日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「詩歌のリズムと響き」。「雨は好き……じゃない。太陽が恋しい」。

2010-09-28 22:53:17 | 日本語の授業
 雨の日はいいものです。今朝も、歩いての登校です(まるで、学生みたいですね)。濡れて潤いを取り戻した木々を見ながら、今朝は、我ながら余裕綽々でした。 昨日は、どうしてこんなに遠いんだとブツブツ言いながらの登校で、まわりを見やる余裕など、全くと言っていいほど、ありませんでした。ところが、今朝、近くで、「ねじれ草」をみつけたのです。秋ですね。雅な名でいうところの、「モジズリ」です。

「みちのくの しのぶもぢずり たれ故に 乱れそめにし われならなくに」(源 融)

 「百人一首」を覚えはじめた頃、「もぢずり」なんて、一体何のことなのか、全く判りませんでした。それが草の名であることも知らなかったのです。もちろん、そうは言いましても、「乱れそめにし われならなくに」で、多分、恋の歌だろうくらいは、推察出来ましたけれども。

 いったい、「百人一首」なんてのは、いわば、ゲームで、トランプの代わりのようなものなのです。「アリスとトランプの女王」が出て来る代わりに、絵札に、「女房」や「坊さん」が出て来るだけです。もっとも、引き札の方は、文字だけで、色気などありませんけれども。

 思えば、短歌や、いわゆる「詩」に属するもの(限りなく詩的高揚をもたらす文章も含みます)は、極端な言い方をすれば、意味なんぞ分からなくともいいのです。心に響いてくる、リズムさえあればいいのです。初めてテレビ講座で、ドイツ語の詩を読んでいるのを聞いたとき、意味なんぞ判らずに、しかも、判らないくせに、不思議に心が高ぶりました。

 シュバルツバルトの森の闇の深みを感じさせられるような、ただ「イイッ(良し)」だったのです。陶酔するような声でした。それは、人の声、つまり音声が語った、森の木々であり、樹々の姿が映った深い湖の緑だったのです。

 こういう感覚は人によって全く違うもののようで、それを友人に話しますと、途端に「エエッ」という反応。「ドイツ語の響きのどこが良いの!」と馬鹿にされてしまいました。けれども、私には、詩に聞こえたのです。確かに意味は判らなかったけれども、あれは詩以外の何物でもないと思えたのです。本当に、同じものを聞いても、それの受け方が違うのです。感性が違うと一括りにしても良いようなものですが、そうとばかりも言えず、どこかしら、戸惑いが抜けきらないのです。とはいえ、ドイツ語の響きを懐かしむ人も居れば、日本語を音楽のようだという人が居てもおかしくはありません。その人には、そう聞こえたのですから。

 ただ、どの言語に限らず、たとえ、意味が分からなくとも、人をして聞き入らせてしまうような優れた響きを、類い希なる詩歌は持っているようです。破調したものは、それなりに。

 さて、学校です。
 朝から昼過ぎまで雨は降り続いていましたが、午後になると薄日が射してきました。3時近くに教室に行きますと、窓からの光がもう少しで学生の顔に当たりそうになっていました。それで、「カーテンを閉めましょうか」と言うと、学生は、「太陽の光です。そのままで大丈夫です」と言います。それでも、目に当たって眩しかろうと、カーテンを閉めたのですが、後からよくよく考えてみまするに、彼は内モンゴルから来ていたのです。ここ数日雨が続きましたので、(雨に)参っていたのでしょう。そのままにしておいた方がよかったのかなと反省してしまいました。彼は、私に気を遣ったのか、何も言いませんでしたけれども。

 そう言えば、内モンゴルからの学生が多い「Aクラス」は、バタバタと病人が続いています。歯を抜いて、腫れたので来られないという漢族の学生までいますからね。どうも、乾燥地帯で育った彼らは雨に弱いようです。私なぞ、雨が降ったことによって、すっかり元気を取り戻しているというのに。

 日本人は、夏の初めの「梅雨」をはじめ、秋には、例年、台風や秋雨前線の停滞もあり、長雨というのに慣れています。その、シトシトと降り続く雨を楽しむ術も知っています。けれども、来日後一年かそこいらの学生達は、なかなかそうはいかないのかもしれません。雨の日は、嫌だと言います。一日中、部屋にいても、やはり嫌だと言います。そこが違うのかも知れませんね。日本人とは。

 とはいえ、一雨ごとに秋らしくなるなどと、ニコニコして彼らに言ってしまった自分が、少々決まり悪くなってしまいます。

日々是好日
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