ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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日本株はこの先どうなるか?

2013年08月22日 | 2013年からの資産運用
  昨日の彷徨さんのコメントへの返答で、一つ訂正があります。

3%のインフレも30%のインフレの予行演習かもしれません

と私は書いていますが、アベクロコンビの目標インフレは2%でしたね。お詫びして訂正いたします。


 さてこのところ、米国金利が上昇しています。

 昨日の米国債10年物の金利レベルは、2.9%に近い2.8%台でした。そして為替は97円台くらいです。米国債を買おうとされている方には、チャンスが来ているといってよいでしょう。もちろんさらに円高と米国債金利高が昂進することはありえると思います。

  このレベルで何故私が米国債金利と円レートに注目したかと申しますと、3カ月ほど前の5月と比べますと、金利は1%も高いのにドル高になっていないからです。5月の米国債10年物金利は1.7%前後でした。そして為替は100円台でした。投資家サイドからみれば、為替で3%、金利の1%は10年では10%強、合計13%強のプラスリターンを得られます。

為替のアナリストの人達が、日米の2年物金利差が為替レートを説明している、とさんざん言っていたのをご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。今はそのトレンドとは全くはなれてしまい、アナリストも黙ってしまいました。

米国債金利について、2-3か月前にななしさんと私の対話を覚えていらっしゃる方がいるかもしれません。私は通常米国金利が高いとドル高円安となるが、現在の為替レートはかなりの程度日本株投資とカップリングしているので、「株価の下げがあると為替が円高に振れ、米国債投資によいタイミングが来るかも」という主旨の説明をしました。

 どうやら5月に比べるとはるかによいタイミングになっていると思われます。

さて、日本株の話に戻ります。

先々週までの投資家別売買動向で、外人が1千億円の売りに回った、と数値をお示ししました。そしてそれ以前の2週間も、そうした兆候が始まっている可能性があるとの見解を示していました。どうやら外人投資家も短期の投資家はアベノミクスに対する失望から売りに回ってきた感があります。

では先々をどう見るか。まず現状のレベルを把握しておきます。昨年11月に始まったアベノミクス相場は原点が8,600円台ですから、現状の13,000円台でも5割以上の上昇幅が確保されています。予想PERは現在ちょうど15倍です。

ここまでの相場は一方的に外人が引っ張り、日本の個人・法人が売り向かっていました。日本勢は一部の個人が「提灯を点ける」ことはしていても、基本的には「やれやれ」の売り物を出し続け、それは留まる事を知りませんでした。

つづく

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日本の借金、1千兆円超え

2013年08月21日 | ニュース・コメント
彷徨さんへ

いつも私のブログをおよみいただき、また的を射たコメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

彷徨さんのおっしゃる次の懸念は全く同感です。

>1,000兆円の大台を突破した国債残高は、このままでは返すあてなどどこにも見あたらないばかりか、このままでは頼みの引受先である個人金融資産枠もやがて使い果たしてしまう勢いで増加をみせています。

また
>そこで考えたのがインフレマインドを 醸成するための演出としてアベノミクスと異次元緩和の大芝居となったのでしょう。

>そして万が一ハイパーインフレになったら国債は、紙切れ同然(個人金融資産は減価)になってしまうのでどっちに転んでも国は、損することはないと踏んでいる財務官僚と日銀官僚の考え方の違いがそこにあるためと考えるのはうがった見方でしょうか。


こうした見方は「うがっている」とはとても思えないほど現実味を帯びていますよね。私も「国債を毎月7兆円も買うのは、本格的に売れなくなった時の予行演習だ」と申し上げました。3%のインフレも30%のインフレの予行演習かもしれません(笑)。

ただ、彷徨さんの言われる日銀ネットのお話はちょっと「うがった見方」かもしれません。

 この決済インフラは、いわば日本経済のオカネの流れを血流にたとえるなら、心肺機能を担っているものです。国債の決済も基本的には市場での売買より発行・引受決済という根幹を担っています。株の保管振替(ほふり)も同様にこれが担っています。

