前述のように、入団したばかりのキックベースチームが、翌日の大会で、
いきなり優勝し、モミィにも金メダルを与えられた時から1週間が経った。
その地域キックボールチーム「ミ〇キー」の練習が昨日の土曜日にあった。
モミィは先週に続き、この練習には二度目の参加である。
モミイを自転車に乗せて練習場の小学校に連れて行こうと思ったけれど、
最近自覚が芽生えてきたモミィは、「わたし一人で歩いて行くわ」と言う。
いくらなんでもそれは…と思い、モミィを先に行かせた後、
自転車でゆっくり後を追いかけることにした。
が、途中で僕がスマホを忘れたことに気がつき、取りに帰った。
再び学校に向かって通学路を走ったけれど、
モミィの姿はすでにどこにも見えない。
あれれれ…?
不思議だな~と、ちょっと心配しながら学校へ急ぐと、
向こうの方に小さい体で大きなリュックを背負ったモミィの後姿が…
ほとんど、学校の校門へ着く直前だった。
コーチが門の前で待ってくれていたので、モミィは走って入って行った。
柔軟体操から始まった練習は、バラエティに富んでいる。
ランニングもモミィはだいぶ遅いけれど、誰かが手を引いてくれている。
日陰のベンチに座ってモミィの練習風景を見ていると、
相変わらずボールを投げても目の前にポトリとしか落ちず、
蹴っても力なくボールが転がり、おまけに5回に一度は「からぶり」したりする。
それでも、チームメイトやコーチの方がモミィに丁寧に基本動作を教えている。
男のコーチがこちらへ来たときに、
「楽しそうにやっていますね~」と言ってくれた。
最初の頃は体力がついていかず、苦痛の表情を浮かべる子も多いという。
その点、モミィは嬉しそうにやっているので、コーチも喜んでくれる。
しかしまあ、その分、進歩が遅い点は確かにあると思うけれど…
でも急ぐ必要はない。6年生までやるのだから、ボチボチ慣れて行けばいい。
モミィは、何事においてもコツコツ努力型の子どもなのだから。
「おはようございます」と選手のお母さんたちとも挨拶を交わす。
そのお母さんたちがどの選手の親なのか、まだよくわからないけれど…
お母さんたちは、折りたたみ椅子や飲み物や救急箱、タオルなどを用意。
子どもたちが休憩に戻ってくると、世話をする役をしてくださっているのだが、
モミィが「トイレに行きたい」というと、連れて行ってくれたりする。
お母さん同士の会話を聞いているととても面白い。
今どきの若いママ同士の会話はこんなに面白いのかと思うほど、
快調なテンポで、次々とさまざまなことが話題にあがる。
中学校1年生の子どもさんを持っておられるママが、
先日あった中学に入って初めての中間テストについて…
「誰でも平均90点は取れる…て誰かが言うとったのに、ウチのアホは60点や」
「そんなん、しゃ~ないで。平均90点て、あんなんウソやがな」
そこへ小学5年生くらいの選手の女の子が割って入り、
「そやけど、〇〇のお姉ちゃんは、平均で90点取ったそうやで」
「ふ~ん? ほんまかいな?」
な~んていう会話が続く。
それをじっと聞いている僕のほうを向いて、ママは、
「中学のテストの結果を見たら、親はみんなショックを受けるそうですよ」
と言う。なぜなら、
「小学校の時は親も子も勉強が良く出来ると思っているのよ」
「ところが、中学の最初の中間テストでその自信が飛んでしまうの」
「あたしも、子どもが初めて中間テストを受けたときは心配だったわ~」
そんな会話である。
へぇ~
そういうものなのかなぁ。
自分の息子たちはどうだったんだろう…?
