ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

史上最低の米国大統領選挙~日本は国家再建を急げ

2016-10-17 09:41:38 | 国際関係
 4年に一度の米国大統領選挙が近づいている。過去の選挙の時、私は候補者の主張を比較したり、人脈を分析したりしてきたが、今回はここ数か月まったくその気になれずにきた。予備選の段階から、ほぼ毎日のようにアメリカのテレビ・ニュースを見たり、新聞記事をチェックしているけれども、書く気がわかなかった。理由は、あまりにも候補者に問題が多く、水準が低いからである。

 共和党候補の実業家、ドナルド・トランプと民主党候補の元国務長官、ヒラリー・クリントンの戦いは、嫌われ者同士の戦い、史上最低の大統領選という見方がされてきた。同感である。私は、二大政党の候補者がこの二人に決まった時点から、日本にとっても世界にとっても、トランプが大統領になるのは大凶、ヒラリーがなるのは中凶と予測している。どちらが、よりマイナスが少ないかの戦いだと思う。

 平成24年(2012)のオバマVSロムニーによる大統領選の時は、下記の拙稿を書いた。二大政党や米国財界の支配力など、基本的な構図は今回の選挙も変わっていない。決定的に違うのは、共和党が党内を統制できなくなり、トランプという既成勢力の外にいた人物が指名を勝ち取るという4年前には考えられない状況になったことである。それには、米国の経済・社会の変化、世界全体の傾向等、様々な原因があるわけだが、先に述べたように、それについて書く意欲が、今回は湧いてこない。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12m.htm

 9月28日、候補者が直接対決する第1回の公開討論が行われた。「世紀の討論」と銘打たれ、全米でこの放送を史上最多の8400万人が視聴したと報じられた。だが、予想通り内容が薄かった。これが世界の指導国の大統領を選ぶための討論会とは、情けなく感じた。
 10月10日には第2回目のテレビ討論会を見たが、あまりの低レベルにうんざりした。90分のうち、米国及び世界の重要問題の政策論争は3分の2ほどで、3分の1弱もの時間をトランプ、ヒラリーが個人攻撃のやり合い。スキャンダルに対してスキャンダルで応じ、露骨な攻撃と、それに対するかわし方を競っているような討論だった。下劣なトランプと老獪なヒラリーによる全米悪口チャンピオン・マッチか? あるメディアが「大統領選の歴史上、最も不快な討論会」と表現したが、現在の米国指導層の精神性があまりに低下していることに、私は今さらながら、あきれた。

 第2回討論会後、トランプのセクハラ問題が、大騒動になっている。不動産王が暴言王になり、いまやセクハラ王である。共和党の実力者たちが、次々にヒラリー・クリントン支持またはトランプ不支持を表明し、同党に大きな亀裂が走っている。そのうえ、主要なメディアがヒラリー支持またはトランプ不支持を次々に表明している。これに対し、トランプは、共和党の実力者をこきおろし、悪態をつき、孤軍奮闘を宣言した。メディアに対しても、全面対決の姿勢である。
 むちゃくちゃな状態である。これが、一時は唯一の超大国となっていた国家の現状である。帝国の終焉は早まっていると感じる。

 マスメディアの報道によると、世論調査の支持率、各州で獲得する選挙人数、特にスゥイング・ステーツの予想から見て、ヒラリーの優位が固まり、トランプの逆転はよほどの爆弾情報や大事件でも起こらない限り、難しいと思われる。だが、果たしてその予想がどれだけ実態を表しているかはわからない。メディアは大衆の意識を操作する能力を持っているからである。
 米国は国力の衰えともに、指導層の水準も低下してきている。なにより精神が低下してきている。わが国の国民は、そういう時代を生き延びるための心構えを、しっかり持たねばならない。いずれにしても、2017年1月以降、覇権国家・米国の混迷が、我が国にとっても世界にとっても、大きな不安定要因になることを覚悟しなければならない。
 日本人が日本精神を発揮し、米国を精神的にリードするようにならない限り、この世界の混乱は解消できないと思う。そのためにまずなすべきことは、まず日本の再建である。

 ここからは、やや空想風の話だが、選挙戦終盤になって想うのは、二大政党の背後にいる米国の支配者集団は、彼らに忠実だが大衆には嫌われ者のヒラリーを次期大統領にするために、ヒラリー以上に嫌われる人物を対抗馬にして、相対的にヒラリーへの支持を集めようとしたーーそんなシナリオがあるのかな、ということである。
 もともとトランプは、問題満載である。以前の米国であれば、決して大統領候補になれる人物ではない。品性にも能力にも経歴にも問題がありすぎる。だが、そうしたトランプをヒラリーの強力なライバルに仕立てるために、まずメディアが盛んにトランプの報道をする。期待と幻想が醸し出される。1%の利益のための現体制に不満を持つ大衆は、このシナリオに乗せられて意識を操作をされる。
 これで数か月間、大統領選という4年に一度の有権者参加型のイベントは、興奮と高揚の中で進んでいく。そして、ヒラリーとトランプの拮抗が頂点に達し、大統領選がいよいよ間近かになったところで、トランプの幾多のスキャンダルをメディアが大々的に報道し、莫大な資金力と強烈な広宣力で、トランプを叩き落とす。こうして、ヒラリーのほうがましという大衆の選択を固めていく。その結果、1%の利益のためのエスタブリッシュメントの維持が、民主的に、合法的に実現する・・・

 米国政治の深層を垣間見てきた人であれば、ほかにもいろいろな洞察を試みるだろう。一般のマスメディアの報道だけでは、米国政治の実態をとらえることはできない。また、アカデミックな政治学・国際関係論の理論だけでは、現代世界の支配構造に迫ることはできない。「現代世界の支配構造とアメリカの衰退」に関しては、下記の拙稿をご参照願いたい。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion09k.htm