電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第210回定期演奏会でショパンと吉松隆とR.コルサコフを聴く

2011年01月23日 06時02分33秒 | -オーケストラ
連日の除雪作業にいささかうんざりしている大寒の候、山形テルサホールで、山形交響楽団第210回定期演奏会の第1夜を聴きました。今回は、「魚座の作曲家たち」と題して、三月生まれのショパン、吉松隆、リムスキー・コルサコフを取り上げています。

(1) ショパン 「レ・シルフィード」(グラズノフ編曲)
(2) 吉松隆 マリンバ協奏曲「バード・リズミクス」Op.109 (2010)
(3) リムスキー=コルサコフ 交響曲第2番嬰ヘ短調Op.9「アンタール」

飯森範親さんのプレトークでは、本日の曲目を紹介しました。ショパンの「レ・シルフィード」は「風の精」という意味だそうで、ショパンとジョルジュ・サンドの二人を肖像画に描いたドラクロワが、二人の関係が破綻したら真ん中から分けてしまい、別々の肖像画にしたというエピソードを紹介しました。絵画も好きな音楽監督の説明に、思わず「ヘェ~」です。吉松さんの作品は後で説明するとして、リムスキー・コルサコフの交響曲第2番「アンタール」から。これは、交響組曲として扱われることもあるけれど、今回は交響曲として取り上げたそうです。パルミラの妖精の女王は、鹿に変身しているときに大きな鳥に襲われ、槍を投げて大鳥を追い払った青年アンタールに、「三つの喜び」を約束します。アンタールが願った三つとは・・・という曲だそうです。

続いて本日のソリスト三村奈々恵さんが登場。吉松隆さんのマリンバ協奏曲「バード・リズミクス」は、昨年秋に飯森さんと三村さんが京都市交響楽団で初演したそうな。今回の山形は再演ということになります。三村さんは、作曲者からMIDIデータをいただいたとき、日本の里山、もののけ姫が生活する世界をイメージしたそうです。ステージ上は、とにかくイスと楽器がたくさん。ステージいっぱいに並んでいます。とくに、パーカッションの鳴り物が多いようです。楽しみです。

まず、グラズノフが編曲したショパン「レ・シルフィード」から。
第1曲:ポロネーズ。かっこいい行進曲みたいなオープニング。今から番組が始まりますよ~と宣言するみたいな始まりです。同じリズムを刻むパーカッションでも、破裂音を特徴とするドラムと、それよりは深い音のティンパニとを、うまく使い分けているのですね。ティンパニのときはシンバルを加える、みたいに。
第2曲:ノクターン。Hrn,Fg,Cl,Vc,Vlaの旋律。これに2nd-VnとFlが加わる優しさ。そして全休止のあと曲想が変わりますが、弦と管が奏でる音楽はやっぱり優しいものに戻っていきます。
第3曲:マズルカ。ObとFlから。これにFgとCl等が加わり、足立さんのフルート・ソロの聴かせどころです。リズムはくるくると回りながら徐々に速度を上げていくように、マズルカに変わっていきます。
第4曲:タランテラ。妙なところを観察しているようですが、バスドラムの奏者の方の指と手首に巻いた包帯とバンソーコがすごい。パーカッションの振動は指をささくれさせるのでしょうか。音楽は盛り上がって終わります。

