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イヴァンカとトランプ、来日記念

2017年11月04日 | トランプのアメリカ

  もうすぐアベチャンのお友達、トランプちゃんが来日します。

  10月30日のモーニングサテライトに私の尊敬する国際政治学者イアン・ブレマー氏が出演し、二人のトモダチ関係の危険性に言及していましたので、みなさんにもお伝えします。

  イアン・ブレマー氏は毎年はじめに「今年の世界の10大リスク」を発表するユーラシアグループの代表で、地政学上のリスクの世界的権威です。インタビューでの彼の発言要旨を並べます。

・自民党の大勝じたいはリスク低減でよいことだが、安倍=トランプの親密な関係こそ日本にとって最大のリスクだ

・アメリカ国内はトランプが混乱を起こすおかげで、手のほどこしようのない状態になりつつある

・トランプも安倍首相のことを好きだが、日本のことを重要視などしていない

・トランプは史上最弱の大統領で、その彼が中国史上最強の習近平に対峙している状態は憂慮すべきだ

・わが道を行くトランプに、すり寄るだけではだめだ

  「アメリカ国内は、手のほどこしようのない状態」とか、「史上最弱の大統領」とか、冷静な政治学者の彼としてはずいぶん手厳しい指摘をしています。そして日本のリスクは安倍・トランプの親密な関係だと言っているのですが、その意味するところは次のとおりです。

  ブレマー氏は「今年の10大リスク」の中で、最大のリスクは「わが道を行くアメリカ」だと指摘していました。例えば北朝鮮問題などで安倍首相はトランプに頼り切っていますが、わが道を行くトランプは東アジアでことが起こってそれが日本に波及しても、アメリカに波及しない限り本格介入などしない。つまり、トランプの介入のトリガーは核ミサイルがアメリカ本土に届くことで、すでに韓国や日本へミサイルは到達しているが、それに対してトランプは何一つ気にしてなどいない。そしてトランプのアメリカ第一主義は今後も決して変わることはない。安倍首相はその彼にすり寄って頼るのみで、それが日本の最大のリスクだ、と言っているのです。

  トランプの来日中、安全保障問題の他に当然貿易問題が話題になるでしょう。トランプはアメリカに戻るのに、ミヤゲなしでは帰れないため、きつい要求をするに違いありません。アメリカのラストベルトに雇用を戻すのが最大の公約の一つで、そのためには日本を叩くしかないと、かたくなに信じている無知なトランプですから。

  貿易問題に関して先週の日経新聞に、アメリカの産業界が連合体を作ってトランプの通商政策に反旗を翻しているという記事がありました。記事を引用します。

大見出し;トランプ通商政策に反旗

小見出し;「(北米自由貿易協定)NAFTA維持」米産業界が連合体

内容;米業界団体のトップ100人以上がワシントンに集結し、上院議員100人全員の事務所をまわり「NFTA脱退阻止」を陳情した。主導したのは全米商工会議所、サービス産業連合、全国貿易評議会などで、垣根を越えて初の連合体を組んだ。その主張は、「NAFTAこそが米自動車産業の国際競争力を高めた」というもので、トランプ政権のアメリカ第一主義に反旗を翻した。ビッグ3を含む企業が、トランプの保護主義の間違いを正そうと立ち上がっている。特に自動車部品業界はNFTAからの脱退は雇用を生むどころか、2万4千人の雇用を失うものだと試算している。

以上

  今回は個別の業界団体ではなく多くの業界団体が統一連合体を作って運動をしていますが、これはアメリカでは極めてまれなことです。国内の混乱の第一はこのNFTA脱退です。

  第二の、そして最大の混乱は与党共和党の上院議員の離反が始まっていることです。ツイッター上では毎日、大統領対上院議員2人によるののしり合いが、中学生の喧嘩のように行われています。アメリカ大統領ともあろうものが、放送禁止用語を連発しています。

  「パパ、もういいかげんにしてよ!」

  私がもしイヴァンカだったら、こう叫ぶにちがいありません。

  ついでに苦言を呈すれば、日本のマスコミはかわいくて賢いイヴァンカを礼賛していますが、とんでもない。父親が暴言を吐き続け女性スキャンダルにまみれていたら、あらゆる手立てをもって阻止するのが家族でしょう。本当に賢くて大統領に影響力を持っているというなら、暴走の阻止こそ家族の恥、アメリカの恥を世界にさらさないために絶対に必要だし、最大の家族愛です。そうすればイヴァンカをかわいくて賢いと認めましょう。

  トランプは政権公約をほとんど果たせていません。果たしたのは自らが新た作り出すことではなく、単なる過去の政策の破壊のみです。それが混乱の第三です。PPしかり、パリ協定脱退しかり。自分がサインすれば可能なものにサインをしただけ。議会の協力が必要な「創り出す公約」は何もできていません。法案通過には上院や下院議員一人一人の協力が不可欠ですが、喧嘩ばかり売っているので、今後もブレマー氏の言う「史上最弱の大統領」の汚名は着たままになるでしょう。

