ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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ユダヤ88~イスラエルの領土拡張と米猶関係の深化

2017-08-15 13:57:47 | ユダヤ的価値観
イスラエルの領土拡張と米猶関係の深化
 
 1948年(昭和23年)5月、ユダヤ人は国境を明示しないままイスラエルの独立を宣言した。それに抗議する周辺アラブ諸国との間で、第1次中東戦争が始まった。イスラエルは独立戦争と呼び、アラブ側はパレスチナ戦争という。
 イスラエルの独立を不当とするアラブ連盟は、数万の軍をイスラエルに侵攻させた。しかし、アラブ側は統一的な司令部をもたず、イスラエルは圧倒的な勝利を収めた。49年4月の休戦協定では、イスラエルは国連分割案が示す範囲を超えて、パレスチナ全土の80パーセントを支配した。
 エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の聖地である。47年の国連決議では、エルサレムは、国連永久信託統治区に位置している。だが、第1次中東戦争の結果、49年のイスラエルとトランス・ヨルダンの休戦協定で、エルサレムは東西に分割された。これにより、国連決議は守られなくなった。
 イスラエルの建国は、ユダヤ人が土地を得て国家を作る権利を実現するものだったが、その土地には、もともと住民がいた。そのため、イスラエルの建国は、パレスチナの住民には大災厄だった。分割案から休戦協定までの間に、パレスチナ人130万人のうち100万人が難民となったとされる。ユダヤ人に国土を奪われたパレスチナ人と、それを支援するアラブ諸国はイスラエルの承認を拒否した。
 イスラエルは、パレスチナ住民を抑圧し、周辺地域に侵攻して領土を拡張しようとする。これに対し、アラブ諸国は強い憤りを表す。このイスラエル=パレスチナ問題が、中東紛争の最大の要因となっている。
 第2次大戦後、イスラエルは、アメリカの援助を受けて軍事力を強化してきた。これに対抗して、ソ連はアラブ諸国に接近し、軍事援助を増やした。米ソの冷戦の影響という新たな抗争要因が、中東に加わった。
 中東での戦争は繰り返された。1956年(昭和31年)の第2次中東戦争に続いて、1967年(昭和42年)の第3次中東戦争では、イスラエルはヨルダン川西岸を占領した。その地域に存在するエルサレムの全市を押さえた。イスラエルは、エルサレムを「統一された首都」と宣言した。国連決議を完全に無視した行動である。そのため、世界の多くの国は、エルサレムを首都と認めず、大公使館をティルアビブに置いている。
 シオニズムは、19世紀末から始まったシオンの地への帰郷建国運動だったが、イスラエルの建国によって、その目的は達成された。建国後はイスラエルの防衛と繁栄を追求し、世界をユダヤ人が生存と活動をしやすいものに変えることを新たな目標としているとみられる。また、その目標は、宗教的には、ユダヤ教のメシア思想と結びついている可能性がある。ユダヤ教では、世の終わりにダビデの子孫がメシアとして出現し、神と新しい契約を結び、王国を復興して神殿を再建する。離散したユダヤ人を世界各地から呼び集める。イスラエルを率いて、世界を統治すると信じられているからである。
 一方、アラブ側には、1964年(昭和39年)、パレスチナ解放機構(PLO)が結成された。PLOは、68年にパレスチナ国民憲章を制定した。憲章は、敵はユダヤ教徒ではなく、英米勢力と結びついたシオニストであるとし、パレスチナに民主的、非宗教的国家を建設する方針を出した。しかし、69年アラファトがPLO議長になると、闘争的な組織に変わった。PLO加盟諸派にはテロやゲリラ活動を行うグループがあり、シオニストとの闘争は激化していった。
 イスラエルは、2005年にガザ地区を返還したが、ヨルダン川西岸地区は返還していない。その理由は、同地区がアブラハムやダビデ等にちなむ聖跡の密集地帯であり、エルサレムを防衛するための緩衝地帯であり、また貴重な水資源となっていることによる。
 私は、超大国アメリカの果たすべき役割は、ユダヤ=キリスト教系諸文明とイスラーム文明との対話を促し、中東に和平を実現することにあると思う。ところが、アメリカは逆にこれらの文明間の対立・抗争を強めてきた。
 アメリカは、第3次中東戦争以後、イスラエルとの関係を深め、ユダヤ・ロビーの活動が、外交政策に影響を与えてきた。特に1980年代以降のアメリカは、公平な仲介者ではなく、明らかにイスラエルの側に立ってきた。アメリカの指導層は、イスラエル政府の外交政策を支持する親イスラエル派やシオニストが主流を占めるようになった。今日、イスラエルが核兵器を保有していることは半公然の事実である。イスラエルは、約200発の核兵器を持つと見られており、中東諸国の中で圧倒的な軍事力を誇っている。アメリカは、イスラエルの核保有を追認しており、イスラエルに対しては、制裁を行なおうとはしない。その一方、イラクやイランの核開発は、認めない。明らかにダブル・スタンダードを使っている。イスラエルが自由とデモクラシーの国であり、アメリカと価値観を共有しているというのが、その理由だろうが、核の問題は別個である。アラブ諸国の核開発は認めないが、イスラエルの保有は擁護するというのでは、ムスリムが反発するのは、当然である。
 中東の和平が世界平和の鍵である。イスラエルとパレスチナ及びアラブ諸国との間に融和をもたらすことが、国際社会の安定には不可欠である。そして、世界の平和と共存共栄のために、ユダヤ人及びユダヤ教徒の側から、旧来の価値観を超克して、ただ一民族だけでなく、人類全体に貢献する動きが表れることが期待されるのである。この点については、後に、第6章で私見を述べたい。
 
 次回に続く。