●ユダヤ人はWASP支配を崩していった
20世紀前半のアメリカでは、移民によって国民が多民族化し、WASPの集団に非WASPが流入した。それに従って、WASPの支配が緩んでいった。同時に「明白な使命」の観念が薄れていき、第1次世界大戦後のころから超国家的または脱国家的な思想が影響力を持つようになった。超国家的または脱国家的な思想とは、ネイション(国家・国民)の形成・発展に価値を置く考え方に対し、ネイションの枠組みを超えたり外したりして普遍的な価値の実現を追求する思想である。ここでアメリカの支配集団に食い込み、WASPの優位を崩し、超国家的または脱国家的な思想を広げていったのが、ユダヤ人に他ならない。その思想が、さらに既存の国家を超えた統一世界政府を目指す思想に発展したものが、グローバリズムである。
WASPの「明白な使命」から超国家・脱国家の思想への交替の過程については後に詳しく述べるが、概要を書いておくと、1913年設立のウッドロー・ウィルソン政権で、大きな変化が起こった。ユダヤ人金融資本家らによって中央銀行が設立され、第1次世界大戦を通じてユダヤ系軍需産業が発展し、大戦後はユダヤ人の入会を認める外交問題評議会が開設されるなどして、ユダヤ人が米国の政治・経済に深く参入するようになった。WASP支配が強固だったウォール・ストリートでは、1929年の大恐慌によって、ユダヤ人の投資家が躍進した。1930年代に入ると、ユダヤ人が消費産業やラジオ・映画産業部門で事業を発展させた。1933年誕生のフランクリン・D・ルーズベルト政権では、大統領周辺にユダヤ人が集まり、政治を直接動かすほどになった。ユダヤ人の新興事業家たちはニューディール政策を支持する財界の支柱の一つになった。FDR政権において、アメリカは第2次世界大戦に参戦し、ユダヤ人は軍需産業を中心にさらに勢力を拡大した。
こうして第1次世界大戦前後から第2次世界大戦終結までの間に、アメリカの支配集団は、WASPだけでなく、彼らと深く結びついたユダヤ系金融資本家とによって構成されるように大きく変化していく。この変化は、19世紀半ばから20世紀初頭にかけてのイギリスの変化と似ている。そこには、ユダヤ人による戦略的な行動があったと見るべきだろう。ユダヤ人は、覇権国家から次の覇権国家へと、活動の中心地を移動させて、メトロポリスの支配集団に参入・融合し、自らの富と力を維持・拡大してきたのである。この過程については、本章でいくつかの項目に分けて、具体的に書いていく。
ユダヤ系の国際政治学者ズビグニュー・ブレジンスキー(2017年5月歿)は、『孤独な帝国アメリカ――世界の支配者か、リーダーか』で、アメリカ社会を様々なエスニック・グループによって文化的・政治的に多様なアイデンティティを持つように仕向けたのはユダヤ系移民である、と述べている。つまり、ユダヤ人は、少数民族の地位向上を共同で働きかけることにより、WASPの影響力を低下させる方法を取ったということである。また、WASPの後退とユダヤ系アメリカ人の台頭は時期が一致すると指摘している。WASPの没落の後に、アメリカ社会で支配的エリートになったのはユダヤ人社会であるとも論じている。
ブレジンスキーがユダヤ系の立場からこのように主張しているのは、一種の勝利宣言ともいえる。確かにFDR政権の成立後、ユダヤ人は黒人等の少数民族や労働組合と連携してリベラル連合を形成して民主党を支えつつ政治的な影響力を増していった。それによって、WASPの影響力が低下した。そして、WASP的な価値観に取って代わって、ユダヤ的価値観が支配的になっていった。ただし、このことは、必ずしもユダヤ人の集団が支配集団に成り代わったということを意味しない。WASPの支配集団にユダヤ人が参入し、WASPとユダヤ人が融合して、アングロ・サクソン=ユダヤ連合が出来たのである。その過程で、WASPにユダヤ的価値観が浸透した。このことは、WASP的な「明白な使命」から超国家的または脱国家的な思想への交替ということでもある。
たとえば、第2次世界大戦後、アメリカの資本家を代表する存在となったロックフェラー家は、ユダヤ人ではなく、WASPに属する。先祖は、フランス系ユグノーに起源を持つ南ドイツのプロテスタントの家系とされる。ロックフェラー財閥の繁栄の基礎を築いたジョン・デイヴィソン・ロックフェラーは、ニューヨーク州の貧しい薬の行商人の子だったが、農産物の仲買などで資金を蓄え、南北戦争中の1862年に23歳で、石油精製事業を始めた。徹底した合理化で競争に打ち勝ち、短期間に同業者の施設を次々に買収した。彼のスタンダード・オイル社は、1878年には合衆国の精油の約90%を支配するに至った。個人資産は約10億ドルにのぼったという。石炭から石油の時代になり、またアメリカがイギリスに替わって覇権国になったことによって、ロックフェラー家はロスチャイルド家の圧倒的優位を揺るがすほどになっている。当代の盟主だったデイヴィッド・ロックフェラー(2017年3月、101歳で歿)は、白人プロテスタントだが、グローバリスト(地球統一主義者)という立場を鮮明にしロスチャイルド家を中心とするユダヤ系国際金融資本家とともに、グローバリズムを推進した。このことは、デイヴィッドを中心とするロックフェラー家は非ユダヤ人だが、ユダヤ的価値観の体現者であることを示すものである。
次回に続く。
