源平合戦の名場面?の一つに、倶利伽羅峠の戦いというのがある。木曽から旗上げをした源義仲が北陸から京の都を目指す中で平氏の軍勢と相見えたが、義仲の牛の角に松明をつけて山道を下らせる作戦が功を奏して平氏勢を谷に追い落として打ち破ったという一戦である。
その倶利伽羅峠にちかい小矢部市。小矢部インターの近くの丘陵にある小矢部野球場に現れる。17日、BCリーグの富山サンダーバーズ対石川ミリオンスターズの試合である。スタンドも小ぶりな、いかにもローカル球場といった感じの球場で、扉を一つ開ければすぐにベンチともつながっているという造り。
それにしても暑い。午前中は伏木を回っていたのだが、道路際の温度計が早くも30度を指していた。入場の際には選手からカチワリ氷をもらったり、係の人がうちわを配ったりのサービス。さらにうれしかったのが、スタンドが小ぶりということで一塁側スタンドの一部にはテントが貼られていたこと。特に指定席エリアというわけではなくありがたく入る。少なくとも直射日光は避けられるし、テントのないところではシートが焼けるような熱さだったから(何も敷かずに座ろうとした人が熱さに悲鳴を上げて飛び上がったくらい)、このあたりの気配りには感心した。
「富山はサービスがええのう。石川の社長も見習ったら・・・」てなことを石川のファンと富山のファンがやり取りしていたが、三塁側にはテントがない。もちろん一塁側にもテントのないエリアがあり、そうしたところがそれぞれの応援団エリアとなる。
周囲は緑に覆われているし、山に近いせいか時折吹き抜ける風は涼しい。鉄道のローカル線と同じように、こうした自然を感じられるのもローカル球場を訪れる楽しみの一つである。ただ、暑い・・・・。2リットルのペットボトルのお茶、塩飴を持参しての持久戦である。場内アナウンスでもしきりに熱中症防止を訴えていた。
富山にはチアリーダーを入れているようで、リーダーは大学生くらいかな、小学生も交えた女の子が試合前、5回裏にはダンスを披露したり、途中ではスタンドで応援を送ったりと、暑い中で試合に華をそえる。
さて試合、富山の先発は、監督・選手らによる投票で前期の投手部門MVPに選ばれた新加入の日名田、そして石川の先発はドミニカ出身のモタ。日名田は小柄ながらキレのいいボールを投げる感じで、日本ハムの武田久を彷彿させる。一方のモタは長身を生かした剛速球を投げてくる。
序盤はこの二人が見事な投手戦。ストレートが決まって見逃し三振というのは見ていて気持ちいい。日名田も危なげない制球で石川の打者を次々に打ち取るし、モタの速球の前に、富山の打者が腰を引いたボールもストライクになったり、思わずバットを止めても捕手・笹沢のアピールでスイングと判定されたり。
もっとも、この判定に対しては富山ファンからはヤジが飛ぶし、交代の時には富山・横田監督も主審に抗議していた。
試合が動いたのは4回裏。先頭の西川が左中間へ二塁打。これがこの試合両チーム通しての初安打。この後一死一・三塁となり四番・島袋がライトの頭上を破る二塁打で1点先制。さて中盤になって試合展開が一気に変わるか。
5回表、日名田が先頭の笹沢に内野安打を許す。この笹沢、2回の1打席目で自打球を当てるアクシデント。しばらく起き上がれず肩を担がれて一度ベンチに下がったが、しばらくして足を引きずりながら登場。ショートへのゴロを打ったが、足を引きずりながらも一塁へ全力疾走。このプレーには富山ファンからも大きな拍手が送られた。一方の富山も攻守交替の時にはチームとして全力疾走を実践しており、こうした懸命なプレーも地元の人たちの応援にもつながっていると思う。
