羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

「びた」とは「鐚」と書く・・・・いかにも

2018年02月01日 13時36分44秒 | Weblog
 昨晩は、8時半ごろから10時半ごろまで、古今亭志ん朝の落語を聞きながら、時々、窓を開けて皆既月食を見ていた。
 結局、2時間、次から次へと志ん朝を聞いてしまった。

「びた一文、まけられねー」
 この台詞は、昨晩の演目には出てこなかった。
 しかし、曖昧な記憶ではあるけれど・・・・この言葉を初めて耳にしたのは、何かの落語だったような気がしている。

 実は「びた」とは、「悪銭のことを言う」と、昨日の朝に知ったばかりだった。
 1月31日付け日経新聞「春秋」に、仮想通貨NEMの流出の話にもっていく、前振りと結びつながる言葉だった。

 私も言葉に当たってみることにした。
 まず、『岩波古語辞典(大野晋編)』を引いてみると「鐚」の文字が書かれていた。

《室町末期から近世初期にかけて流通した質の悪い銅銭。破損したり焼けたりした銭で、中国や日本の私鋳銭などを称した。》

 交易、商業の取引で良銭だけを選んで受け取る「撰銭(えりぜに)」が横行したらしく、幕府や大名は円滑な経済活動を維持するために禁令を出した。
「鐚」と言う文字も「撰銭令」と言う文字も、バージョンアップしたために、我がPCですぐにも打ち出すことができるようになっているではないか。(笑)

「鐚」もう一度打ち出してみる。
 いかにも、うなづける文字だ。
 次に『大漢和大辞典(藤堂明保)』によると《「しころ」兜から垂らして首筋を守るもの。兜に付属した下敷きの意味。国字:びたの意味。》

 もう一つ、『広辞苑』。
 古語辞典と同様の意味が書かれていたが、共通する言葉として「京銭」が掲載されていた。
《「京銭(きんせん)」中世末期から近世初頭に通用した銭貨の一つ。明代に南京付近で通用した私鋳銭が輸入され、南京銭と称されたものの略称と言われる。悪銭として嫌われ、近世に入ってからは鐚銭と同様に使用された。》
 
 こうして辞典類を調べてみると、「春秋」の筆者がおっしゃるように、NEM仮想通貨事件は、私鋳銭の鐚銭の範疇に入れられそうな気配がしてくる。
 仮想土蔵破り事件が起こったことによって、平成最後の年に江戸期よろしく「撰銭令」でも出さねばならぬ?のか。
「ビタコイン」なる語が後世に残らぬよう願いたい、と「春秋」結びの言葉である。。

「びた一文、まけられねー」と言う書くより「鐚一文、まけられねー」の方が、音も意味も超ド迫力がある、と感じるのは日本人だからか?
 遅ればせながら文字を知ってしまった私としては、志ん朝の声色で聞いてみたいものだ!
 今までとは全く違って聞こえること間違いなし。

 ここで、野口センセの声
「鐚コインだと、そら見たことか、だから言わんこっちゃないッ」
 おっと、空耳かー。

 いやはや何が起こるかわからない世の中に相成りました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする