ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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Puffinさんの投資指針 その3

2015年08月27日 | Puffinさんの投資指針

 各論―具体的手法

 

私は、長期保有と短期売買に分けて行っています。

 

長期保有は、ローリスク・ミドルリターンの投資が特徴です。投資対象は、【Ⅰ】外貨建て外国債券、【Ⅱ】投資信託、それに少しリスクは上がりますが【Ⅲ】長期保有を目的とした国内外の株式投資、です。現在は、こちらが資産の大部分を占めています。手法としてはかなりのんびりしたものになっています。基本は「バイ・アンド・ホールド」です。

一方、短期売買は、ミドルリスク・ハイリターンになります。数日から数週間のスパンでの株式投資を、全損しても構わない程度の資金を投入して、回転売買にて行っています。こちらは、「呆け防止の頭の体操」を目的としたものです。株式投資で陥りがちなリスクを極力排除しようとして、なるべく手間・暇の不要な方法を、8年間毎日夜就寝前の1時間だけを使ってネットなどで勉強して、試行錯誤を続けた結果です。主な手法としては、【Ⅳ】会社四季報を利用した国内株投資、【Ⅴ】新規上場株式(IPO)投資、の2つです。

 

何れも、日々の記録をノートにつけていて、15冊目になりました。記録をつけることは、自分の考えをその場で整理するうえで必要になると思います。また、後で振り返ってみて、例えばなぜうまくいかなかったのか、などの検証にも役に立ちます。今から始めるなら、ネットのストレージサービスを使えば、いつどこからでもアクセスできますね。始めた当時はそんなものはなかったので、今も紙ベースです。かつ四半期ごとに、保有全資産について詳細なリストも作っています。国内だけでなく海外の証券・銀行口座もあるので、全部のIDとパスワードを書いて、私が呆けたり死んだりした時は妻がそのノートを見れば全てがわかるようにして、居間に置いていつでも自由に閲覧できるようにしています(仕事柄、認知症者に接する機会も多く、痛感するのは、その時が来たらもう本人にはそれがわからない事です)。家族は夫婦と犬1頭だけなので、私が守らないと誰も守ってくれませんから。

 

まずは、長期保有から。

 

 

】外貨建て外国債券投資

(1)米国債

私の投資の基本は、資産の大部分を占める米国債などの外貨建て資産です。私は序論で述べた2020年問題を想定して、3年前の円高の時代に金融資産の多くを外貨建ての米ドル建て米国ストリップス・ゼロクーポン債や豪ドル・ニュージーランドドル建てディスカウント世界銀行債、米国株・NY市場上場投資信託ETFにシフトさせました。今も一定額ずつを毎月購入しています。大手証券会社の例えば野村・大和・三菱など、及び中堅ですがSMBCフレンド証券など、それとネット証券のマネックス証券などなら、国内口座に加えて外国口座を開設すれば、誰でも日本円を使って簡単にそうした外貨建て商品を購入できます。

日本国債破綻時に資産を守る手段として一番のお勧めは、世界最大の流通量(=流動性)と信用度を持つ、米国債でしょう。世界の資本主義の総本山ともいえる米国経済の信頼度・健全性は他国の追従を許さないもので、その債券元本の安全性は世界にあふれるすべての金融商品の中でダントツの高さを誇っています。たとえ満期償還前でも市場で自由に換金が可能でしかも米ドルで返ってくる、という絶対的な流動性の高さに加えて、債券の持つ安定した確実な利息・利回りを得ることが出来、償還まで持ち切れば、満期時には額面金額が償還されます。日本経済の破綻などが発生した場合に超円安となったならば、大きな為替利益も得られます。特に、ゼロクーポンと呼ばれるストリップス債は一種の割引債で、購入と同時に、満期償還時の最終利回りがドルベースで確定します。ディスカウントされた金額で1単元1,000米ドル単位での債券購入が可能なので、購入資金が少なめの方でも、より多い額面金額を購入できます。

一般に、有事の際には米国債が真っ先に買われます。この事を象徴する出来事は、2013年に「財政の崖」と呼ばれる、米国が直面する経済の下振れリスクを“米国経済が崖の上に立っている”と喩えた問題が生じて、米国格付け会社が米国債の長期発行体格付けを格下げしたことがありました。そこで起こったことは、米国債の市場債券価格の暴落ではなく、むしろ上昇でした。つまり、全ての投資対象商品の中で最も信頼性の高い米国債が格下げされるということは、それ以下の信頼性しかない他の投資対象はもっと信頼性が下がる、と看做されることで、最も信頼性の高いものへと投資対象を移す「フライト・トゥ・クオリティ」(質への逃避)と呼ばれる現象が生じた結果です。米国債の磐石性を象徴する出来事だと思います。

以上の利点から、日本経済破綻の場合の保険として、米国債は大変有効だと思います。

 

(2)スーパーソブリン債

その他の外貨建て外国債券としては、「スーパーソブリン債」と呼ばれる、世界銀行債などの国家を超えた国際機関発行の債券類もあります。こちらも信用度は高く、安全性も一般には高いと言えます。ただ、いま日本で購入できるこうした債券は米ドル建て以外のものが多く、米ドル建てに比べると単位通貨の流動性が低くてその分ボラティリティー(価格変動の度合い)が高いため、為替に注意が必要になります。豪ドルやニュージーランドドル建てはまだしも、最近では南アランド建てやブラジルレアル建て、トルコリラ建てのものも発行されており、そうしたものは高金利ですが為替リスクが高いので、お薦めできません。

