僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

 星野ジャパンと400リレー

2008年08月23日 | スポーツの話題


前日の日本女子のソフトボールの快挙の余韻が残る中、せっかくその祝祭的な気分に、冷や水を浴びせるような星野ジャパンのぶざまな敗戦には、今回の北京五輪で、全競技を通じて最も腹立たしく、くやしい思いをさせられた。

某月某日(金)
午前中の議会運営委員会が終わり、昼休みになった。
例によって応接室のテレビをつけて、数人で昼食をとりながら野球を観戦。
「あ、勝ってますよ、日本が」と、若手のYクンの声がはずむ。
星野ジャパンは、1回表に先制の1点をあげていた。

僕たちが見ている間に、日本は青木のタイムリーで加点し2点のリードを奪った。ここからじわじわと点差を広げ、韓国の息の根を止める…理想的な展開に見え始めたとき、4回に杉内が打たれ、併殺崩れで1点を返された。2対1。ここで1時のチャイムが鳴り、テレビを消して、みんな後ろ髪引かれる思いで事務所に戻る。

僕は1時15分から出張に出なければならなかった。
市議会議長、副議長の2人と、大阪城横のKKRホテルで開催された府下の総会に出席するためである。黒塗りの公用車の助手席に乗り込んだ僕は、車についているテレビを運転手さんにつけてもらい、野球の続きを見た。画像が悪く、画面左上に出ているスコアなどの細かい数字は見えなかったけれど、2対1のまま進んでいることは間違いなかった。できることならこのまま車に乗り続けて野球を見たかったけれど、そうもいかない。車はすぐにKKRホテルに着いた。あ~ぁ。

会議の開始は2時だ。大阪府下33市の正副議長ら関係者がずらりと並ぶ中、うちの市は副会長だったので、正面に、居並ぶ会員市と対面する形で席がセットされている。そんな目立つ席に着いて緊張が漂う空気の中、開会直前にズボンのポケットの携帯がブルブルっと振動した。周囲にわからぬよう、こそっと携帯を取り出して見ると、いつもメールをくれる知人から「7回。2ー2の同点に追いつかれた」との情報。「ふぅ…」とため息を漏らしてまた姿勢を正し、総会に集中。

2時15分、またメールが入ったので、またこっそり見る。
8回で2対2だが、投手が岩瀬に代わって、打たれている、という。

2時20分過ぎに総会は終了し、第二部の講演会に移るまでの約20分間、ロビーで時間待ちだったが、そのロビーのソファに座るか座らないかのうちに3度目のメールが届き、それを見て僕は天井を仰いだ。
「8回、李に2ランホームランを打たれ2-4に逆転される」

がっかりしながら、正副議長と共に、第二部の講演会に出席した。
講師は、日曜日の朝、関口宏が司会する「サンデーモーニング」などでおなじみのコリア・レポート編集長、ピョン・ジンイル(辺真一)さんであった。

     

「アジアの風を読む」と題した1時間の公演だったが、ピョンさんは冒頭で、
「私は韓国人ですが、日本生まれなので、野球は日本を応援しています」
と、いきなり、いまやっている野球の日韓戦のことに触れた。
なになに…? と、そのことで頭がいっぱいの僕は、がぜん身を乗り出して聴く。

「私は中日ドラゴンズの大ファンで、球場へもよく応援に行きます。でも…」
と、そこでピョンさんは少し苦笑いを浮かべ、
「今やっています日本と韓国戦は、2対2の同点で、ウチ(中日)の岩瀬が出てきましてですねぇ…、それがですねぇ、なんと、巨人にいる李に2ランを打たれちゃって、4対2で韓国にリードされちゃったんですよ」
会場が一瞬どよめいた。みんな、今日の野球のことは気になっているんだ。
僕はメールで、すでにそのことは知っていたけれど。

ピョンさんは、会場の人々に向かって、
「どうも、うちの岩瀬が打たれてしまって申し訳ありません」と、笑いながら壇上で頭を下げた。会場にも、笑いが起こった。僕もつられて笑ってしまった。

しかし、笑っている場合ではないのである。

講演中にも「2-6。G・G佐藤に再びミス。ガンガン打たれている」とのメールが届き、その後、「負けちゃった」とのメールが入って、万事休した。

もう、今日は夜のテレビのニュースはいっさい見まい。
李の本塁打のシーンなど、見たくもない。絶対に、見ないのだぁ!