と思い返しても、今僕たちがいるこの小学校に通ったはずだけど、
息子たちのそのころの中間テストがどうだった…など、何も覚えていない。
…と、まあ、そんな感じで見学席のママたちの会話がはずむ。
やがてお昼近くになり、もう練習も終わるのかと思ったら…
「これから、おかあさんチームと選手たちの練習試合をしま~す」
と、コーチが、日陰の見学席にいる僕たちを手でこまねいた。
「え~、つっかけ履いてるんやで、私。こんなんでボール蹴られへんがな」
としり込みするママもいれば、「よっしゃ、ちょっと蹴ったろか~」
と意気込みを見せるママもいた。
僕など、止まっているボールを蹴るくらい簡単なことだ、
よ~し、一発外野手の頭上を越してホームランを蹴ってやろう…
と、日ごろ足腰を鍛えている自信から、思わぬ親子交流戦に闘志を燃やした。
ところが…である。
お母さんチームの主力であったはずの僕の第一打席は、ボテボテのゴロ。
懸命に一塁に走ったけれど、簡単にアウトにされてしまった。
相手は小学生の女の子なのに、うぅ、残念。
次の打席も、助走をつけて「うりゃぁ~」と蹴ったがまたボテボテ。
一塁に着くはるか手前でアウトにされてしまった。
よ~し、それでは守備で見せてやろう…
ママたちの父親ほども年齢が上の僕だけど、ジョギングで鍛えた足腰だ。
ママさんたちは前のほうを守っていたので、僕は外野へまわり、
内野を抜かれたり、頭上を越されたりしたボールを取りに、
ライトからセンター、レフトへと、外野中を走り回った。
(走るのは、まあ得意ですからね)
そのうち、子どもチームの「主砲」の6年生女子が出てきた。
この子がバーンと蹴ったボールは空中高く舞い上がり、
野球で言えば右中間の大飛球となった。
センターにいた僕は、懸命にボールを追いかけた。
そして…
ついにボールに追いつき、イチローのような華麗な守備でヤッタ~…
と思った瞬間、足をすべらせ、ボールをつかんだままグラウンドに転倒した。
ボールは手から離れ、右肩を強打し、右ひじをイヤというほど地面にすった。
わ~という子どもチームの歓声の中、
すぐに起き上がってボールを内野に返したものの…
いててててててて~
半袖のTシャツを着ていたので、モロにすりむいたひじからは血が吹き出し、
みなさんから、「大丈夫ですかぁ??」と心配されてしまった。
あぁ、年には勝てませんねぇ。
傷口を水で洗い、救急箱から消毒液を出してジャジャ~とかける。
それでも、ひじの血は簡単に止まらず、ジワジワと湧き出してくる。
僕は脳梗塞予防のための血液サラサラ薬・ワーファリンを飲んでいるので、
どうやらその影響で、血が止まりにくいのだ。
日常の行動は慎重にしなければならないのに…
子ども相手の試合でもつい一生懸命になってしまう僕なのだ。
そんなことで、子どもチームはポンポン蹴り、大人のほうは守備が悪いので、
なかなかアウトをとれず、いくらでも相手に点が入っていく。
「敵方」のモミィも何度も打席に入ったが、蹴って一塁へトロトロ走っても、
誰もモミィをアウトにしようとせず、わざと遅れて一塁へ投げたりするのだ。
だから、この練習試合のモミィの成績は「全打席内野安打」であった。
さて、最後のお母さんチームの攻撃がやってきた。
そしてまたも簡単に2アウトになり、僕にまわってきた。
僕は唯一のオトコの面目をかけ、右ひじから血を滴らせながらも、
最後の蹴りは三遊間をライナーで破り、やっとヒットが出た。
ず~っと三者凡退に討ち取られていた試合なので、
最後にヒットが打てて、大人チームとして、まあ、よかった。
(これを 「焼け石に水」 というのでしょうけど…)
相手が小学校の女の子だからとあなどってはひどい目に会う。
「プロ」と「アマ」の差みたいなものを見せつけられた。
…やれやれ。
大人たちはみんなクタクタであった。
練習日程が終り、解散となった。
僕はモミィを自転車に乗せ、そのままモミィの好きな回転寿司へ行き、
妻にも来るように連絡しようというつもりをしていたけれど、
強打した肩と、血がとまらないひじに、すっかり意気消沈し、
そのまま自宅へ帰り、妻にもう一度傷の手当をしてもらって、
そ~っと缶ビールのフタを開けたのだった。
帰宅して、モミィが撮ってくれたひじの写真。
日曜の朝からお見苦しいものを見せて恐縮ですが。
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そして、昨日に続き今日・日曜日もまたチーム「ミ〇キー」で、遠足がある。
親子どもども、大阪・和歌山の境にある岬公園というところへ行くそうだ
「子どもさんだけの参加でも全然大丈夫ですよ」
と言ってもらったので、モミィだけ行かせてもらうことにした。
先輩女子たちが親切で、モミィの世話をしてくれるので、安心だ。
このごろモミィは急に一人で行動したがるようになった。
そろそろ「親離れ」の傾向が出てきたのは大きな成長である。
いろんな活動を経験させるうちに、あの頼りなかったモミィが、
徐々にたくましさを身につけ始めていることはまことに喜ばしい。
いろいろな人たちとの交流…
これが人生で何よりも大切であることは、
最近、人との交流がめっきり減った僕として、
つくづく実感するところである (とほほ)。
さて、今は午前6時前だ。
そろそろ、モミィの遠足用の弁当を作らなければ…