 これを少しでも歪めると、証券決済で最もあってはならない「フェイル」という事態に立ち至ります。つまり決済不能で、当事者はデフォルト認定されるほどの大ごとです。市場がどんなに荒れようと、いやむしろ荒れて出来高が莫大になればなるほど重要性を増す機能なのです。

 そして日銀ネットに彷徨さんのおっしゃるヘッジファンドの暴走を抑える機能はありません。理由は、国債売買の成立は現物であれば当事者間の相対ですので、売り手と買い手の2者間だけで成立します。成立したあとの決済だけを日銀ネットが実行するだけなのです。取引に制限はかけられません。

また、レバレッジを掛ける比率は一定の率がそれぞれの市場(日本の証取、シンガポールなど)で決められていて、市場の暴走はレバレッジ率を下げるなど取引所の判断で行われます。それにプレッシャーを掛けるにしても、いくら金融当局であってもシンガポールの日本国債先物市場までは手が届きません

ということで日銀ネットについては異論がありますが、一番大切な異次元緩和とアベノミクスについては同感するところ大です。

 国の借金の1千兆円超えに対する世間の反応は、驚くほど軽微ですね。それに関連してむしろテレビで識者・評論家と称する人たちが「国はそもそも破綻することはない」などという幼稚な議論がなされていることに大きな懸念をいだきます。
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増えない銀行貸出

2013年08月19日 | ニュース・コメント
  8月16日付の日経新聞に「日銀緩和 融資 波及鈍く」という記事がでていました。日銀がこれほどの異次元緩和をしても、銀行は貸出を増やすまでに緩和は波及していない、という記事です。

  私はクロちゃんの異次元緩和を「日銀という公器を使った賭けだ」 と批判してきました。

  ちょっとそれをおさらいします。みなさんには数字をお示しし「アメリカのFRBのQE3にも匹敵する日本国債の買い上げは無謀だ」と申し上げました。FRBの債券買いが毎月85兆円(住宅債券が多い)に対し、日銀は毎月70兆円です。経済規模はアメリカの3分の1なのに、ほとんど同じ様な量の資金を市場に供給しています。

  しかし日銀が異次元緩和で資金供給をしても市中にそのオカネは出回らず、ひたすら日銀の当座預金に「ブタ積み」になっていることを再三指摘しました。

  今回の「融資 波及鈍く」とはその裏付けの一つです。記事から数字を拾いますと、

銀行が受け入れている預金に対する融資の比率(預貸率といいます)は

・大手銀行 64%   (08年―09年ころは75%程度)
・地方銀行 73%   (  同      75%程度)
・信用金庫 49.6%  (  同      55%程度)


  この4・5年で預貸率を一番減らしているのは大手銀行で10ポイントほど、信金が5ポイントほどでそれに続きます。下落傾向は4月以降もさしたる変化はしていません。特に融資比率の低い信金は余った資金で国債を買っています。日銀は信金の運用手段を奪う爆食をしてどうするというのでしょうか。大手銀行は私がこれまで指摘してきたように、長期国債は危なっかしいので売却し、ほとんど金利はつきませんが短期の政府証券などを買っています。


  預貸率のお話しで注意すべき点は、絶対量では融資も増えていることです。記事によれば「足元では預金は4%のペースで増え、融資は3%のペースで増えている」ので、融資は増えても預貸率は減ってしまう。ということなのです。クロちゃんは日銀の資金供給の何倍ものオカネが世の中に出回るハズということでスタートしてのですが、全くそうなっていません。

  異次元緩和の一番の目的はデフレの克服です。クロちゃんは就任時も現在も、日銀による国債の爆食が、どうデフレの克服につながるのかの説明はしていません。

  みなさんもよくご存知のように、FRBの超緩和策は世界の金融市場に少なからぬインパクトを与えています。それは資金供給が投資につながるメカニズムがアメリカでは働くからです。つまり資金ニーズがあるところに供給をするからです。しかも投資を通じてそれが世界に波及効果をもたらします。ですので、FRBが「ちょっとスピードを緩めるかも」と言っただけで金融市場が大きく反応したのです。

  日本には民間に資金ニーズがあまりありません。ニーズがあるのは借金まみれの中央政府・地方政府だけです。そこで私はこの異常な賭けに警告を鳴らしているのです。デフレの克服どころか一気にハイパーインフレにならないことを祈ります。


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日本の投資家はどうか?