20世紀前半のアメリカでは、移民によって国民が多民族化し、WASPの集団に非WASPが流入した。それに従って、WASPの支配が緩んでいった。同時に「明白な使命」の観念が薄れていき、第1次世界大戦後のころから超国家的または脱国家的な思想が影響力を持つようになった。超国家的または脱国家的な思想とは、ネイション(国家・国民)の形成・発展に価値を置く考え方に対し、ネイションの枠組みを超えたり外したりして普遍的な価値の実現を追求する思想である。ここでアメリカの支配集団に食い込み、WASPの優位を崩し、超国家的または脱国家的な思想を広げていったのが、ユダヤ人に他ならない。その思想が、さらに既存の国家を超えた統一世界政府を目指す思想に発展したものが、グローバリズムである。
WASPの「明白な使命」から超国家・脱国家の思想への交替の過程については後に詳しく述べるが、概要を書いておくと、1913年設立のウッドロー・ウィルソン政権で、大きな変化が起こった。ユダヤ人金融資本家らによって中央銀行が設立され、第1次世界大戦を通じてユダヤ系軍需産業が発展し、大戦後はユダヤ人の入会を認める外交問題評議会が開設されるなどして、ユダヤ人が米国の政治・経済に深く参入するようになった。WASP支配が強固だったウォール・ストリートでは、1929年の大恐慌によって、ユダヤ人の投資家が躍進した。1930年代に入ると、ユダヤ人が消費産業やラジオ・映画産業部門で事業を発展させた。1933年誕生のフランクリン・D・ルーズベルト政権では、大統領周辺にユダヤ人が集まり、政治を直接動かすほどになった。ユダヤ人の新興事業家たちはニューディール政策を支持する財界の支柱の一つになった。FDR政権において、アメリカは第2次世界大戦に参戦し、ユダヤ人は軍需産業を中心にさらに勢力を拡大した。
こうして第1次世界大戦前後から第2次世界大戦終結までの間に、アメリカの支配集団は、WASPだけでなく、彼らと深く結びついたユダヤ系金融資本家とによって構成されるように大きく変化していく。この変化は、19世紀半ばから20世紀初頭にかけてのイギリスの変化と似ている。そこには、ユダヤ人による戦略的な行動があったと見るべきだろう。ユダヤ人は、覇権国家から次の覇権国家へと、活動の中心地を移動させて、メトロポリスの支配集団に参入・融合し、自らの富と力を維持・拡大してきたのである。この過程については、本章でいくつかの項目に分けて、具体的に書いていく。
ユダヤ系の国際政治学者ズビグニュー・ブレジンスキー(2017年5月歿)は、『孤独な帝国アメリカ――世界の支配者か、リーダーか』で、アメリカ社会を様々なエスニック・グループによって文化的・政治的に多様なアイデンティティを持つように仕向けたのはユダヤ系移民である、と述べている。つまり、ユダヤ人は、少数民族の地位向上を共同で働きかけることにより、WASPの影響力を低下させる方法を取ったということである。また、WASPの後退とユダヤ系アメリカ人の台頭は時期が一致すると指摘している。WASPの没落の後に、アメリカ社会で支配的エリートになったのはユダヤ人社会であるとも論じている。
ブレジンスキーがユダヤ系の立場からこのように主張しているのは、一種の勝利宣言ともいえる。確かにFDR政権の成立後、ユダヤ人は黒人等の少数民族や労働組合と連携してリベラル連合を形成して民主党を支えつつ政治的な影響力を増していった。それによって、WASPの影響力が低下した。そして、WASP的な価値観に取って代わって、ユダヤ的価値観が支配的になっていった。ただし、このことは、必ずしもユダヤ人の集団が支配集団に成り代わったということを意味しない。WASPの支配集団にユダヤ人が参入し、WASPとユダヤ人が融合して、アングロ・サクソン=ユダヤ連合が出来たのである。その過程で、WASPにユダヤ的価値観が浸透した。このことは、WASP的な「明白な使命」から超国家的または脱国家的な思想への交替ということでもある。
たとえば、第2次世界大戦後、アメリカの資本家を代表する存在となったロックフェラー家は、ユダヤ人ではなく、WASPに属する。先祖は、フランス系ユグノーに起源を持つ南ドイツのプロテスタントの家系とされる。ロックフェラー財閥の繁栄の基礎を築いたジョン・デイヴィソン・ロックフェラーは、ニューヨーク州の貧しい薬の行商人の子だったが、農産物の仲買などで資金を蓄え、南北戦争中の1862年に23歳で、石油精製事業を始めた。徹底した合理化で競争に打ち勝ち、短期間に同業者の施設を次々に買収した。彼のスタンダード・オイル社は、1878年には合衆国の精油の約90%を支配するに至った。個人資産は約10億ドルにのぼったという。石炭から石油の時代になり、またアメリカがイギリスに替わって覇権国になったことによって、ロックフェラー家はロスチャイルド家の圧倒的優位を揺るがすほどになっている。当代の盟主だったデイヴィッド・ロックフェラー(2017年3月、101歳で歿)は、白人プロテスタントだが、グローバリスト(地球統一主義者)という立場を鮮明にしロスチャイルド家を中心とするユダヤ系国際金融資本家とともに、グローバリズムを推進した。このことは、デイヴィッドを中心とするロックフェラー家は非ユダヤ人だが、ユダヤ的価値観の体現者であることを示すものである。
次回に続く。
ユダヤ系ではないはずですが、
どうしてユダヤ系と書かれているのでしょうか?
何かの本にそう書かれていたのでしょうか?
確かに、あのラストネームには、
ユダヤ人がいるので気になっていました。
北米より