続いて吉松隆さんのマリンバ協奏曲「バード・リズミクス」です。演奏の前に、飯森さんが説明を加えます。4拍子の中に変拍子が聞こえ、いろいろな楽器が鳥の鳴き声を模しているそうで、作曲者が「ヘタクソなオヤジがビートルズを歌っているように」などという指示もあったそうです(^o^;)> me?
2楽章は、山響の弦楽器の美しさを堪能でき、3楽章は大音響で終わるとのこと。ステージに並んだ鳴り物の多さに、期待が高まる中、本日のソリスト三村奈々恵さんが登場します。黒の上にサーモン色のドレスで、いかにも動きやすそうな衣装です。
第1楽章:Bird Code. マリンバと管が森の中を表すように、弦は不規則な速いピツィカートで鳥たちの鳴き声を。アカゲラやキツツキのようなドラム音は、コンガでしょうか。三村さんは藤色のマレットを自在に駆使し、面白いリズムです。ときどきピッコロが猛禽類のような鋭い音を発し、大きく盛り上がって再び静けさが戻り、この楽章が終わります。
第2楽章:Rain Song. 弦がほんとに透明な澄んだ響きです。ヴィヴラートはほとんどないか、ごくわずかに。ウィンドチャイムも効果的に使われて、実に高密度な音楽です。ソリストは、マレットを赤から再び藤色に持ち替えて、マラカスもリズムに加わります。速く大きな動きもあって、マリンバのリズムと音色の魅力がいっぱいに展開されます。
第3楽章:Bird Feast. 鳥たちの饗宴、という意味でしょうか。マリンバとフルートとコンガの速い応酬から。細かく複雑なリズムの音が多いので、大型金管楽器の出番が少なくなっていますが、ここへ来て金管舞台も激しく主張します。打楽器の魅力が炸裂!土俗的なリズムのすごい饗宴です!

いや~、堪能しました。これはいい曲だなぁ。CDほしいなぁ(^o^)/
山響レーベルから出ないかな(^o^)/
などと思いながら拍手していると、聴衆の拍手も鳴り止まず、アンコールがありました。マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から、「間奏曲」を。あの甘美な音楽を、むしろ神秘的な音楽に変えてしまいました。う~ん、満足!

ここで15分の休憩が入ります。ロビーでは、久々に元の職場の同僚に会うなど、ちょいと嬉しいハプニングもあり、オレンジジュースで喉を潤します。



後半、リムスキー=コルサコフの交響曲第2番「アンタール」です。
第1楽章:「アンタールの夢」、ラルゴ~アレグロ。なるほど、夢の始まりです。どちらかといえば悪夢のような(^o^)/ 妖精の女王ナザールの化身のカモシカはフルートで表されているのでしょうか。大きな鳥は、不気味な低弦で。アンタールの槍で大鳥は退散し、女王は若者に三つの約束をします。ペルシャ風の旋律が、いかにもR.コルサコフらしいです。
第2楽章:「復讐の喜び」、アレグロ。バスドラムと低音楽器群が始まりを導きます。暗い不安な雰囲気で、ペルシャの物語というよりは、ロシアの残酷な物語のように。
第3楽章:「権力の喜び」、アレグロ~リゾルート(決然と)。行進曲風に始まり、弦楽器が奏でる抒情的な主題が、「シェエラザード」みたいな雰囲気です。クラリネットはいそいで管を取り替えるなど、なかなか忙しい。飯森さんが言ったように、まるでこの楽章で終わるみたいに斉奏で盛り上がりますが、まだ次の楽章があるのでした。
第4楽章:「愛の喜び」、アレグレット~アダージョ。ハープ等が前奏に。ObやClがアラビア風の旋律をかなで、FlとFg、Hrnやイングリッシュ・ホルンなど木管が魅力を存分に発揮します。いや~、斎藤真美さんのイングリッシュ・ホルンの鄙びた響きは、あらためていいものですね~と感じました。曲は、静かに終わります。

このお天気に加えて、知名度はあまり高くないプログラムですので、さすがに少々空席が目立ちましたが、このお天気にも関わらず集まってくれた聴衆の皆さんへ、飯森さんがお礼と帰路は気をつけてと挨拶すると、聴衆の皆さんにたいへんウケていました。音楽はもちろんですが、ほんとにこの気配りが、マエストロの人気の秘密なのかも(^o^)/

で、私はちょいとだけファン交流会に参加、飯森さんと三村さんのインタビューを聞きました。司会はトランペットの佐藤さん。



三村さんが吉松隆さんに作曲をお願いしたときの話などを中心に、興味深い話題でした。それだけではなく、せっかくの機会なので、三村奈々恵さんのCDを購入して、ご本人にサインをいただきました。それがこれ。



当方のミーハー心も十分に満足させて、帰路につきました。マリンバの音、深くて豊かな響きを当分楽しめそうで、ちょいと嬉しい(^o^)/
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