日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

中国で買った「お土産」

2008-09-25 07:47:27 | 日本語の授業
 今朝は少々早く来たせいか、虫たちもまだ目覚めていなかったようです。

 実は、昨日、非常に疲れていたことを、内心喜んでいたのです(何となれば、「年を取ると、疲れは翌日には出ずに、何日か経ってから出る」と言うではありませんか)。しかしながら、傍らの人曰く、「この疲れは、19日にフフホトで得た疲れである」と。がっくり来てしまいました。

 さて、学校です。中国で旧友達が選んでくれたお土産は、学生達みんなに喜んでもらえました。中国人の、特に北方から来た学生達が、お菓子の蘊蓄を一くさり。それを他の国の人や南方から来た人達が聞くという具合で、本来ならば、漢字の導入や練習をしなければならない時間がゆっくりと和やかに流れていきます。

 面白いもので、クラスによって、売れ行き筋が、異なっていました。上級クラスでは「稲香村」のクッキーめいたものが、うまく捌けました。干した果物も大丈夫。平均的にみんな喜んでもらえたようです。中級クラスでも(なぜか「先生、お土産が欲しい」と下を向きながら呟いた中学生さんが、すっかり言ったことを忘れていましたけれど)、このクッキーはなくなっていました。中国人の学生は、親切ですね。餡が苦手だというインド人の学生に、一生懸命餡のないクッキーを捜し、「食べろ、食べろ」と勧めていました。まあ、この時に限らず、この二人は(二人ともIT関係の仕事のために日本に来ています)、いつも互いに助け合っているのですけれど。

 ところが、初級のクラスでは少々違っていました。話題になったのはクッキーではなく、干した果物、それもクルミだったようです。ちょうど彼らが漢字のテストの時に、先生が配られたようで、お皿の上のクルミを見るなり、中国人の学生達が、異口同音に「Aさん、クルミを食べて。食べて。頭がよくなります」。言われたインド人の学生は「私は、もう頭がいいです。いりません」。プライドを傷つけられたのでしょうか。彼はインドの有名大学を出ているのですが(7月生です)、まだ4級の漢字をすべて覚え込んだというわけではなく、後半部分が「ちょっとあやふや」なのです。それを、みんなちゃんと知っているのですね。

 そういうわけで、中国人の学生達は、「クルミを食べたら、ちゃんと思い出せる。がんばれ」という意味で、クルミを勧めたのでしょう(みんな、彼が一生懸命練習していることを知っているからこその親切なのです)。

 その、インド人のAさんなのですが、初めは「私は、クルミなんか食べなくても、大丈夫。フン。」だったのに、試験中に、やっぱり、こっそりとクルミに手を伸ばしていたそうです。例によって、自信がなくなる所、つまり4級の後半部分に至った時に、です。

 ところが、試験中、もう一人、クルミに手を伸ばした人がいました。さっき大きな声で、Aさんに、クルミを勧めていた中国人学生の一人です。これに気づいたAさんは、大いばり。急に公然とクルミに手を伸ばし、いくつも口に運んでいたそうです。それでいいのです。クルミは頭にも、身体にもいいですものね。

 実は、「出張のお土産」に、はじめは月餅を買おうと考えていたのですが、北京で旧友と食事している時に、「スーパーにも、デパートにも、もう、ない」という事を知らされ、愕然とし、うろたえている時に、このお菓子を勧められ、急遽、予定変更して買うことにしたのです。しかし、どこにでもあるとは聞いたものの、具体的な場所はわかりませんでしたから、その後で、以前の同僚や学生と会った時に、聞いたのです。この近所にあるかどうかと。すると、すぐに、北京駅の近くの、そのチェーン店へ連れて行ってくれました。そして、ついでに、選んでもらったという次第なのです。そこには、クッキーだけでなく、いろいろなお菓子がありました。干した果物もたくさんあったので、それをぼんやり見ていると、「これは呆け防止」だの、「頭がよくなる」だの、(好意から)いろいろなものを勧めらたのです、以前の同僚に。

 ちょっと考えてみると、おかしいですね。フフフです。普通、日本的に考えると、あのように「これはいいんだ。これはあなたのためにいいものなんだ」的な勧め方は。ある意味では「おまえはもう呆けが始まっている。まだでも、もうすぐ始まるはずだ。だから、これを食べておけ」なのですが、勧めてくれる彼らの表情には、好意と親切さが溢れているのです。それで、私も思わず、吹き出しそうになるのを堪えながら、自分の分まで買ってしまいました。クッキーの種類を選んでくれたのも、彼らです。箱詰めのことやら、壊れやすいので手荷物で持って帰るように勧めてくれたのも彼らです。

 その成果が、ちゃんとこうして出て、どの国の人にも(クッキーが苦手な人は、干した果物をつまんでいましたし、干した果物が苦手な人はクッキーをつまんでいました)喜んでもらえました。このお店を勧めてくれた人にも、連れていって選んでくれた人にも、感謝です。

 しかしながら、たとえ日数は短くとも、留守にすると大変ですね。授業が終わった5時くらいから、約束していた一組以外にも、2組のお客さんが来てしまい、てんてこ舞いでした。一組は娘さんをこの学校の就学生として入れたいという中国人のお母さんを連れた、元学生。一組は、今年早稲田の別科へ入学するという学生を連れたミャンマーの先生(とても感じのいい方でした。つまり、私たちと同じ「匂い『教師の』」のする人という意味でです)。もう一組は、IT関係の人で、仕事が見つかるまで、日本語の勉強に励みたいという恋人を連れた女性。

 「勉強する気があるのなら、この学校はちょうどよいけれど、もし、そうでないのなら、ここは、むかない。近くにいくつも日本語学校があるから、そちらも当たってみてくれ」と言っても(本来なら、言いにくいことです。けれど、実際問題としてはそうなのです)、通用する相手ばかりでした。よかった、よかった、です。

 これは、親の都合で日本へ来なければならなくなったという、子達は別ですが、それ以外の大人であれば、当然のことでしょう。

 就学生には、勉強が目的ではない人もいますし、進学をめざしていない人もいます。めざしていても、母国で勉強する習慣がついていなければ(20年近くも、或いはそれ以上もそういう習慣の下で育っているのです)、突然日本に来て、アルバイトをしながら、まじめに勉強をやれと言っても無理です。

 けれど、夫の仕事の関係で日本に来たという人や、日本で仕事をするには日本語が必要である(現在IT関係の仕事も不況のようです)ということから日本語の勉強を始めた人は、だいたいまじめに勉強してくれます。

 そうなると、就学生も釣られて「勉強にいそしむ」ということになりますから、私たちにしても、そういう人が来てくれるのはうれしいのです。

 とはいうものの、日常に戻れるのは(落ち着けるのは)、きっと来週からでしょう。

日々是好日
コメント
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