さて5回に笹沢が安打を放ったところで代走が送られ、送りバントで一死二塁と石川が同点のチャンス。ここで代打にドミニカ出身のルーゴが登場。試合前も鋭い当たりを放っており、私の後ろに座っていた少年野球の子どもたちも「外人や」「すげースイングするなあ」と。しかしこのピンチも日名田が二ゴロに打ち取る。子どもたちも「たいしたことないや」と現金な反応。
ピンチの後にチャンスというが、続く5回裏。先頭の池田がライト線への二塁打。先ほどの回からモタの投球も全体的に高めに行くようになり、ストライクとボールもはっきりするようになってきた。犠打で一死三塁となり、8番・大陽(登場曲が「太陽にほえろ」のテーマ曲)がセンター前ヒットを放ち追加点。
続く9番・近藤(前・明石レッドソルジャーズ、この試合も再三好守を見せる)がライト前ヒットで続き、1番・西川がスクイズ。ボールは浮いたがうまく野手の間に落ち、自らも一塁に転がり込むが間一髪アウト。
続く七條がレフト前ヒット。これでこの回3点目となり、4対0と富山リード。一塁側スタンドは大いに沸く。序盤好投のモタも4回以降は別人となってしまいあえなくKO。
4点のリードをもらった日名田だが、6回以降も落ち着いた投球。各打者の結果をメモにつけているのだが、ほとんどが内野ゴロ、あとは見逃し三振ということで外野にはほとんど打球が届かない。それだけ制球がいいということで、初めて見た投手だが野手との一体感があるような投球で、前期優勝しなかったチーム(上信越地区とあわせると通算5位)ながらMVPに選ばれたのもうなづける。
ただ7回、石川の4番・敬洋、5番・途中出場の深澤に連打を許し、佐竹にこの試合初めての四球(死球は初回に一つあり)を与えて一死満塁。ここで先ほどのルーゴに打席が回る。本塁打で一気に同点ということで、終盤の大きな山場を迎える。
今度は強い当たりが三遊間を襲う。サードの上田がよく飛び込み一塁でアウト。この間に1点入り、4対1。まあこの展開で1点は仕方ないだろう。次の座親をきっちりと抑えてよく1点でしのいだ日名田。8回も死球を与えるがショート近藤の好プレーで併殺に打ち取り、石川の反撃ムードを断つ。
9回も危なげない投球で3人で片付け、見事3安打での完投勝ち。前期からの通算7勝目となった。試合後の横田監督のインタビューも「今日は日名田に尽きるでしょう」と一言だけである。
その好投を見せた日名田であるが、北日本新聞で見たコメントでは7回のピンチに触れており、連打の後の四球を反省点にしていたようである。勝利は勝利であるが、BCリーグにあっては技術的には育成、修行の場であり、仮にNPBを目指しているのであれば「こんなことでは」と自分に厳しくあるのだろう。また次に北陸を訪れることがあれば見てみたい投手ではある。
さて試合後、小矢部インターから高速で富山市内に戻る。夕食ということで、駅前の「ヤットルゾー五條」へ。この店は以前にこのブログでおなじみの大和人さんとも訪れたことがあり、北陸の味覚を堪能することができる。この日は岩ガキ、ほたるいかの沖漬、ふくらぎや飛魚の刺身など楽しむ。
前回にはかきの昆布焼きという、昆布をよく消費する富山らしい一品を味わったが、さすがにかきは冬のものということで、代わりに勧められたほたるいかの昆布焼きというのを味わう。小さなコンロから立ち上る昆布の香りが何ともいえず、富山の名酒・立山ともよく合う。
午前中は観光、日中に野球見物、そして夜は日本海の海の幸・・・・こういう北陸の楽しみ方もありかと思うのである。営業戦略として何とか他県・地域からも観客を呼べるような工夫があってもいいと個人的には思っているのだが、どうだろうか。
今日18日、この記事を書き終えた後ホテルを出発して、今度は石川県は加賀に向かうことに・・・・。
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