さて下の記事では木曽は赤沢自然休養林を走る森林鉄道の話をした。その後は旧中仙道の国道19号線を走る。途中、木曽義仲の出身地とされる日義にある道の駅で昼食として(「日義」という名前は、「朝日将軍・木曽義仲」から取ったとか)、結局宿場町には立ち寄ることなく塩尻にやってくる。
おそらくこの先、松本市内あたりでの渋滞も予想されるし、今回は松本市街は通り抜けるだけなのでここから長野自動車道に乗る。進行左側には北アルプスの山々が見える・・・はずだがあいにくと雲が広がっていて思うような景色を眺めることはできない。もっともハンドルを握っていたのではゆっくり写真など撮ることはできないのだが。
さてここまで遅ればせながらも順調に来たようである。ここでどこかに立ち寄ってもいいかなと思いふと思いついたのは、姨捨駅から善光寺平を見物するというもの。ここは「日本三大車窓」の一つにも数えられており、また姨捨駅近くの棚田というのは「田毎の月」ということで「月見の名所」としても知られている。2年前の秋には夜の姨捨を訪れ、駅ではなく姨捨サービスエリアから善光寺平の夜景を眺める機会があった。さすがに月夜・・・とはいかなかったが。
姨捨駅にクルマで乗り付けるには、カーナビでは南からでは麻績インター下車で峠越え、もしくは善光寺平に降り立った更埴インターから坂道を登るよう示される。しかしここで裏ワザが。姨捨サービスエリアにクルマをつける。
ここで一度善光寺平を眺めた後、ここで高速を降りる。正規のインターチェンジではないが、ETC搭載車を対象としたスマート出口というのがあり、売店の横から抜けられるようになっているのだ(長野方面は出口専用、松本方面は入口専用)。
何が起こったのかという感じでカーナビもオロオロとする中で細道を下り、あっという間に姨捨駅構内の線路が見えてきた。カーナビの裏をかく、鵯越の坂落しのような運転に(大げさか)高笑い。
こうしてやってきた姨捨駅。瀟洒な建物だが無人駅だったと記憶しているが、この日来てみると内装がやけにきれいになっていた。どうやら観光案内の拠点としてボランティアの係の方がいらっしゃるようで、執務スペースも休憩室として開放されていた。
またホームにも変わったところが、ホームの一部を善光寺平のほうに少し広げ、展望スペースになっている。ここに立てば善光寺平もスイッチバックの線路もよく見える。先ほどのサービスエリアと比べて高度は低いものの、駅からだと建物の障害物も邪魔にならず、逆にくっきりと眺望を楽しむことができる。結構多くの人がホームにいるが、列車に乗るという出で立ちの人はほとんどおらず、多くがクルマでやってきて立ち寄り、棚田のあぜ道も散策するというところだろうか。
頃合はちょうど棚田の収穫シーズン。鮮やかな黄金色に育った稲がまさに刈り取られる時期。今年は全国的な猛暑ではあったが、水の確保さえきちんとできれば稲の生育にとってはよかったということだろうが。野菜の高騰は伝えられたがコメの凶作については報道されてなかったからそういうことかな。
しばし眺めるうちに長野行きの列車がやってきた。姨捨駅に少し停車し、すぐに逆走して待避線へ。そしてまた進行方向を戻して、姨捨駅の横の線路を走る。棚田と列車。一足早い秋の車窓風景である。
まあ、列車に乗らずして列車の風情を語るなどというのは特に原理主義的な「その筋」の方から見れば言語道断の所業で、いつ駅のホームで線路に突き飛ばされてもおかしくないのだが、やはり絵になる景色というのはよろしいものである。まあ、時間を作って立ち寄ったということで許してくださいな。
この後は善光寺平までの勾配を一気に下り、千曲川に近く、川中島合戦の行われた八幡原にも近い長野オリンピックスタジアムでの「信越対決」の観戦に臨んだ・・・。(続く)