●アメリカの政治とユダヤ・ロビー
今日、アメリカでは、ユダヤ・ロビーが最大のロビー団体となり、アメリカの外交政策に強い影響を与えている。ユダヤ・ロビーとは、ユダヤ系米国人が、イスラエルを宗教的な信仰によって擁護するキリスト教右派等と連携して、米国の政治・外交をユダヤ人社会やイスラエルに有利なものにしようとして政府・議会・政治家に働きかける団体である。
ユダヤ人ロビイストは、豊富な資金と積極的な働きかけにより、アメリカの政策をイスラエルに有利なものへと誘導している。そして、アメリカ=イスラエル連合を確固としたものすることに成功している。
これに対し、アメリカ国民の中から、合衆国政府はアメリカの国益よりもイスラエルの国益を優先しているという批判が上がっている。なかでも高名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトによる『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(2007年刊行)は、言論界に一石を投じた。著者たちは、ユダヤ・ロビーではなく、イスラエル・ロビーという用語を使う。前者は、ロビー活動の主体がユダヤ人集団であることを端的に表すが、後者は、イスラエルの利益を追求する団体であることを強調する。
ミアシャイマーとウォルトは、イスラエル・ロビーの強い影響力により、アメリカの政策論議は合衆国の長期的安全保障を損なう方向に向かっていると主張する。また、イスラエル・ロビーの団体は、イスラエルの極右政党リクードに近い団体・個人で構成されていると指摘する。他の団体・個人との境界線は曖昧で、多くの学者、シンクタンク、政治活動委員会、ネオコン・グループ、キリスト教団体等がロビー活動を支援しているという。
イスラエル・ロビー、私の用語によれば、ユダヤ・ロビーは、非常に大きな成果を上げている。具体的には、たとえば、アメリカ政府は政権が共和党・民主党の違いに関わらず、イスラエルに大規模な無償の軍事援助を行っている。アメリカ政府が世界各国に行う経済・軍事援助は、その約5分の1が世界人口の0.1%程度にすぎないイスラエルに送られている。2006年の時点で、イスラエルは約30億ドルを受給した。この金額は、一国としては最高額だった。2007年から10年間、毎年30億ドル、合計300億ドルの援助が続けられている。
一般の国は、アメリカ政府からの援助金を年4分割して与えられる。ところが、イスラエルだけは、会計年度の初めに一括して援助金を受給する。その援助金のうち当面、使用しない分は連邦準備銀行へ直接預金され、年利8%の利子を稼ぐことが許されている。イスラエルはこの特権を享受する唯一の国である。
これに加えて、毎年、約5億ドルのイスラエル国債がアメリカ国内で購入されている。イスラエル国債は米国国債より利率が低く、格付けもBBBと低い。それにもかかわらず、全米3000以上の大小の銀行が購入している。これは、もしイスラエル国債の購入を拒めば、地元のユダヤ人富豪たちが預金を他の銀行に移すことを恐れるからと見られる。
国連安全保障理事会でイスラエルに不利な提案が出されると、アメリカ政府は必ず拒否権を発動している。イスラエル非難の国連安保理決議に対して、1982年以来、実に32回(2006年現在)も拒否権を発動して、イスラエルを擁護し続けている。イスラエル・パレスチナ問題においては、イスラエル側に立って関与しており、アラブ諸国の批判や反発を受けている。
米国では2004年10月に、反ユダヤ主義監視法が成立した。同法は、世界各地で頻発する反ユダヤ主義をアメリカ政府が監視し、適切な対応を取ることを定めたものである。米国務省内に、反ユダヤ主義に対処する特別部局の設置を定めている。イスラエルではなく米国の国家機関が反ユダヤ主義に世界的に対処するというのである。米国は、今やそれほどまでに、ユダヤ人及びイスラエルの強い影響下にあることがわかる。
こうしたアメリカとイスラエルの特殊な関係は、アメリカのユダヤ・ロビーの活動が生み出しているものである。
次回に続く。