  混乱の第四はロシア疑惑です。遂にキャンペーン中トランプ周辺にいた3人の有力支持者が特別検察官から訴追されました。そのうち2人はいわゆる捜査手法上の別件逮捕に近く、今後本丸を責めるための第一ステップと言われています。もう一人はすでにかなり捜査当局に協力し情報提供を始めているため、トランプ陣営は気が気ではありません。

  こうした問題を抱え、何一つ達成できないトランプ大統領、混乱する国内から脱出しアベチャンとゴルフをするひとときが唯一の息抜きに違いありません。しかしゴルフファンとしてもう一つ苦言を呈します。

  「松山英樹よ、おまえもか」

  アメリカでは一流のスポーツ選手がこぞってトランプに反旗を翻しています。フットボールの試合では、人種差別・女性蔑視・セクシストである大統領に反対の意を表するため、国家斉唱でひざまずき抵抗運動を続けています。松山選手が彼と一緒にプレーすることは、アメリカ人には彼への支持ととらえられるのです。みすみす政治利用される場に参加する意味を、25歳の彼もしっかりと考えるべきです。

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アメリカで買うか、日本で買うか

2017年11月01日 | 米国債への投資

  『米国債をアメリカ現地の証券会社で買う場合と日本の証券会社で買う場合の違いについて』

  なんだかんださんがコメント欄に投稿された質問にPuffinさんが回答を寄せられました。とても有用な情報が含まれていますので、みなさんにお知らせすべく、本文にて取り上げさせていただきます。

  まず、なんだかんださんのご質問から。

引用

林さん、皆さん、
いつも欠かさずフォローしています。私もこれから米国債を購入していく派ですが、先日口座のあるアメリカの証券会社を見ていましたら、
US TREAS BD STRIPPED PRIN PMTとUS TREAS SEC STRIPPED INT PMTに同償還日でも若干の金利差があり、後者の方が0.12ほど良いのですが、これはいつも林さんが仰っている「流動性差」なのでしょうか?またこの程度の差なのであれば気にせずに購入できますか?もし宜しければ教えて頂きたいです。なにしろ長く待ち望んだ米国債デビューです
やはりアメリカの証券会社のほうが安いみたいです。日本とアメリカと半々でと思っていましたが、う~~ん悩ましい・・??

引用終わり


  このご質問に、Puffinさんから以下の回答が寄せられました。

引用

なんだかんださんへ (Puffin)

2017-10-31 00:52:21

私も、今は米国証券会社にて毎月1万ドルずつ米国債を購入しています。

例示された債券のうち、前者はPrincipal(元本部分)で、後者はInterest(利金部分)で、別物です。

私もどちらを買うべきか迷って、米国証券会社に問い合わせしました。電話に出た方によると、債券に関しては専門部署が違うので、調べて後日連絡する、と言われましたが、直ぐ翌日にお返事いただきました。

米国債券市場での取引は、日本の証券会社の場合の、証券会社との相対取引による一本値ではなく、株式同様に売買希望者間での駆け引きで一日の市場内取引の間でも大きく変動するため、同じ償還日のPrincipal同士やInterest同士でも、どのタイミングで買いを入れるかで当然金額も異なる結果となるそうです。ですから、PrincipalとInterestでも、当然何時何分に約定するかで買値は違ってきます。

私は、Interestの場合、年に2回ずつ利金が償還されるので税金や複利計算の関係で金額が違うのかと思って問いただしたところ、償還はInterestの場合でも定められた償還日に一括して支払われるので償還価額は同じ1,000USD単位になるそうです。

因みに、日本の一本値のように証券会社が最終利回りを計算してくれるシステムは無いので、自分が約定した価額を基に、自分で最終利回りを計算する必要があります。Exelをお使いでしたら、標準で関数が組み込まれているので、一瞬で計算してくれます。

計算してみて吃驚。例えば、2040年2月15日償還の米国債Principalの場合、大引けの終値で約3.8%の利回り。翌日の日本でのその価格に手数料を乗せた相対の一本値価額では約2.7%でした。正確な数字は、自宅にある取引記録ノートに記録してあるのですが、現在、休暇で沖縄旅行中の為、手元にありません。
日本での一本値の上乗せ(儲けとしての手数料や為替変動リスクを加味して損の出ない金額を産出している、との事)は、以前何とか聞き出したM証券の場合、仕入れた米国債の仕入れ値に加えて約3%取っている、と言っていました。

為替の仲値からのスプレッドや、米国への送金手数料、米国での売買手数料などが乗っかりますが、それでもなおまとまった金額を買うのならば、米国市場での取引の方が圧倒的に有利だと思いました。

ご参考になれば幸いです。

引用終わり


  Puffinさん、いつも有用な情報をコメント欄にいただき、ありがとうございます。

なんだかんださんも、有用な情報へのきっかけを作っていただき、ありがとうございました。

せっかくですので、デビューの結果も是非お知らせください。

と言っても、無理に買わなくてもいいですよ(笑)

以上です。

コメント (7)
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