ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

ユダや84~ユダヤ人の天才科学者アインシュタイン(続き)

2017-08-04 09:30:39 | ユダヤ的価値観
ユダヤ人の天才科学者アインシュタイン(続き)

 アインシュタインは、ユダヤ教徒だった。また、ユダヤ人の帰郷国家建設運動であるシオニズムを支援した。1921年、イギリスの委任統治下にあったエルサレムにヘブライ大学の創立が計画されると、建設資金調達のために、米・英・仏等の諸国を訪れた。
 1922年(大正11年)11月、アインシュタインは日本を訪れた。改造社の山本実彦社長が、彼を日本に招いた。雑誌『改造』は、同年12月号で博士の来日を特集した。アインシュタインは滞在中、大正天皇皇后両陛下に謁見した。また、12月には伊勢神宮に参拝した。その際、次のように語った。

 「近代日本の発展ほど、世界を驚かせたものはない。一系の天皇を戴いていることが今日の日本をあらしめたのである。私はこのような尊い国が世界の一箇所くらいなくてはならないと考えていた。
 世界の未来は進むだけ進み、その間、いく度か争いは繰り返され、最後の戦いに疲れる時が来る。その時、人類は真実の平和を求めて、世界の盟主をあげねばならぬ。この世界の盟主なるものは、武力や金力ではなく、あらゆる国の歴史を抜き超えた、最も古くまた尊い家系でなくてはならぬ。世界の文化はアジアに始まってアジアに還る。それはアジアの高峰、日本に立ち戻らねばならない。
 我々は神に感謝する。我々に日本という尊い国を造っておいてくれた事を」

 天才科学者であり、またユダヤ人であるアインシュタインが、日本に対してこのような賛嘆と期待の言葉を残したのは、驚くべきことである。アインシュタインは、1901年に『ユダヤ百科事典』に取り上げられた英国人ノーマン・マクレオドの書『日本古代史の縮図』を読んで、日本に関心を抱いたといわれる。マクレオドは、日本人はユダヤの第10支族の子孫であり、天皇家の歴史は古代イスラエル王家の歴史を継承したものであるとする日猶同祖論を唱えていた。
 第2次世界大戦後、1952年(昭和27年)に、イスラエルの初代大統領ハイム・ヴァイツマンが死去すると、イスラエル政府はアインシュタインに第2代大統領への就任を要請した。アインシュタインはこれを辞退したが、自分がユダヤ人であるという自己意識を持ち続け、ヘブライ大学に著作権を贈っている。
 現代の物理学には、マクロの領域を研究する相対性理論と、ミクロの領域を研究する量子力学がある。量子力学では、粒子の位置と速度を同時に決定することはできない。観測を行う前は、それらを確率論的に予測することしかできない。そこから、すべては偶然であると解釈する考え方がある。これに対し、アインシュタインは「神はサイコロを振らない」と述べて懐疑的な立場をとった。アインシュタインは、神への敬虔な感情を持っていたことで知られる。そうした彼にとって、すべては偶然だとする世界観は受け入れがたいものだった。
 アインシュタインは、宇宙には神の意思による秩序があると信じ、その秩序を明らかにするための理論の構築に心血を注いだ。自然界には、重力・電磁力・強い核力・弱い核力の四つの力がある。アインシュタインは、後半生の約40年間、これらの力を統一する統一場理論に取り組み、まず重力と電磁気力の統一を試みた。だが、1955年の死去により、中途に終わった。
 彼の死後、1960年代から「ひも理論」、続いて「M理論」が登場し、アインシュタインが追い求めた「万物の理論」の実現への最有力候補となっている。また、アインシュタインが相対性理論で予測したことは、宇宙の膨張、ブラックホール、重力波等によって確認されており、彼の偉大さは21世紀の今日、いっそう増し続けている。スペース・ワープ、タイム・トラベル、パラレル・ワールド等の仮説も、アインシュタインの理論が根底にある。
 アインシュタインは理論物理学者だが、小説家アプトン・シンクレアの著書『精神ラジオ』に序文を書き、精神医学者ヴィルヘルム・ライヒのオルゴン・エネルギー探知機に強い興味を示すなど、精神・生命の領域にも関心を向けていた。「E=mc²」には、精神・生命の項目はないことが見落とされがちである。この公式に表されていない領域へと科学は研究をすすめなければならない。
 アインシュタインは、科学と宗教が対立するとは考えず、宗教に意義を認めていた。かれの宗教思想は、ピュタゴラスとスピノザの折衷であると分析されている。ピュタゴラスは、古代ギリシャの哲学者・数学者であり、また神秘主義のピタゴラス教団の指導者として、プラトンに影響を与えた。ユダヤ人哲学者スピノザについては、本稿の別の項目に書いた。
 アインシュタインは、晩年の著書『思想と意見』に、科学と宗教に関する見解を述べている。アインシュタインは、擬人的な神を立てる宗教を超えた宗教体験が存在するとし、それを「宇宙的宗教感覚」と呼んだ。「宇宙的宗教感覚」は、体験したことのない者には説明が難しいというところを見ると、彼自身がそのような感覚を体験していたのだろう。その感覚は特定の宗教の信仰を超えた自己超越的な体験と考えられる。科学と宗教の関係について、アインシュタインは「宗教なき科学は不自由(lame)であり、科学なき宗教は盲目(blind)である」という名言を残している。アインシュタインは、理性における成功を強く体験した者は、誰もが万物に表れている合理性に畏敬の念を抱いているとし、科学・宗教・芸術等の様々な活動を動機付けているのは、崇高さの神秘に対する驚きだという。こうした驚きは、「宇宙的宗教感覚」の体験につながるものだろう。アインシュタインの思想は、科学と宗教が高度な次元においては一致する可能性を示唆している。また最高級の科学者は、そうした次元から直観やひらめきを得ているとも考えられる。

 次回に続く。