羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

点と線

2015年01月13日 12時00分53秒 | Weblog
「点と線」と聞くと、松本清張原作の小説を思い浮かべる方が殆どだ、と思う。
 今日はそれではなく、鍼灸体験の話である。

 実は、昨年の秋に、春学期から初秋にかけての忙しさが一段落してホッとしたところで、腰を痛めてしまった。
 すぐにもよくなるだろうと高を括っていたところ、一週間しても改善があまり感じられなかった。
 まずは整形外科に行き、レントゲンを撮り、医師の診断を受けた。骨に異常があるわけではなく、仙長関節の腰痛症だろうから、しばらくリハビリに通う様に、ということだった。
 電気をかけそのあとに悪いところを中心にバイブレーションをかける、つまりあたためほぐす一般的な治療だった。少しずつ改善は見られた。
 
 そこで、はたと、考えたわけです。
 年齢も65歳半ばすぎた。一度、西洋医学の家庭医のほかに、東洋系のよい治療院を探すのもよかろう。
 すぐさま思いついた。
 我が家から3分で“ドア・トゥ・ドア”の鍼灸院がある。そこは知人が家族ぐるみで、長年通っているところであった。
 たぶん一度始めたら、しばらくは通う覚悟を決めて門をくぐった方がよいに違いない、と意を決した。
 一週間、整形外科に通った後、すっぱりそちらはやめて、鍼灸院を訪ねた。もちろん事前にホームページを検索し、だいたいの様子を頭にいれておいた。

 双子のご兄弟の鍼灸師を中心に、若いスタッフが4人ほどそろっている。
 鍼灸の鍼を打ち、灸の部位を指定するのは双子のご兄弟で、灸をすえるのは若いスタッフだった。
 驚くにあたらないかも知れないが、一回の治療の間、10回以上も脉を取りながらすすめていく。
 感動したのは、最初だった。
 私の担当になったお兄さんの手の温かさ、掌の分厚さ、指先の柔らかさ。その触れ方が実に素晴らしいのである。
 スーッとからだの中から力が抜けて、とろける様な感覚がもたらされた。
 ゴットハンド、といっても間違いないと思えたし、いつもそう感じる。

 今まで、見立てについて聞くこともせず、お任せ状態で通い続けている。もうしばらくはそのまま続けてみたいと思っている。
 実際に、からだが軽くなったし、それにつれて徐々に元気が出てくるのである。

 今年の正月になって、突然「点と線」という言葉が口をついて出た。
 そして、この鍼灸に何を感じているのだろうか、と自分に問いかけてみた。

 はじめに左右の脉をとる。つづいてスタッフを呼んで、足のツボらしき所を二カ所ほど触れさせながら、脉をとる。
 それから鍼を何箇所かに、丁寧に、静かに、浅く、次第に深くうち込み、そして再び脉をとる。

 それからうつ伏せになって背中から腰、腰から足、肩や首へと鍼をうちながら、その都度灸をすえる部位に印をつけてゆく。鍼を残したところも何カ所かあり、しばらく待つと若いスタッフの誰かがやってきて、記されたところに灸すえていくのである。
 こして全てが終わるまでに1時間はたっぷり要する。

 脉診が主だけれど、ツボという“点から点へ”鍼が打ち込まれていくと、からだのなかに“線”が現れる様な感じがする。
 その上で灸を加えると、その線はかなり太い系を確実なものにしているのではないか?と、思えるようになるまでにそれほどの時間はかからなかった。言葉になるには時間がかかったが、実感は常にあった。

 結果、腰痛はもちろんだが、何十年とつづいていた座骨神経痛もかなり改善した。
 胃腸系も治療の対象になっているようだ。

 いちばんは「無理は無理だ」として、無理をしなくなった自分がいる。
 軽くなって元気になったからといって、せっかくここまできて、無理をするのは勿体ない気がするのだ。
 体調を整えるために、体操以外に、こうした東洋医学の考えに触れながら、もうしばらく様子を見てみたいと思っている。
 高齢期にかかりつけの場があることも大切なのではないか、と考えたことがきっかけだったことをあらためて心に記している。

 よき実感が得られたので、そろそろどのような見立てで、どのような治療を施してもらっているのかを、ちゃんと伺ってみようと思っている。

 点と線が面となって、さらに立体となって我が臓器にどのような変化がもたらされるのか。
 MRIのような機器やさまざまに数値化する検査をせずに、脉をたよりに見えないものを診て、聞こえない音を聞いて、からだの内側に働きかける施術の妙は果たして如何なるものか。
 直接、患部に働きかける「臓器治療、免疫療法、血液内科的治療」とは異なるからだのなかの「無の道」を探る医療行為という世界を、もうしばらく味わわせてもらうつもりだ。

「点と線」が、これからいかような物語を見せてくれるのか、実に、楽しみな新年でもある。
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2 コメント

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Unknown (皆川剛志)
2015-01-14 03:34:47
以前にメールをさせて頂いたものです。
体調が改善するに従い、点や線が薄くなっていくそうです。時節柄もあります。ご自愛下さい。
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Unknown (羽鳥)
2015-01-14 10:44:52
皆川さん、そうですか。これからが楽しみですね。
正月とその後のかえってきた日常疲れで胃腸が、と伝えると、ずばっと効く鍼灸でした。点も線もなく胃のあたりの脉がドドドッと動きはじめる体験をしました。
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