ほそかわ・かずひこの BLOG

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アイヌ施策推進法4~アイヌを先住民族とすることを求める国会決議

2019-05-17 09:39:03 | 時事
(4)アイヌを先住民族とすることを求める国会決議
 国連宣言の翌年、平成20年(2008年)6月6日、国会で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が可決された。衆参両院全会一致だった。
 決議案は、前日の6月5日に突然提出され、質問も反対意見も述べる機会のないまま、翌6日に決議された。異例の進め方である。
 国会決議の主要な部分は、次の通りである。

 「我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされた歴史的事実を厳粛に受け止めなければならない。政府はこれを機に次の施策を早急に講じるべきである。

一 政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族と認めること。
二 政府は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されたことを機に、同宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聞きながら、これまでのアイヌ政策を推進し、総合的な背策の確立に取り組むこと」。

 この決議が依拠する国連宣言には、先住民族を定義づける記述がない。国会決議にも先住民族とは何かという定義がない。また、アイヌが北海道に「先住」していたかどうかの歴史的裏付けがなく、今日のアイヌが「独自の言語、宗教や文化の独自性」を有しているかどうかの裏付けもない。「差別され、貧窮を余儀なくされた」と断定している根拠も示されていない。
 このような決議が、国会で質疑応答や民主的な議論をすることなく、突然なされたのである。その経緯について、平成20年(2008年)6月7日の北海道新聞は、概略次のように報じた。
 決議に向けた動きが水面下で始まったのは、同年1月、鈴木宗男代表が自民党北海道連会長の今津寛衆院議員に持ちかけたのがきっかけだった。民主党の鳩山由紀夫幹事長も同じ思いだった。3月には今津を代表として「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」が発足し、水面下で政府との調整を行い、決議の原案を作成した。しかし、自民党の党内手続きで必要な政務調査会(会長 中川昭一衆院議員)の審査を経れば、「さらに異論が出てまとまらなくなる」(閣僚経験者)とみて、いきなり党の最高意思決定機関である総務会に諮り、了解を得た。通常手続きではないが、「決議の骨格を守るための巧妙な案」だった。「自民党内で議論すると流れるので党内議論もなしで、国会議員には予め議案も提示せず、いきなり採決に持ち込んだ」と。
 民主党・社民党・共産党等の野党は、左翼的な人権・反権力の思想が浸透しており、決議案に異論のない状況だった。一方、与党の自民党は、前年の平成19年(2007年)に発覚した「消えた年金問題」で国民の批判を浴び、内部が混乱していた。仮に解散総選挙になれば、大敗を喫する可能性があった。ここで浮上するのが、連立与党である公明党の存在である。公明党は、長年アイヌ問題を熱心に進めていた。自民党は公明党の選挙協力を得るために、満足な議論もせずに、国会決議を進めたとみられる。ちなみに平成30年(2018年)末にアイヌ担当大臣が誕生したが、公明党がずっとポストを押さえている国土交通大臣が兼任している。
 先ほど述べたように、国連宣言には先住民族の明確な定義がない。それなのに、国会がアイヌを先住民族とすることを求める決議をしてしまった。ただし、あくまで「アイヌ民族を先住民族とすること」を「求める決議」であって、「認める決議」ではなかった。
 しかし、この決議に乗じて、アイヌ関係団体は、翌年の平成21年(2009年)6月、アイヌ民族の先住権、自決権に基づく法整備を求めて、政府に次の事項を要請した。(1)同化政策などに対する政府と天皇の謝罪、(2)土地・資源等を奪ったことへの賠償。(3)国会と地方議会の民族特別議席。(4)アイヌ語を中心にアイヌ文化・歴史を学べる教育機関の設置――である。当時、政府は、この要請を認めなかった。
 だが、その後、この10年ほどの間、一部のアイヌや左翼が、アイヌを先住民族とし、アイヌの権利を認めるよう、政府に執拗な働きかけをしてきた。そして、ついに今回、アイヌを先住民族と盛り込む法律が国会で成立した。
 そのことの何が問題なのかを述べるには、まずアイヌの定義、歴史、現状から書く必要がある。

 次回に続く。

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