今回の旅にでる3日ほど前だったか。通勤で通るJR西日本の駅のみどりの窓口に1枚の指定席申込用紙を差し出す。
若い係員はしばしそれをじっと眺めた後、端末に向かう。果たして発券できるのかな。エリアからは遠く離れた、しかも臨時列車。列車の読み方でつまずいたら時間かかりそうなので、列車名にはふりがなを書いておいた。・・・・「コシノシュクラ」。
最近の端末は駅名や列車名の頭文字、あるいは発車時刻を入力すれば候補列車が出てくるようだ。「残り1」と見えたように思う。
「特急券だけでよろしいですか?」と訊かれる。正しくは快速列車の指定席券なのだが、今はそういうことはどっちでもいい。ともかく残り1席でもあってよかった。全席指定だから指定席券がなければ乗れない。「だけで結構です」と答える。これで、3日目の内容がさらに濃くなり、十日町の見物もできたわけだ。「とおかちょう・・?から直江津まで、コシノシュ・・・クラ?の特急券です」と差し出された。発券はできたけど、係員にすれば何やこれ?ってな感じだろう。
若い係員が自信なさげに対応したのも無理はない話で、私もこの「越乃Shu*Kura」が8月に高田から長岡を経由して十日町まで往復運行しているのに気づいたのが旅の直前のことだった。新潟のほうで、日本酒が飲めるイベント列車があるとはちらっと聞いたことはあったが、これがそうだった。時刻表でも巻頭の臨時列車のページに書いてあり、本文中になかったというのも気づいたのが遅くなったことである。
さて十日町のホームへ。キハ40、キハ48を改造した車両は3両編成である。このうち1号車は、ゆったりしたボックス席やら窓に向かって座るカップル席がある。これに乗れば豪華な旅となるが、ここはJR東日本の旅行商品「びゅう」の客専用である。旅行プランで申し込めば、こうしたシートに座れるし、オリジナルの地酒の瓶や弁当などもついてくる。ただし、2名以上での申し込みとなる。青春18の一人旅では乗ることができない。
そういう一般客に用意されているのは3号車。こちらはリクライニングシートが並ぶ。とは言っても前の席との間隔は広いし、窓も大きい。また車端はフリースペースのソファー型の席がある。こちらでくつろぐのもいいだろう。普通にみどりの窓口で取れるのはこの車両だけで、30席くらいしかない。だからある意味ラッキーなわけだ。
こうした指定席だが、列車の見所としては中間の2号車が一番だろう。ここは乗客誰でも入れる車両で、片側にはカウンターテーブルが続く。また中央は4~5人で囲む丸テーブルとフリースペース。1号車寄りには物販のカウンターがある。
この2号車はイベントスペースであり、飲食物やグッズを買うだけでなく、地酒の飲み比べも楽しむことができる。専用クーポンを購入すると、その枚数に応じて酒の銘柄やおつまみが選べる。地酒は5種類で、クーポンが1~3枚と区別されている。ううっ、この枚数が酒のランクそのものか。ただ、3、2、2、1、1という振り分けで、クーポン10枚を購入すれば、5種類全部と陶製のおちょこ一つ(クーポン1枚)で釣り銭なしとなる。そこは上手く考えたのかな。
私の席は一般席の3号車なのだが、こんな車両となれば2号車がベースになりそうだ。他にも同じ考えの人も多いようで、しっかり陣取っている。また一方で、(気色悪い鉄ヲタにはそんな奴が多いのだが)用もないのに2号車に居座るヤツもいる。こいつ、絶対アテンダントかバンドの(あ、これはまだ触れてなかったな)女性目当てやろという感じ。あるいは女性にも目もくれないヲタか。こいつらの中で、自分のせいで、日本酒列車を楽しむことができない人がいることに思いを致すことはあるのだろうか。まあいないだろうな。
ここでバンドのことにも触れる。2号車の中央ではジャズの生演奏を楽しむことができる。ギター、ベース、フルートの3人であるが、片道で1回20分ほどの演奏を3回こなす。
さて、「越乃Shu*Kura」はそんな中であっさりと発車する。それと同時にジャズの演奏も始まり、カウンターには地酒のおちょこが並ぶ。目には越後の豊かな山村、耳にはよく知ったナンバーの心地よい調べ、そして舌には越後の地で育まれた味わい・・・。
こうなると、鉄ヲタだろうが呑み鉄だろうが関係ない。まったりと越後の地を走るだけである・・・。
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