電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

プロコフィエフ「ピアノソナタ第6番」を聴く

2011年01月14日 06時03分04秒 | -独奏曲
最近の通勤の音楽は、厳冬期のスリリングな路面にあわせて、プロコフィエフのピアノソナタを選んでおります。今回は、イェフィム・ブロンフマンの演奏で、プロコフィエフのピアノソナタ全集から、第6番を取り上げます。第6番、第7番、第8番の3曲は「戦争ソナタ」と呼ばれ、プロコフィエフのピアノソナタの代表的な作品なのだとか。4つの楽章からなるこの第6番は、動的な気分が特徴的な曲です。

第1楽章、アレグロ・モデラート。出だしは荒々しく独特の響きで、つるつるに凍った路面をタイヤを滑らせながらカーブに突っ込んでいく、腕力タイプの運転みたいな主題を持った音楽(^o^)/ でも、主題の変奏はかなり幻想的・神秘的で繊細なところもあり、いかにもプロコフィエフらしい多彩さです。
第2楽章、アレグレット。快活な、はずむようなリズムで。ハンドルを持つ手が、ひとりでに動くような楽しさがあります。後半の、リズムを強調しないところから再び快活なリズムが戻ってきて終わるところが、とってもチャーミングです。
第3楽章、Tempo di valzer lentissimo。かなり遅く、ワルツのテンポで、というような意味か。いかにもプロコフィエフらしい、ゆったりとした、非常に美しい音楽です。あえて言えば、ロシア的陶酔の音楽の面もあるような。
第4楽章、ヴィヴァーチェ。よくまあ指が回るものだと、素人ながら思わず妙な感心をしてしまう、すごい音楽。ときおり第1楽章を思い出しながら吹雪の夜をクールに疾走するような、度胸というか、肚の座り具合を試される種類の音楽かもしれません。

1939年から40年にかけて作曲され、1940年の春に、モスクワで作曲者自身の演奏により初演されたそうです。作曲者は49歳、ちょうどバレエ「ロミオとジュリエット」が初演される前後にあたりますが、まさに内憂外患です。トロツキーが暗殺され、フランスがナチスドイツに降伏し、最初の妻であるリーナと離婚することになる時期ですから、おそらくスターリン主義の圧力と恐怖をひしひしと感じていたことでしょう。

演奏は、イェフィム・ブロンフマンで、SONY SB3K87747 という型番の3枚組CD、プロコフィエフのピアノソナタ全集となっています。私はあいにく他の録音を知りませんけれど、この人の見事なプロコフィエフ演奏は、もう驚くばかりです。

■イェフィム・ブロンフマン(Pf)
I=8'57" II=4'49" III=7'33" IV=6'49" total=28'05"
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