羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

「チベスタンスカル」その後

2015年07月24日 08時50分36秒 | Weblog
 ある方からメールをいただいた。

 許可を取っていないが、ここに一部を貼付けさせていただく。
《「チベタンスカル」について、少し気になったので調べてみました。
WIKIPEDIAの “Kapala”にある写真を見ますと、これが本来の物ではないかと思われます。
マンダラに描かれた憤怒尊が持っている物も、ただ白い頭部の骸骨ですね。
https://en.wikipedia.org/wiki/Kapala

「チベタンスカル」のgoogle画像検索でぞろぞろ出てくるのは、
ZOCALOの商品にもあるアクセサリー物なのではないでしょうか?
いわゆるヘビメタさん達が好きなガイコツ物。
珍しい物を欲しい、という要望に応えて、チベット文化圏の街には様々な模造品が列びます。
外国人のリクエストにお応えして、道を外れた物も造られています。
ネットショップで取引されているものも、人骨の代わりに猿を使ったり、装飾を加えたり、わざと汚して古く見せたりと…。

本来の密教法具Kapalaは、普段は寺の奥に仕舞われていて、
必要な時にだけで持ち出される地味なものなのでしょうね。

改めて「ネーコル・チベット巡礼」伊藤健司著の中にある鳥葬の様子を読んでみますと
凄まじいものがありますが、火葬を忌み嫌う宗教もありますから、そこは宗教の違いなんでしょう。

「美と宗教のコスモス-1〈マンダラの世界〉杉浦康平+松長有慶」にある「五根の供物・五肉の供物」の項に
憤怒尊への捧げ物について詳しく書かれているのですが、興味がありましたらそこだけコピーいたします。》

 昨日、そのコピーが郵送されてきた。
 読みながら思う。
 なかなかの世界観、宗教観である、と。
 気候風土、標高、自然環境の違いが、まず宗教にあらわれている。
 西からか、東からか、南からか、方角はわかないが、戦火に追われた民族が逃れてきたのか、意識的な民族移動なのか、それもわからないがラダック地方のマンダラは、時空を超えた独特の神々の世界との交流を描きだしている。
 チベット文化圏の人々の美術的な想像力と描き出す力は、外国人が容易に踏み込めない地域で熟成したガラパゴス美術として優れているから、いわゆる文明先進国と言われるなかで疲弊した人々を癒す秘薬・媚薬、ときに感性に喝を入れる刺激的な効果も発揮するのかもしれない。
 意識的に隠蔽し、安易な興味だけで見てはいけないもの、畏れと祈りなしには触れてはいけないもの、そうしたものの根源的な力を西欧的な価値観で測ることは本来は許されないこと、と改めて文章と図表と見ながら思わずにいられなかった。

 思えば、野口三千三先生につれられて東京・原宿で開催された「マンダラ展」を見に行ったことがあった。
 杉浦康平氏が日本ではじめての企画した「マンダラ展」だったと記憶している。
 それを機に先生の法具を初めとする蒐集が始まった。
 ある日、人骨でつくられた笛が入りました、と連絡があったらしい。
 さっそく出かけた先生から電話をもらった。
「やはり、こうしたものは、滅多に手元に置く物ではない、と思ったよ」
 時間をかけてよく考え、その上で下した思慮深い判断、といいうよりは、見て触れた瞬間にからだの底から沸き上った“直感”だそうだ。
 ここで、立ち止まる。
 ここで、引き返す。
 ここで、一旦やめる!
 始めたことを、今、この瞬間、この場で、やめる判断を下すことは、実はとても難しい。
 もう少し、もう一歩、もう一段、と歩みを進めたくなるのが人情というもの。

 さて、ZOCALO 高円寺にある5体のチベスタンスカルは、非売品だという。
 本物かそうでないか。あるいは宗教とは無縁のところで求められたものか。それは別にして、無理のない範囲であるならばという条件付きで、一度はご尊顔を拝しておく意味はあると思う。
 そこで何を感じるのか。その機会をもったうえで、直感力を磨くのが野口体操なのだから。
 本来は現地に行ってみるのがいちばん。とはいえ容易く許されない事情というものがありますから。

 なんでここにたどり着いたのだろうか。
 おそらく「生命大躍進」で人類に進化する頭蓋骨をみて、「骨」という字源を調べているうちに、「ヨガの逆立ち」つまり頭の中心に重さを乗せて、鉛直方向に真っ直ぐ立つ逆立ちはいったいいつから始まったのか。誰が始めたのか。どのような文化・価値観のなかで生まれ育ってきたのか?がはじまりたった。すっかり忘れるところだった。
コメント (2)
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