群馬の太田から前橋を経由し、三国峠を越えて移動すること200キロ、やって来たのは新潟県三条市。刃物の産地として有名だが、BCリーグの新潟アルビレックスBCが本拠地として使用している三条スタジアムがある(メインスタジアムが県庁の新潟でも、中越の長岡でもないのは、三条の球場が一番設備が整っているからだろう)。ここで行われる新潟対信濃グランセローズの試合の観戦である。この三条スタジアム、今年は地元の企業が命名権取得し「三條機械スタジアム」という名前である。両翼99m、中堅120mとプロが使用するに十分な広さで、シートも背もたれつき(もっとも中央寄りのシートは色あせているが)である。
新潟戦は昨年上越、柏崎と2試合観戦したが、熱心なファンも多いし、飲食物やグッズ販売もそれなりに品数が揃っているし(前日の太田ではジュースすら売る気配もなく、公園に隣接するセブンイレブンで食糧を調達したので・・・)、観戦しやすい雰囲気をつくってくれている。この日は雨こそ降らなかったものの強烈な風が吹いており、フライを上げれば捕球に迷うのではないかと思うくらい。
昨年の新潟は4チームの中で勝率2割台と、リーグの中で一人負けしたようなもの。今年は四国の香川オリーブガイナーズを優勝に導いた元ヤクルトの芦沢監督を迎え、チームスローガンの「がむしゃらに!!」の通りの戦いぶり。
一方の信濃も木田監督のもと、選手兼任コーチで元オリックス~楽天の辻竜太郎や、西武ライオンズの「裏金問題」の犠牲となった元早大の清水を加え、優勝争いに加わりたいところ。
先発は、新潟・中山、信濃・仁平(常総学院の甲子園優勝時の投手だそうな)という左腕同士。仁平が本格派なのに対し、中山は左サイドハンドからの技巧派。初回、新潟はコントロールの定まらない仁平を攻め(中には、絶対アウトになるファールフライを信濃の捕手・中村が全く追わなかったために命拾いもしたのだが)、1死1・3塁とするも、盗塁失敗などで先制点を逃す。
一方の中山、2回表は先頭打者に安打を許すものの、続く村上の強烈なライナーを自らキャッチ、ランナーも飛び出して併殺。これで勢いに乗った。2回裏、新潟が四球2つに4安打を集中し、打者一巡で4点先制。仁平はこの回途中で降板。
ここからは中山のストレートのコントロールに、カーブ(シンカーかな?)を駆使して信濃打線を翻弄する。心配された飛球もほとんど許さないし、信濃の3番・清水も完璧に封じ込める。打線も8番・木ノ内の猛打賞の活躍などで点差を広げ、信濃の3番手・米澤の3連続四球(押し出し)や暴投などで、6回終了までで9対0。新潟の猛攻に、オレンジに身を固めた観客も大喜びである。新潟の打線も見事だが、信濃の投手陣もボール球が多く、ストライクを取りに行った球を打ち返されたという感じでピリッとしない。プロの投手として、もうちょっとしっかりしてほしいな。
信濃が唯一意地を見せたのが7回表の攻撃。1死1・2塁から4番・渡辺がショートへのゴロ。6-4-3の併殺かと思ったが、2塁フォースアウトの後、送球しようとしたセカンドの斗馬が落球し、2死1・3塁。ここで、3塁コーチボックスに立つ信濃・木田監督が抗議に出る。「セカンドの落球はショートからの送球を落としたもので、2塁フォースアウトは成立しない。1死満塁だ」というもの。私には審判の判断が正しいように見えたのだが、木田監督は場所を2塁ベース付近から3塁線に移しても、セカンドの動きを再現しながら抗議を続ける。7回裏の攻撃に備えてジェット風船を持っている観客からも「早くやれよ!」「風船割れちまうがよ!(材質が薄いためか、本当にあちこちで割れる音がするのだ)」と野次が飛ぶ中、「ダブルプレーなのに落とすから抗議されるんだよ!しっかり守ろうよ!」という前向きな(?)野次も。
結局10分近く抗議した後、判定はそのままで試合再開。続く5番・村上もセカンドへのゴロだが、今度は打球が途中でバウンドしてセンターに抜ける。次の荻原がレフトへ大きな当たりの2塁打。これで3点を返す。監督の抗議でようやく選手もヤル気になったか。
ただ信濃の反撃もここまで。12安打、9つの四球を選んだ新潟打線に、先発・中山が8回まで好投を見せ、このまま9対3で快勝。新潟はホーム初勝利を挙げるとともに、3勝0敗1分と、上信越地区の首位をキープ。猛打賞は木ノ内、末次の2名のほか、MVPには中山が選ばれ、大きな祝福を受けていた。
今年はチーム数の増加もあり、元・NPBプロ野球選手の一選手としての入団や、社会人野球、クラブチームの選手が「NPBへの道筋」としてBCリーグに転向してきたケースも多い。地元の声援も盛り上がる中、試合のレベルアップも求められる。この日のように、2ケタ安打の猛攻は攻撃陣が素晴らしいといえるが、一方で四球連発や暴投・捕逸が目立つようではまだまだかなという気がする。まだシーズンは始まったばかり、数を重ねて、これからどんどんいい試合を見せてほしいもの。また観に行きますよ!
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