2013年08月17日 | 2013年からの資産運用
  やはり「山」さんとは「山ちゃん」でしたか。いつも私のブログをお読みいただき、ありがとうございます。そして決して回答の容易でない鋭い質問やコメントをいただき、誠にありがとうございます(笑)

  さて、ここまで現在の株式相場を動かす原動力である外人の動きについて、私の見方をお話ししてきました。8月9日の記事では次の様に書いています。

>本当に注目されるのは、8月7日・8日と2日間で800円の下げとなった今週(先週のこと)の動向です。そこでもさらに外人が売り越しているとなると、その後の展開も悲観的にならざるを得ません。

  2週連続の相対的に少額の売り越しのあと、暴落した7日・8日の週、外人はさらに大きく売り越していました。金額はそれまでとは1ケタ違う1千億円ちょうどです。それでも買い越しの10兆円と比べれば、わずか1%にすぎません。しかし一方的に買い越していた買い手がそうでなくなった衝撃は結構大きいものがあります。

  もちろん山ちゃんが書いていらしたように、出来高は少な目です。夏枯れの時期ですからちょっとした売りでも価格が飛んでしまうことはあるでしょう。

  そしてその売りに対して買い向かったのは、個人投資家です。なんと先週は1,970億円も買ってあげちゃいました。投資家のみなさん、私のブログを読んでいませんね(笑)。

  ここまでをまとめます。

「アベノミクス以降の相場変動は外人投資家しだいだ」

  簡単に言えばこれがまとめです。上げるのも外人、下げるのも外人、日本人でこの相場に乗ろうとしている投資家は、言葉は悪いですが、しょせんいわゆる「ちょうちん筋」にすぎません。ちょうちん筋とは、有力な投資家に同調して売買する投資家をさします。

  だからといって今回の相場での個人投資家の売買は、決してやみくもではありません。5月23日の暴落の時も外人が少し売り越し、大きく買い向かったのは個人でした。私が「あー、やっちゃいましたね」と書いていたのを覚えていらっしゃる方も多いと思います。

  下げたら買う、上げたら売る。株式投資と限らず、相場の参加者の大事な基本動作です。しかしそれはあくまで循環しながらも右肩上がりを前提にした買い方です。現在の予想PER(今期末の1株あたり予想収益と現在の株価の倍率)が15.3倍と計算されていることを考えると、まだ本腰を入れて買える場面ではないようです。

  日本の個人投資家にはこの相場に積極的に参加しているちょうちん筋と、超塩漬け株を「やれやれ」で売るバブルの残滓組がいることも忘れないようにしましょう。私の世代(団塊)より上の方は、ほとんどが「やれやれ」組です。

  それは日本の法人投資家にも言えることで、金融法人・事業法人の売買動向を見ていても、およそ個人投資家の「やれやれ」組と似た動きになっています。むかしむかしの持ち合い株は「やれやれ」でやっと売却しています。大企業はグループ再編に伴う売りを出し、私がコンサルタントをしている数社の中小企業などでも、「下請けイジメ」的な半強制持株会の保有株を解消しようとする動きが継続しています。

  そうしたことも踏まえ、じゃ、今後株式相場は長期的に見て右肩上がりが実現できるのか、やっぱり低迷が続くのか、今後はそのあたりの長いレンジで私がどう見ているかをお話ししていきます。

  ところで昨日山ちゃんからさらにコメントをいただきました。日経新聞の報道姿勢に対して疑義ありという内容です。日経新聞は株価とともに生きる新聞ですから、株式相場や経済の見方、そして政策については常に前向き、プラス志向だと「割引いて」見ておく必要があります。そう見ておけば、さほど気にすることもないのではないでしょうか。これが私の日経に対する見方です。


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外人買いはどうなる

2013年08月15日 | 2013年からの資産運用
山さんのコメントに対する私の意見の続きです。

>国内投資家の在り方は、20年以上前のバブルの 崩壊と、崩壊と気が付かずに、「いずれ上がる」と思って買い続けた結果、すっかりと意気消沈してしまったようで、本気になって買い向かっているようには思 えません。新聞というか、日経だけが強気だっただけのようで。

