ほそかわ・かずひこの BLOG

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キリスト教205~皇室とキリスト教

2019-05-29 10:53:11 | 心と宗教

●皇室とキリスト教

 日本の皇室は、神道の祭儀を行うとともに、古代から外来の宗教すなわち道教、仏教等を取り入れている。神道を中心・根本としつつ、他の宗教と対立するのでなく、その良いところは取り入れるという姿勢である。仏教の摂取・定着・発展は、皇室なくしては考えられない。キリスト教については、江戸時代に徳川幕府が禁止したので皇室に入ることはなかった。明治維新後、キリスト教の禁教が解かれると、皇室はキリスト教に対しても、排斥排除することなく、関心と理解を示してきた。
 皇室は、明治以降、わが国は欧米からさまざまなことを学びながら近代化してきた過程で、キリスト教を西洋文明の一つの文化要素として受け入れてきた。たとえば、クリスマスにプレゼントを贈る習慣は、日露戦争のころにすでに皇室で行われていた。皇族は、外国の王族や要人と親交を持たれる立場から、こうした習慣を柔軟に取り入れたものだろう。昭和天皇は、定期的に聖書の講義を受けておられた。国際的な教養としてキリスト教に関する知識を身に着けておられたと推察される。
 敗戦後、上皇が少年だった時、4年間、クェーカー教徒のエリザベス・バヴァイニング夫人が家庭教師を務めた。彼女を明仁皇太子(当時)の家庭教師に推薦したのは、GHQのボナー・フェラーズ准将だった。
 フェラーズは、同じキリスト教徒として親交のあった恵泉女学院の河井道から日本人の天皇に対する心情を聴いて天皇の重要性を知り、マッカーサーに意見書を出し、天皇が戦犯として処刑されないように働きかけた。1971年(昭和46)年、日本政府はフェラーズに対して、勲二等瑞宝章を贈っている。叙勲の申請書には「連合国軍総司令部における唯一の親日将校として天皇陛下を戦犯より救出したる大恩人」と書かれていた。
 フェラーズが、皇太子(当時)にアメリカ人女性の家庭教師をつけるようにしたのは、それによって天皇に対する欧米の世論を和らげることが狙いだった。フェラーズとヴァイニング夫人は、ともにクェーカー教徒だった。夫人は優れた児童文学者でもあった。家庭教師に選ばれたヴァイニング夫人は来日して、皇太子と弟君の義宮らに英語教育などを施した。家庭教師の役目を終えて帰国した後、ヴァイニング夫人は1952年に『皇太子の窓』を著した。同書はアメリカでベストセラーとなり、アメリカ人の皇室に対する見方を変えることに大きな役割を果たした。
 上皇は、1959年(昭和34年)、正田美智子様と結婚された。現上皇后は民間人として初めて皇室に入られた。カトリックの名家である正田家で育ち、ミッション・スクールである聖心女学院のご出身である。ただし、入内前にカトリック教会に照会し、洗礼は受けていないとされている。民間人、しかもキリスト教徒と思われる女性が、皇室に入ることには、日本の伝統を尊重する有識者の間で懸念の声が上がった。
 ご成婚後、皇族の一人がキリスト教に興味を持ったのは皇太子妃(現上皇后)の影響と聞いた昭和天皇が、皇太子妃に「皇室においてキリスト教の話はしないように」と叱責したという噂話を、当時の雑誌が書き立てた。平成28年から刊行されている『昭和天皇実録』は、このことに触れ、昭和天皇は「事実でないし、心に思ったことさえなかった」と伝えるよう側近に命じたと記している。
 雅子皇后は、妹たちがカトリックの洗礼を受けている、また、三笠宮妃信子様は、カトリックの名家・麻生家の出で、麻生太郎元総理の妹である。
 皇嗣秋篠宮の長女・眞子様は、国際基督教大学(ICU)に進学された。次女・佳子様は学習院大学を辞めてICUに進学された。ただし、同学でキリスト教に改宗する学生はごく僅かとされる。皇室関係の職員には、キリスト教徒が多いことが注目される。昭和天皇の初代の侍従長・珍田伯爵は、元外務次官でメソディスト派の牧師だった。その後の歴代侍従長もキリスト教徒が多いと言われる。たとえば、渡邊元侍従長は聖公会だった。川島元侍従長はカトリックで、同じくカトリックで日本初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子といとこ同士だった。
 今上天皇と皇嗣秋篠宮の養育係だった浜尾侍従はカトリック教徒であり、彼の弟・浜尾伺郎は枢機卿という高位聖職者だった。女官長にもキリスト教徒が多いとされる。歴代の宮内庁長官では、田島、宇佐美等がカトリック教徒だった。また宮内庁の職員にはカトリックが多いと伝えられる。
 このように日本の皇室はキリスト教と浅からぬ関係を持っている。だが、歴代の天皇皇后及び皇族は、皇室の伝統である神道を奉じ、また国家的な意義のある神道の祭儀を司っておられる。歴史的に仏教が先例にあるように、神道を根本・中心としながら、外来の宗教も取り入れて調和するという日本独特の文化を、皇室は堅持しているのである。もし万が一、木で言えば幹である神道から離れて、枝であるキリスト教に帰依するような皇族が出たならば、本末転倒ということになる。
 皇室において、神道がキリスト教を包摂し、指導するものとなるか、逆にキリスト教が神道の中核部を溶解させることになるか。このことは、日本と人類の将来にとって、重要な事柄である。

 次回に続く。

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