殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

松方弘樹さん

2017年01月25日 10時03分07秒 | みりこんぐらし
存命中は、さして気にならなかったのに

亡くなってみると存在の大きさを実感する‥

そんな俳優さんはいるもので、私にとって松方弘樹さんもその一人。


彼は昔、私の住む田舎町を訪れたことがある。

私が小学生の頃だから、45年余り前。

彼は、ある議員の選挙応援に来たのだった。

学生時代の友人という話だが、本当に友人だったのかどうかは知らない。


彼が応援演説をする公園には、町中の人が集まった。

子供なので、よく知らないけど有名人らしいおじさんという印象しかない。

ただ、田舎にはおよそ存在しない頭身の、スラリとした男性だった。

ちなみにこの人が、当時私の見た芸能人第2弾。

最初は2才の時、たまたま観光地で遭遇したザ・ピーナッツである。


演説の後、握手を求める町民が列をなした。

私は並ぶのがかったるくなり、家に帰ったが

ミーハーの妹は、長いこと並んで握手をしてもらい

「すごく柔らかい手だった!」

と感激していた。


何年か経って、彼の出演した映画

「仁義なき戦い」が空前のヒットとなったが

それより何より、駆け出し女優の仁科亜季子との不倫騒動の方が

私には印象深かった。

妻子と別れるわ、名門の仁科家は大反対だわ

これがまた、渦中の2人が美しいときたもんだ。

ワイドショーの餌食となって、連日の大騒ぎだった。

あの時、握手してもらっておけばよかったと

おのれの怠惰を後悔。


時は流れ、大人になったうちの息子たちが

突如、松方弘樹という男性に注目し始める。

釣り好きの息子たちは、俳優の松方弘樹ではなく

大物釣り師の松方弘樹を知ったのだ。


そして一昨年、息子たちは共通の友人から

「仁義なき戦い」のDVDを譲り受けた。

その少し前から、映画「トラック野郎」の主人公を演じる

菅原文太さんにハマっていた二人が

彼の主演作品である「仁義なき戦い」に触手を伸ばすのは

時間の問題ではあった。


そのDVDに、松方弘樹さんが出演している。

「渋い‥」

「スターだったんだ‥」

二人は、釣り師・松方弘樹の本当の姿を知ったのだった。

ここでやつらに「握手したもんね」と自慢できれば

どんなにいい気になれただろう。

おのれの怠惰をまたもや後悔。


余談になるが「仁義なき戦い」は、地元広島県の話。

我ら一家は映画の舞台から離れた田舎暮らしだが

我々の生きる建設業界は活動範囲が広く、取引先は県内のほぼ全域に渡る。

映画には、名前こそ変えてあるが

知ってる人や知ってる会社がバンバン出てくるため

その前身や力関係を把握する歴史物語として見ると面白い。


さて俳優が大御所になると、サービス撮影に乗っちゃう人が増える。

全知全能のやたらかっこいい役、本当に必要かどうか疑問の海外撮影

刑事に頼られる一般人などの夢を叶え終わると

帝王の望みは、たいていこれ。

最初は馬鹿にされたりボコボコにされた末、隠していたすごい所を出す。

本人は気持ちが良かろうが、見る者はやがて飽きる。


私の記憶では、松方弘樹さんはこれをやらなかった数少ない大御所。

飽きのこない、すごい役者だった。

やっぱりあの時、握手しとけばよかった。
コメント (4)
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