●通貨の背後には国家がある
鳩山氏は、地域通貨を統合してアジア共通通貨を実現するというのだから、ユーロのアジア版のようなものを考えているのだろうか。ただ、この構想にも、具体性がない。世界的には、ドル基軸体制に替わる新たな通貨体制として、ドルを含む複数の通貨を組み合わせる「通貨バスケット方式」、複数の通貨に金(ゴールド)だけでなく様々な基本物資を加えて裏づけとする「コモディティ・バスケット通貨方式」、ケインズが唱えた国際通貨「バンコール」の現代版のような「グローバル紙幣」の創出などの案が出ている。
鳩山氏の場合は、基本的な発想がグローバルではなく、東アジアに限定されている。現在、アジアで有力な通貨は、アメリカのドル、日本の円、中国の人民元である。地域通貨ゆえ、米ドルは対象でないとすれば、まず円と元を統合する。そこに韓国のウオン、シンガポール・台湾等のドル、タイのバーツ等、他の国々の通貨を統合するという手順になるだろうか。問題は、円と元の統合、そのメリット、デメリットにあることは明らかである。しかし、鳩山氏は、そのことにすら触れない。
私が重要だと思うのは、通貨の背後には国家があるということである。ユーロの場合、ドイツとフランスの協調がもとになった。両国は体制を同じくする国々であり、自由主義、デモクラシー、人権、キリスト教等の共通の価値観を持つ。経済力もほぼ互角である。だから、マルクとフランを統合して幹とし、そこに各国の通貨を統合して枝葉とすることができた。ただし、主要国の一つであるイギリスは、自国通貨のポンドを維持している。そういう選択する国がヨーロッパには存在するのである。
日本と中国の場合は、どうか。日本と中国は、経済交流は進んでいるが、国家の体制が異なる。経済的には実質的に資本主義だが、政治的には自由主義と共産主義という相違がある。また安全保障の上では、日中は同盟関係にはない。私は、日本が共産化するか、中国が自由化するかのどちらかにならない限り、通貨の統合は無理だと思う。ここでも鳩山氏の主張には、中国は共産主義国家だという明確な認識がないのである。
●中国は「アジア共通通貨」を無視して人民元をアジアに広げる
中国は鳩山氏の「アジア共通通貨」の呼びかけなど無視して、東アジアを人民元の経済圏にするための計画を進めている。既に各所で布石を打ち終え、来年(平成22年、2010)から本格的に展開する用意を整えた模様である。
中国は平成20年(2008)9月のリーマン・ショックをきっかけに、人民元経済圏の拡大に乗り出した。人民元の対ドル・レートを固定したことにより、中国の取引先は為替変動リスクを被る恐れがなくなり、人民元建て貿易決済を受け入れるようになった。同時に中国は、ドルを大量に発行するアメリカに対抗して、人民元を大量に印刷して、人民元が周辺アジアに大量に流れ込ませている。
人民元は、すべて毛沢東の肖像が印刷された紙幣である。マルクス=レーニン主義者にして、抗日民族解放戦争の指導者・毛沢東の肖像である。人民元がアジアに広がるということは、毛沢東がアジアに広がるということである。
中国は22年1月、東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定を発効させる。中国は協定の対象地域を「自由貿易区」と呼ぶ。これまで中国はベトナム、ラオス、ミャンマー、北朝鮮、ロシア極東部等と人民元建ての交易を活発に行い、出稼ぎ労働者や経営陣を大量に送り込んできた。今後、ASEAN諸国が「自由貿易区」になることで、中国は人民元を東南アジア全域に普及させようとしている。
中国最大の国有商業銀行である中国工商銀行は、本年(21年)9月、インドネシア企業向けに人民元を融資した。中国企業との貿易決済用で、初めての人民元貿易金融取引になるという。人民元貿易金融取引外国企業への人民元融資の最初の例となった。同行はこれを機に、東南アジア等で対外貿易決済用の人民元資金融資を一挙に拡大しつつある。国際化の最も進む中国銀行も、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシアでの支店で人民元決済業務を拡大させている。
こうした動きに応えて、イギリスの香港上海銀行グループ(HSBC)は本年(21年)11月、インドネシアで人民元建ての貿易決済サービスを開始した。マレーシア、タイ、シンガポール、ベトナム、ブルネイにも同様の業務を展開する計画という。ポスト・ドルの時代に向けて、ロスチャイルド財閥と中国共産党が支配する金融機関が連携を強めている動きと思う。この連携には、さらにロックフェラー財閥等の米欧の巨大国際金融資本が連なっているだろう。
中国は人民元をアジアの標準決済通貨とするように、着々と計画を進めている。これに対し、鳩山氏には、まったく戦略がない。国際的な準備通貨として円のシェアは、過去10年間で半減し、いまや世界の3%にすぎない。円が後退し、元が拡大するなかで、鳩山氏は何の戦略も示さずに「アジア共通通貨」を説いている。愚かと言うしかない。中国は「友愛」による「アジア共通通貨」の呼びかけを無視しながら、人民元によるアジア経済支配を進めているのである。
さらに中国は、人民元をドルに対抗する国際決済通貨にしようと目論んでいる。この点は、アジアという枠を超えるので、後の項目で改めて述べたいと思う。
次回に続く。