  同感です。国内投資家でも特に個人投資家はその通りで、外人の買いに一貫して売り越しているのがその証拠ですね。
  もちろんみんながみんなバブル期からの投資家というわけではありません。私に相談される方の多くは悩みを抱えた方で、悩みとは「含み損を抱えた株をいつ処分するか」です。そうした方のほとんどは団塊の世代よりさらに高齢の方です。山さんのおっしゃるとおり、「本気」で腰を入れて買う人はいないと思います。そうした方への私の答えは簡単で、「売るのは、イマデショウ」という以外ありえません。年齢を考えても、オカネを使わないと使う時間に余裕はないのですから、売り以外ありえないのですが、まだ増やすことにこだわり、売ったら何を買うのか、米国債か?と本気で聞いてきます(笑)。もちろん余裕のある方で遺産に残すのは何がよいか、と聞かれれば、米国債と答えますが。

  しかし団塊の世代の一部の方やそれより若い方は株式投資に違う考えを持っている方が多いと思います。最も大きな違いは、含み損を抱えていない、もしくは相場を張った経験がないというところが違います。

  そうした方は「将来の備えは投資でするものだ」という証券・銀行の言葉や、「年金型保険こそ年金を補うものだ」という生保の言葉にコロリと騙されます。


  もう一つ、山さんの以下の部分にはとても面白いことが隠れていますので、それを説明します。

>国内投資家の在り方は、20年以上前のバブルの 崩壊と、崩壊と気が付かずに、「いずれ上がる」と思って買い続けた結果・・・

とありますが、これは「国内投資家」「外人投資家」と言い換えても全く同じです。だって同じ相場で長期にわたり勝負しているのですから。

バブル崩壊以降超長期で見れば、常に外人は買い続け、負け続けているのです。何故ならバブル期に10%もなかった外人持ち株比率が、今や約3割の28%(13年3月末)、売買比率で見れば今や6割なんですから。

  株価には当然上下動がありますが、そのボトムを外人だけがうまく捉えて、ピークで売るなんてことはできるはずがないのです。

  こんな簡単な事実に気が付いている人は多くありません。報道は外人は常にうまくやっているというトーンですが、大間違いです。プロの株のアナリストでもこうした事実を意図的に言わないのか、数字の見方が甘いのかわかりませんが、指摘している人はいません。外人が結局のところ長期では負け続けているのは私のような数字ヲタクには一目遼然なのです。

  ところで、最近は「ハゲタカ」という言葉が死語になりつつあります。

  新聞・雑誌のたぐいは、バブル崩壊後の不動産やゴルフ場のバルクセール(十羽ひとからげでナンボ)で買いあさる外人を、さかんに「ハゲタカ」呼ばわりしていました。みなさんもよく覚えていると思います。

  しかし私がいつも言っていたのはその正反対で、「いいから黙って買わしておけ」でした。肩代わりしてくれるのですから有りがたい話です。ゴルフ場投資はさらに「外人は三顧の礼でお迎えしろ」(笑)でした。だってゴルフ場は再生してもらわないとプレーに困るからです(笑)。

>外人投資家は、林さんの説明を伺う限り、大幅に買い越し分を抱えていることになり ますが、では、先物ではどうなのか、信用取引ではどうなのか、ダミーを使っての売買はどうなのか。もしも抱えたまま、日本人が相場に買い向かってこないことを理解したら、これが今後の需給のしこりになるわけで、株式相場の崩れだけではなく、為替の崩れになっていく可能性が大きいわけですね。

  これも基本的にはシコリになるという山さんのご意見に賛成です。先物や信用などは決済期日があり、かつレバレッジを掛けられるのでヘッジファンドに多用され、現物は長期の投資家に保有されます。長期投資家は保有を継続するでしょうし、ヘッジファンドの分もロールオーバーされ(期日がきたらまた繰り返す)積み上がっていますので、10兆円がすべて一気に売却されることはないと思います。それでも何かのイベントや政策変更などをきっかけに相場を崩すほどの売り越しが生じることは大いにありうるでしょう。
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