JRで広島県内を一周するとなると、広島、三次、福山の3つの駅を経由することになる。広島~福山は山陽線経由でも呉線経由でもいいが、一番のネックといえるのが福山~塩町(~三次)を結ぶ福塩線である。このうち、電化区間である福山~府中はまだ本数があるものの、府中~塩町(~三次)となると1日6往復しかない。自ずと、この区間の列車に合わせて前後の行程を組むことになる。
その6往復といっても、早朝・朝に3往復、午後1往復、夕方・夜に2往復。地元の人ではなく一般的な乗り鉄、乗り継ぎで訪ねるなら、府中発なら15時05分の三次行き、三次発なら14時43分発の府中行きに乗ることになる。
今回は府中から乗ることにして、記事の始まりは福山から。福山といえば老舗食堂の「自由軒」がある。大衆食堂ながら実質は日中から営業の大衆酒場で、「吉田類の酒場放浪記」にも登場した店だが、この状況での営業はどうなっているのかな。
まあ、それはこの記事を書くにあたり思い出したこと。
訪ねた5月22日、福山駅の高架下のショッピングゾーンの「さんすて」は臨時休業とあった。コンコースの照明も心なしか暗く感じる。
南側に出る。福山はバラの町。そして時季は5月、バラが咲きほこるところ。例年行われる「福山ばら祭」のイベントはコロナ禍で中止となったが、駅前ではたくさんのバラが花を開かせている。コロナがどうのこうのとあっても、時季が来れば花は咲く。それを見てどう思うかは人それぞれ・・。
そんな福山の山陽線ホームで列車到着時に流れるのは、加藤登紀子さんの「百万本のバラ」。
福塩線のホームに上がる。ちょうど福山城の石垣と対面するところで、現在天守閣は改修工事のためフェンスで覆われている。駅のホームから城の石垣を間近に見ることができるところは、全国的に見てもありそうでなかなかない。これから乗るのは14時09分発の府中行き。「府中から三次連絡」という案内が加わる。
折り返しでやって来たのは105系の2両編成。国鉄時代から継続して使われている車両で、かつては黄色の車体に青色の線が入った福塩線カラーだったのが、現在は岡山管内の電車共通の黄色オンリーである。
14時09分発、2両のロングシートは発車間際には座席が埋まり、ドア横に立ち客もあるくらい。高校生や若者の乗車が目立つ。元々私鉄線だったこともあり、短い間隔で駅に着く。駅ごとに客が下車していく。この時は私も途中ちょっとウトウトしていた。
14時51分、府中着。駅舎側の行き止まりの番線に停車する。終点ではあるが一番前のドアだけが開き、運転手が改札を行う。次の三次行きは・・と見ると、駅舎の改札口の前に1両のキハ120が停まっていた。確かボックス席は4つだけあったよな、ちょっと急いでみる。
・・ただ、車内に入るとオールロングシートのタイプだった。これなら恨みっこなしでどこに座ってもいい。乗客は12~13人くらいか。
府中を出ると芦田川を渡る。先ほどまでは比較的町並みも広がっていたが、一気にローカル線の車窓となった。すると出てくるのが時速25キロ区間。その筋ではJR西日本の「必殺徐行」と呼ばれるもので、中国山地のローカル線のいたるところで見られる。地盤が弱かったり、かつて落石や雪崩などの災害があったところで設定されている。
駅ごとで下車する客もいて、いつしか乗客は私を含めて6人となった。この辺りが福塩線でもっとも閑散とした区間と言えるだろう。そのうち、カバンを二つ持った年輩の方は用務客のようだが、それ以外はその筋の人たちのようだ。ロングシートに横向きに座り、前方を眺めている。ちょうどシートが3~4人ずつで区切られていて、その端がちょっとした背もたれにもなる。
上下に到着。定刻なら2~3分で対向列車が来るのを待って発車するところ、運転手が対向列車の遅れを告げる。これで10分ほどの待ち時間ができたので、一度ホームに下りる。福塩線最高地点の駅、標高383.7メートルとある。この辺りが瀬戸内の芦田川水系と、日本海の江の川水系に分かれている峠ということから「上下」である。府中から三次への列車も時間的にここが中間点である。
相変わらずのんびりした車窓を進む。田植えの時季で、ちょうど水を張った田んぼに山の景色が映える。
府中市から三次市に入った吉舎から少しずつ乗客が増える。3~4人ずつに区切られたロングシートは、高校生のカップルにとってもちょうど居心地がいい席配置と見える。
塩町で芸備線と合流。今回使用している「ひろしま1デイきっぷ」は芸備線の東城までがフリー区間に入っており、備北方面を訪ねるにもちょうどいい。
上下での対向列車の遅れがあったため、16時52分から数分遅れて三次に到着。この日はこのまま広島に向けて戻る。日の長い季節、どこまで外の景色が見られるだろうか・・・。
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