ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

尖閣:中国人船長釈放、やはり仙谷が指示

2013-10-22 10:38:09 | 尖閣
 平成22年(2010)9月7日に起こった尖閣諸島沖中国漁船衝突事件について、仙谷由人氏は、当時官房長官だった自分が菅直人首相の意向も踏まえ、公務執行妨害の疑いで逮捕された中国人船長の釈放を促す発言を法務・検察当局にしていたことを証言した。
 当時那覇地検は「国民への影響や今後の日中関係も考慮した」として船長を釈放したが、菅首相、仙谷官房長官は検察が独自判断で釈放したとして「政治介入」を否定していた。
 だが、このたび仙谷氏は、「法務事務次官(註 大野恒太郎氏)とはいろいろな話をしていた。私の政治的な判断での要望については当然、話をしたと思う」と自分が関与したことをようやく認めた。
 仙谷氏は、横浜市でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を22年11月に控えていた中で、中国が参加を見合わせれば日本のメンツがつぶれる可能性があると焦った菅氏から解決を急ぐよう指示があったことも認めた。菅政権の岡田克也外相や前原誠司国土交通相が「これはけじめをつけよう」と法的手続きに入るべきだと主張したのに対し、仙谷氏は「政治的な配慮をする必要があるかもしれないと思い、問題提起した」という。また、船長釈放決定に先立ち法務・検察当局からの要請に応じ、外務省の課長を参考人として那覇地検に派遣し、外務省の立場を説明するよう自ら指示を出していたことも認めた。
 私は、尖閣諸島沖中国漁船衝突事件から1年を迎えた平成23年(2011)年9月7日、「尖閣:事件から1年」を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110907
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20110908
 そこで私は、次のように述べた。
 「この事件で、わが国政府の中国に対する対応は、まったく弱腰で、世界に恥を晒した。9月7日は、わが国の国辱記念日となった。当時の菅首相、仙石官房長官、前原外務大臣らの責任は極めて重い。だが、事件は解明されぬまま、菅内閣は総辞職し、野田内閣に移った。
 尖閣事件は、日本人に覚醒を迫る事件である。この事件をあいまいのままにしておくと、大きな禍の種になる」
 「最大の問題点は、船長の釈放という判断にあったことは明らかである。今回の一連の事件の本質は、漁船衝突事件に係る中国人船長の責任にある。船長は領海侵犯、公務執行妨害、器物破損等の罪に問われねばならなかった。刑事事件と共に民事事件として、1000万円といわれる巡視船の修理代も請求しなければならないものだった。
 政府中枢は、船長の釈放は地検独自の判断と説明するが、政府中枢が関与したと思われる証言が多数出ている。直接的な指示を官房長官、法相等が行った可能性がある。また、最終判断は、菅首相だろう。だが、この検察に対する政府中枢の介入も、事実関係が明らかになっていない。
 国会議員は、国政調査権に基づき、関係者の証人喚問を実施すべきである。昨秋自民党には証人喚問を求める動きがあったが、その後、目だった展開が見られない。外交・安全保障に係る国会議員がこういう重大問題をあいまいにすると、将来に禍根を残す」
 「尖閣事件は、日本人に覚醒を迫る事件である。自らの魂を失った国民は、自らの国を失う。尖閣を守れなければ、南西諸島、そして沖縄を守れない。沖縄を守れなければ、日本を守れない。日本人は今、精神的に覚醒しなければならない。
 尖閣事件をうやむやに終わらせてはならない。うやむやにすると、尖閣の防衛整備を進めるうえで、大きな支障となる。事件の解明を進めながら、尖閣防衛の整備を急がねばならない。
 日本人が日本精神を取り戻し、憲法を改正し、国防を充実させて、独立主権国家としてまともな外交ができるようにならなければ、わが国の安全と持続的繁栄は決して得られない」と。
 私がこう書いた約3週間後となる23年9月26日、産経新聞は、菅政権で内閣官房参与を務めた松本健一氏のインタビュー記事を載せた。松本氏は、そこで中国人船長を処分保留のまま釈放したのは、当時の菅首相と仙谷由人官房長官の政治判断によるものだったと明らかにした。松本氏は、次のように語った。

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--事件発生後の経緯は
 「閣内では事件発生当初、菅氏や前原誠司国土交通相のように『証拠もあるわけで、国内法にのっとり断固として裁くべきだ』との考え方と、『釈放すべきだ』との立場に立つ仙谷氏の2つの意見があった」
--最終的に釈放という判断に至ったのは
「それは裁判が維持できないから。最終的には菅首相が判断したわけだ」
--菅氏が指示を出したのは事実か
「そうでなきゃ、釈放なんかできないでしょ、最終的に。あれだけの外交問題になっていたわけだから。菅氏は国連総会の最中に仙谷氏に電話をかけて、釈放するかしないかでやり合っていた。仙谷氏は官邸から一歩も出ずに夜中に首相と話し合っていた」
--菅氏が仙谷氏に押し切られたということか
「仙谷氏の方に正当性があると。(菅氏も)裁判が維持できないと納得した。電話のやりとりの中で(釈放するとの)2人の合意がなされた。それは船長が釈放される2、3日前だ」
--なぜそうしたのか
「菅さんは自分に責任がかかってくる問題は避けたがっていた」
--釈放は菅氏と仙谷氏の2人で決めたのか
「少なくとも官房副長官くらいはいるかもしれないが、政治家が決めた」
--官邸側の誰が法務省・地検側に釈放しろと命令をしたのか
「少なくとも菅氏はしていないでしょう。仙谷氏の可能性が高い」
--官邸側の指示で検察が動いたといえるか
「それはそうですね」(略)
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 松本氏の発言は、事件の核心に係る重要な証言だった。国会議員は、国政調査権に基づき、関係者の証人喚問を実施し、尖閣事件の徹底解明を進めてもらいたいと私は要望したが、ほとんど何も進んでいない。
 事件後、3年を経た今日、仙谷氏は自分の関与を認めた。当然、仙谷氏単独の判断ではない。当時の菅首相が最高責任者とし判断したはずであり、彼らの責任は重大である。
 国会議員は改めて、この事件の重大性を理解し、真相を明らかにし、菅政権の中枢部だった政治家の責任を追及してもらいたい。これは単に過去の事件の真相究明、責任追及ではない。尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るには、政治家と国民の意識が変わらねばならない。そのために必要な行動である。

関連掲示
・拙稿「尖閣諸島、6月17日に備えよう」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12i.htm
 補説に「尖閣事件から1年」を所収
・拙稿「尖閣:菅・仙石が『政治判断』との証言が」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/5d290f28754e1331ef7ebb0287104e88

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