鳩山氏は、地域通貨を統合してアジア共通通貨を実現するというのだから、ユーロのアジア版のようなものを考えているのだろうか。ただ、この構想にも、具体性がない。世界的には、ドル基軸体制に替わる新たな通貨体制として、ドルを含む複数の通貨を組み合わせる「通貨バスケット方式」、複数の通貨に金(ゴールド)だけでなく様々な基本物資を加えて裏づけとする「コモディティ・バスケット通貨方式」、ケインズが唱えた国際通貨「バンコール」の現代版のような「グローバル紙幣」の創出などの案が出ている。
鳩山氏の場合は、基本的な発想がグローバルではなく、東アジアに限定されている。現在、アジアで有力な通貨は、アメリカのドル、日本の円、中国の人民元である。地域通貨ゆえ、米ドルは対象でないとすれば、まず円と元を統合する。そこに韓国のウオン、シンガポール・台湾等のドル、タイのバーツ等、他の国々の通貨を統合するという手順になるだろうか。問題は、円と元の統合、そのメリット、デメリットにあることは明らかである。しかし、鳩山氏は、そのことにすら触れない。
私が重要だと思うのは、通貨の背後には国家があるということである。ユーロの場合、ドイツとフランスの協調がもとになった。両国は体制を同じくする国々であり、自由主義、デモクラシー、人権、キリスト教等の共通の価値観を持つ。経済力もほぼ互角である。だから、マルクとフランを統合して幹とし、そこに各国の通貨を統合して枝葉とすることができた。ただし、主要国の一つであるイギリスは、自国通貨のポンドを維持している。そういう選択する国がヨーロッパには存在するのである。
日本と中国の場合は、どうか。日本と中国は、経済交流は進んでいるが、国家の体制が異なる。経済的には実質的に資本主義だが、政治的には自由主義と共産主義という相違がある。また安全保障の上では、日中は同盟関係にはない。私は、日本が共産化するか、中国が自由化するかのどちらかにならない限り、通貨の統合は無理だと思う。ここでも鳩山氏の主張には、中国は共産主義国家だという明確な認識がないのである。
●中国は「アジア共通通貨」を無視して人民元をアジアに広げる
中国は鳩山氏の「アジア共通通貨」の呼びかけなど無視して、東アジアを人民元の経済圏にするための計画を進めている。既に各所で布石を打ち終え、来年(平成22年、2010)から本格的に展開する用意を整えた模様である。
中国は平成20年(2008)9月のリーマン・ショックをきっかけに、人民元経済圏の拡大に乗り出した。人民元の対ドル・レートを固定したことにより、中国の取引先は為替変動リスクを被る恐れがなくなり、人民元建て貿易決済を受け入れるようになった。同時に中国は、ドルを大量に発行するアメリカに対抗して、人民元を大量に印刷して、人民元が周辺アジアに大量に流れ込ませている。
人民元は、すべて毛沢東の肖像が印刷された紙幣である。マルクス=レーニン主義者にして、抗日民族解放戦争の指導者・毛沢東の肖像である。人民元がアジアに広がるということは、毛沢東がアジアに広がるということである。
中国は22年1月、東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定を発効させる。中国は協定の対象地域を「自由貿易区」と呼ぶ。これまで中国はベトナム、ラオス、ミャンマー、北朝鮮、ロシア極東部等と人民元建ての交易を活発に行い、出稼ぎ労働者や経営陣を大量に送り込んできた。今後、ASEAN諸国が「自由貿易区」になることで、中国は人民元を東南アジア全域に普及させようとしている。
中国最大の国有商業銀行である中国工商銀行は、本年(21年)9月、インドネシア企業向けに人民元を融資した。中国企業との貿易決済用で、初めての人民元貿易金融取引になるという。人民元貿易金融取引外国企業への人民元融資の最初の例となった。同行はこれを機に、東南アジア等で対外貿易決済用の人民元資金融資を一挙に拡大しつつある。国際化の最も進む中国銀行も、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシアでの支店で人民元決済業務を拡大させている。
こうした動きに応えて、イギリスの香港上海銀行グループ(HSBC)は本年(21年)11月、インドネシアで人民元建ての貿易決済サービスを開始した。マレーシア、タイ、シンガポール、ベトナム、ブルネイにも同様の業務を展開する計画という。ポスト・ドルの時代に向けて、ロスチャイルド財閥と中国共産党が支配する金融機関が連携を強めている動きと思う。この連携には、さらにロックフェラー財閥等の米欧の巨大国際金融資本が連なっているだろう。
中国は人民元をアジアの標準決済通貨とするように、着々と計画を進めている。これに対し、鳩山氏には、まったく戦略がない。国際的な準備通貨として円のシェアは、過去10年間で半減し、いまや世界の3%にすぎない。円が後退し、元が拡大するなかで、鳩山氏は何の戦略も示さずに「アジア共通通貨」を説いている。愚かと言うしかない。中国は「友愛」による「アジア共通通貨」の呼びかけを無視しながら、人民元によるアジア経済支配を進めているのである。
さらに中国は、人民元をドルに対抗する国際決済通貨にしようと目論んでいる。この点は、アジアという枠を超えるので、後の項目で改めて述べたいと思う。
次回に続く。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます