電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第38回定期演奏会でハイドン、ベートーヴェン、ドヴォルザークを聴く

2011年01月17日 06時03分42秒 | -室内楽
厳寒の日曜の夜、山形市の文翔館議場ホールまで、山形弦楽四重奏団第38回定期演奏会に出かけました。あいにく妻は過日の雪かきで腰を痛め、本日は私一人です。激しく降り出した雪道をノロノロと走り、ようやく会場に着くと、すでにプレコンサートが始まっておりました。今夜は、茂木智子さんと菊地祥子さんのヴァイオリン・デュオです。曲目は、作曲者名を聞き漏らしてしまいましたが、ベルギーのヴァイオリニスト・作曲家でフランコ・ベルギー楽派の創始者であるベリオの(*1)作品57-3から、第1楽章と第3楽章とのこと。なかなかすてきな曲、すてきな演奏です。

続いて駒込綾さんが登場、本日のトークを行いますが、「おやっ!」とびっくりするほど見事なショートカットに変身。「センセ、タカラヅカ」と生徒にひやかされるほど(*2)だということですが、なるほど、です。タカラジェンヌ、いつでも代役ができそうなほど、よくお似合いでした(^o^)/
まあ、それは冗談として、本日の曲目については、ハイドンのプロシャ王四重奏曲については、あちこちに「キラキラした輝きを持った曲」とのこと。ベートーヴェンの「大フーガ」は、ぎゅうっと凝縮したエネルギーを感じるすごい曲、とのことですし、ドヴォルジャークの第10番は、伝統的な様式に民族的な旋律とリズムが見事に調和した曲、とのことです。私的には、大好きなドヴォルザークの第10番(*3)が聴けるのが何といっても楽しみです。

さて、四人のメンバーが登場します。第1ヴァイオリンの中島光之さんは、ダークスーツに白いシャツ、ダークグレーかあるいはこげ茶色のネクタイです。第2ヴァイオリンの駒込綾さんは、上半身に水玉の入った紺色のドレスに黒のボレロ。そしてヴィオラの倉田さんは、黒のダークスーツに黒っぽいシャツ、赤いネクタイです。チェロの茂木さんは、黒のダークスーツと白いシャツに、濃いピンクのネクタイを合わせています。こうして四人揃ってまたカルテットが聴けるのは、うれしい限りです。

第1曲、ハイドンの弦楽四重奏曲、第44番、変ロ長調Op.50-1、プロシャ王四重奏曲です。1787年に作曲されたそうで、モーツァルトのお父さんが亡くなり、「ドン・ジョヴァンニ」が初演された頃の作品です。
第1楽章、アレグロ。チェロの刻むリズムから始まります。このブンブンブンブンという反復は、チェロに現れたりヴァイオリンに現れたりしますが、これに対し、ヴァイオリンとヴィオラが、優しく落ち着いた音楽を奏でます。
第2楽章、アダージョ。1st-Vn が主導して始まる緩徐楽章は、続いて 2nd-Vn に移り、四人の合奏を導きます。
第3楽章、メヌエット・ポコ・アレグレット。1st-Vn と 2nd-Vn が瞬時の間を置いて、キコキコキコと下降するところなど、おもしろい効果です。
第4楽章、フィナーレ、ヴィヴァーチェ。軽やかに始まり、リズミカルな音楽です。

2曲目は、ベートーヴェンの「大フーガ」Op.133 です。もともと、1825年に完成した、弦楽四重奏曲第13番(Op.130)の終楽章として完成したのだそうですが、第13番は好意的に迎えられたものの、この楽章だけは難解なものとして評価され、当時の楽譜出版側から、終楽章の別途作曲とともに、この大フーガは別作品として出版したいと提案されたとか。たしかに、現代のカルテットの演奏側でも「複雑」「難解」という語を用いるくらいですから、当時の商売の観点からは(^o^;)もっともな話です。当方は、映画「敬愛なるベートーヴェン」にて、「あなたと同じに聴こえました」を観ております(*4)し、さほど抵抗はありませんが、でも格別の集中力を求められることは間違いないところです。
曲の始まりで四者が序奏を響かせる中から、やがて1st-Vnが決然と厳しい音楽を開始し、不協和なフーガが展開されます。音楽はサラサラとは流れず、いかにもゴツゴツと、しかしテンポはしっかりと保たれ、リズムは強靭に貫かれます。全体のプロポーションは、現代のバルトークの音楽がすぐ近くに感じられるほどです。



15分間の休憩ののち、プログラムの後半、ドヴォルザークの「弦楽四重奏曲第10番」です。
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。始まりはチェロとヴィオラからです。ヴァイオリンはバランスに配慮しているようで、抑えめに。チェロのピツィカートがとってもリズミカルで、曲にぴったり乗っている感じです。ほんとにドヴォルザークは、旋律に恵まれた作曲家ですね~。
第2楽章:ドゥムカ、エレジーア。アンダンテ・コン・モト。ゆったりした悲歌です。1st-Vn がややストイックに美しい音を聴かせると、2nd-Vn は感情をこめて応えます。なかなかいい塩梅です。後半、スラブ舞曲ふうにテンポアップして、再びチェロのポロロン、ポロロンというアルペジオに続いて悲歌が再現して終わります。
第3楽章:ロマンツァ。アンダンテ・コン・モト。始まりは第1Vnと第2Vnから、ヴィオラとチェロがそれに答える形で、です。ロミオとジュリエットみたいな連想をしてしまう、シンプルながら美しい場面です。やがて、ロマンティックではありますが静かに落ち着いた感じで、この楽章が終わります。
第4楽章:フィナーレ。アレグロ・アッサイ。曲は一転して速いテンポで活動的な音楽に変わります。背後でヴィオラがおもしろい音の効果を出しています。第1ヴァイオリンは終始見事なリードをしてくれますが、ここでも第2ヴァイオリンがしっとりとしたいい役回りを見せてくれます。そういえばこの曲は、第2ヴァイオリンにとっては、聴かせどころの「美味しい」部分が多いみたいですが、だちゅさん、違いましたか(^o^)/

アンコールは、同じドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」より、第3楽章を。やっぱり「アメリカ」いいですね~。なお、ハイドンの弦楽四重奏曲全曲演奏も、ついに残すところあと28曲になったとのこと、次回の定期演奏会は4月23日(土)18:45からで、ハイドンのプロシャ王四重奏曲から、Op.50-2 ほか、だそうです。

いや~、今日も真冬の室内楽演奏を堪能いたしました。外は大雪でも、文翔館議場ホールの中は、あたたかな親密空間でした(^o^)/
チェロの委員長氏は、某「畑の先生」と会話をしているようでしたし、私はといえば、某「庄内の笛吹き」夫妻とはじめてご挨拶。無事に酒田に到着されることを祈りつつ、当方も吹雪の中を疾走して田舎の我が家へ帰りました。

(*1):シャルル=オーギュスト・ド・ベリオ~Wikipediaの記事
(*2):そういや~「★だちゅのにっき★」より
(*3):ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第10番」を聴く~「電網郊外散歩道」2005年10月
(*4):映画「敬愛なるベートーヴェン」を観る~「電網郊外散歩道」2007年1月

【追記】
チェロの茂木さんから、プレコンサートで演奏された曲はベリオの作品で、ベリオといっても20世紀のイタリアのベリオではなく、フランコ・ベルギー楽派の創始者で、ベルギーのヴァイオリニスト・作曲家のほうであること、などの追加情報をいただき、訂正しました。
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