今日、アメリカでは、ユダヤ・ロビーが最大のロビー団体となり、アメリカの外交政策に強い影響を与えている。ユダヤ・ロビーとは、ユダヤ系米国人が、イスラエルを宗教的な信仰によって擁護するキリスト教右派等と連携して、米国の政治・外交をユダヤ人社会やイスラエルに有利なものにしようとして政府・議会・政治家に働きかける団体である。
ユダヤ人ロビイストは、豊富な資金と積極的な働きかけにより、アメリカの政策をイスラエルに有利なものへと誘導している。そして、アメリカ=イスラエル連合を確固としたものすることに成功している。
これに対し、アメリカ国民の中から、合衆国政府はアメリカの国益よりもイスラエルの国益を優先しているという批判が上がっている。なかでも高名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマーとステファン・ウォルトによる『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(2007年刊行)は、言論界に一石を投じた。著者たちは、ユダヤ・ロビーではなく、イスラエル・ロビーという用語を使う。前者は、ロビー活動の主体がユダヤ人集団であることを端的に表すが、後者は、イスラエルの利益を追求する団体であることを強調する。
ミアシャイマーとウォルトは、イスラエル・ロビーの強い影響力により、アメリカの政策論議は合衆国の長期的安全保障を損なう方向に向かっていると主張する。また、イスラエル・ロビーの団体は、イスラエルの極右政党リクードに近い団体・個人で構成されていると指摘する。他の団体・個人との境界線は曖昧で、多くの学者、シンクタンク、政治活動委員会、ネオコン・グループ、キリスト教団体等がロビー活動を支援しているという。
イスラエル・ロビー、私の用語によれば、ユダヤ・ロビーは、非常に大きな成果を上げている。具体的には、たとえば、アメリカ政府は政権が共和党・民主党の違いに関わらず、イスラエルに大規模な無償の軍事援助を行っている。アメリカ政府が世界各国に行う経済・軍事援助は、その約5分の1が世界人口の0.1%程度にすぎないイスラエルに送られている。2006年の時点で、イスラエルは約30億ドルを受給した。この金額は、一国としては最高額だった。2007年から10年間、毎年30億ドル、合計300億ドルの援助が続けられている。
一般の国は、アメリカ政府からの援助金を年4分割して与えられる。ところが、イスラエルだけは、会計年度の初めに一括して援助金を受給する。その援助金のうち当面、使用しない分は連邦準備銀行へ直接預金され、年利8%の利子を稼ぐことが許されている。イスラエルはこの特権を享受する唯一の国である。
これに加えて、毎年、約5億ドルのイスラエル国債がアメリカ国内で購入されている。イスラエル国債は米国国債より利率が低く、格付けもBBBと低い。それにもかかわらず、全米3000以上の大小の銀行が購入している。これは、もしイスラエル国債の購入を拒めば、地元のユダヤ人富豪たちが預金を他の銀行に移すことを恐れるからと見られる。
国連安全保障理事会でイスラエルに不利な提案が出されると、アメリカ政府は必ず拒否権を発動している。イスラエル非難の国連安保理決議に対して、1982年以来、実に32回(2006年現在)も拒否権を発動して、イスラエルを擁護し続けている。イスラエル・パレスチナ問題においては、イスラエル側に立って関与しており、アラブ諸国の批判や反発を受けている。
米国では2004年10月に、反ユダヤ主義監視法が成立した。同法は、世界各地で頻発する反ユダヤ主義をアメリカ政府が監視し、適切な対応を取ることを定めたものである。米国務省内に、反ユダヤ主義に対処する特別部局の設置を定めている。イスラエルではなく米国の国家機関が反ユダヤ主義に世界的に対処するというのである。米国は、今やそれほどまでに、ユダヤ人及びイスラエルの強い影響下にあることがわかる。
こうしたアメリカとイスラエルの特殊な関係は、アメリカのユダヤ・ロビーの活動が生み出しているものである。
次回に続く。
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