そう固く決意をして帰宅したのに、ビールを飲み始めると、ちょっと怒りが鎮火して来たか、NHKのニュースで野球のダイジェストを見てしまった。しかし、出るはため息ばかりである。この試合、韓国の李に対してはそれまで14球すべて外角球を投じて討ち取っていたにもかかわらず、岩瀬、矢野のバッテリーは、このときに限り、内角低目で勝負をし、ホームランを打たれた…というような話を聞くと、またムカついてくる。岩瀬も矢野もアタマ悪いんちがうか…というグチまで出てくるのである。まあ、僕は巨人ファンだから、巨人の4番を打つ李が中日の岩瀬から本塁打を放つと、通常なら拍手しているところだ。しかし、こんなところでなぁ…。
李も、巨人ではアカンくせに、こんなところで打つなよ。ほんまに。

野球で韓国に連敗するなどとは、あまりにもくやしい。前日のソフトボールは、上野投手と心中するという悲壮な覚悟が全員にみなぎった気力の勝利だった。しかし星野Jには、最後までその気迫は見られなかった。投手も顔見世興行のようなこまぎれの起用で、「こいつに任せた!」という軸になる投手をつくらなかった。左打者が続くから左の岩瀬を…という芸のない継投策にも疑問が残る。野手の中でも、日本選手をグイグイ引っ張っていく選手がいなかった。

結果論だろうけど、星野ジャパンも、先日1勝も出来ずに予選落ちしたサッカー男子の反町ジャパンも、要するに選手たちが甘やされているのである。ほかのオリンピック選手と違い、彼らはいずれもプロである。日常からプロとして厚遇されることに慣れきっている。監督も含め、いわゆるハングリー精神のかけらもないのが野球とサッカーの選手たちなのだ。それと、星野監督は、山本浩二や田渕という仲良し友達をコーチに選んだことで、知らず知らず自らへの厳しさも見失っていたようにも思う。和気藹々ムードというのも、時には必要かもしれないが、しかしその程度のチームワークでは、韓国選手にほとばしる壮絶なまでの気迫には、とうてい対抗できないだろう。

今回の日本は、キューバにも米国にも敗れ、韓国にはご丁寧にも2回とも敗れるというみっともない成績で、これはもう、運とか勝負の流れの問題ではなく、力が劣っていたと認めるしかない。それが、何よりもくやしい。

あぁ…。出るのはグチばかり。

今日のアメリカとの3位決定戦は、もう見ない。見たくもない。
負けたらまた腹が立つだろうし、逆に日本選手が力を発揮してアメリカに快勝したとしても、今頃なに元気出しとんねん、と文句が言いたくなるだろうから…。


夜は、ニュースのあと、7時半から陸上競技があったので、テレビをつけて見ているうち、うつらうつらとしてきた。
「リレーがはじまるよ」という妻の声に起こされて、またテレビを見る。
塚原、末続、高平、朝原の出場するリレーだ。

その陸上男子400mリレーは、アクシデントが続発していた。
予選で、16チーム中6チームが失格したり、ゴールできなかったりしたという。
去年の大阪の世界選手権で優勝したアメリカがバトンを落としただけではなく、ナイジェリア、ポーランド、南アフリカ、さらに世界選手権3位のイギリスまで失格する中で、日本は堅実にバトンリレーをして3番目の記録で決勝進出を果たした。

日本は千載に一遇の好機を迎えたわけだ。
そして、星野Jのようにその期待を裏切るもことなく、4人はそのチャンスを見事にモノにして、バトンもスムースにつなぎ、全員力を出し切って、ジャマイカ、トリニダード・トバゴに次ぐ3位に入ったのである。
銅メダルだ。バンザ~~~イ!

日本人が陸上のトラック種目でメダルをとったのは、実に80年ぶりだそうである。
80年前といえば、オランダ・アムステルダムオリンピックである。
10何年か前にアムステルダムへ行ったとき、観光バスで、ガイドさんが
「ここがオリンピックスタジアムでございます。むかし、日本の織田幹雄さんが三段跳びで金メダルをとり、人見絹江さんが800mで銀メダルをとったのが、このスタジアムでございます」
と紹介されて、おおぉ、ここが! と窓に顔をくっつけて外を見たのを思い出す。その後、僕は人見絹江自伝「炎のスプリンター」という本を読んで、当時のオリンピックと、今とのあまりの大きな違いに信じられない思いを抱いたことがある。

その人見絹江さんが、1928年…というから昭和3年(うむ。母が生まれた年だ) に行われたアムステルダムオリンピックで、800メートルに出場し、銀メダルをとって以来のトラック種目でのメダルを、昨日のリレーチームは獲得したのである。80年ぶりですよ、80年ぶり。
これも歴史的な快挙として、記憶に刻んでおきたい。

星野Jの野球では勝利の女神に見放され、くやしい思いをしたけれど、陸上のこのラッキーな銅メダルは、予想もしなかった朗報だ。
陸上競技ファンのはしくれとして、メチャうれしい。

捨てる神あれば拾う神あり。
禍福はあざなえる縄の如し。
世の中、悪いことがあったら、次にはいいことがある。

 

 

 

 

コメント (7)
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