ガスで沸かした風呂の湯は、柔らかい気がした。
コメント (4)
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