一時期、0.5%利付ディスカウント債が好まれて日本で流通していましたが、これは、日本の税制の盲点を突いた債券で、現行税制では償還前に売却した場合の譲渡差益が「無税」となることを利用したものです。しかし、2016年1月に「社会保障と税の一体改革」が施行され、こうしたものも全て特定口座の対象として、「申告分離課税」に変わるため、無税の恩恵を受けるには2015年中の売却が必要で、これからは無くなると思われます。私も、一部この豪ドル建て・ニュー時ランドドル建て世銀債を保有していますが、2015年中に売却予定です。

 

(3)外国債券の買い方

では、その買い方です。代表として米国債ゼロクーポンを挙げてみます。外国債券は一般に、販売する証券会社の得る利益が少ない傾向にあるので、実は殆ど積極的な宣伝活動は行われていないのが現状です。初心者の方は、どこでどういう手続きをする事で買うことが出来るか、迷われる方も多いと思います。

まずは、証券会社選びです。日本株と違って、どこの証券会社でも売っているわけではありません。米国債の扱いが多く色々な償還期限の中から選ぶことが出来る証券会社は、限られています。

 

一般に、証券会社は、大きく分けて、店頭型証券:古くからある、証券マンのいる支店が中心の大手証券が主。野村証券・大和証券・SMBC日興証券・みずほ証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券・SMBCフレンド証券など、と、ネット証券:全てがネット上で完結する取引中心。SBI証券・マネックス証券・松井証券・カブドットコム証券・楽天証券などに分かれます。各種手数料が安いのは、圧倒的にネット証券です。店頭型証券も今はどこもネット上からも口座開設が可能になり、ネット注文も可能ですが、各種手数料が約10倍と高く、ネットでは取り扱い商品に少し制限があります。ネット証券は、株式と投資信託のみの扱いが殆どになります。今では、各証券会社のほぼ全てが口座開設・口座管理料無料です。例外は、野村證券および大和証券の店頭支店で口座開設をした場合は口座管理料が発生し、国内口座に年間3,248円、外国口座の開設で更に同額の料金が発生します。

 

米国債ゼロクーポンを買うのなら、大手証券会社の野村證券・大和証券・SMBC日興証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券です。特に品揃えが豊富なのは大和証券・三菱UFJモルガンスタンレー証券。野村も、かつては豊富でしたが、このところやや少なくなっています。同じ償還日の米国債でも、各社によって微妙に販売価格が違います。

口座開設後にかかる年間口座管理料は、前述のように野村と大和は普通に支店で開設するとフルサービスが受けられますが国内口座+外国口座で年3240円x2取られます。しかし、抜け道があって、野村はネット取引のみのホームトレード口座をネット申し込みで無料になり、米国債などの外国債券預かりも出来ます。米国債購入は電話注文で対応します。大和もネットからの口座開設申し込みが可能で、ネット中心のダイレクトコースを選択して「eメンバー」になると国内株式預かりは無料ですが、外国債券預かりは年3240円かかります。但し3000万円以上の預かり資産があると、外国口座も無料になります。大和はネット上から米国債購入注文が可能です。他は、店頭型証券でもネット証券でもどこも口座管理料は無料です。SMBC日興証券は、大手にしては外国債券の扱いが非常に少ないです。三菱UFJモルガンスタンレー証券は、米国債購入はやはり電話注文です。中堅のSMBCフレンド証券は、米国債の扱いが殆どなく、世界銀行債などになります。こちらは書面でのやり取りが必要になるので、店頭に行くか、郵送でやり取りします。

 

なお、米国債はどの証券会社で購入するのでもほとんどの場合、既発債の購入になります。購入手数料は、提示価格に織り込み済みですので、別途必要になることはありません。

 

購入方法は、自分が口座を持つ上記の証券会社で日本円を米ドルに為替交換してそのまま直接購入する買い方が、一番簡単です。各証券会社への出入金手数料は、自分が口座を持つ都市銀行のオンラインサービス契約をしておけば、そことの出入金は無料です。入金後に今度は為替交換しますが、米国債を扱う大手証券会社で為替交換に必要なスプレッド(基準為替レートと買い・売りの為替レートとの差分で、その分が手数料になります)は、米ドルの場合50銭くらいかかります。為替レートも約定タイミングが決まっています。1日に数回決まった時間までに集まった注文をまとめて、その時刻に証券会社が決めたレートで為替交換されるので、約定した後でないと、実際の交換レートがわかりません。私は、為替交換はSBI証券の口座開設後に申し込んでいた系列子会社の住信SBI銀行を利用しています。こちらは、スプレッドが9銭(2015年8月17日からは15銭)と安く、しかも月曜午前7時から土曜日午前6時50分(サマータイム時は午前5時50分)までリアルタイムで為替レートが提示され、注文受け付け時点で為替レートが確定します。また、外貨普通預金取引からだと8日先までの期間連続しての「指値注文」が有効なので、自分の希望する為替レートになれば自動的に約定します。常に為替動向を見張ることが不可能な兼業投資家の方には最適だと思います。一方、こちらの欠点は、住信SBI銀行から他の証券会社への資金移動が必要となり、SBI証券以外の証券会社への資金移動に際しては、予め事前登録手続きが必要でそれが非常に煩雑で時間もかかることや、リフティングチャージと呼ばれる手数料がかかることです。1回の送金金額を170万円位にしないと手数料負けします。

こうして米ドルが証券口座に入ったら、買い注文を出します。野村と三菱は、電話でコールセンターにかけてオペレーターとやり取りします。ちなみに、電話注文の場合は先程の為替交換をせずに直接円貨を使う旨話せば、概算金額を言われますのでその金額の入金で直接買う事も出来ます。最終的な為替レートは、やはり決まっている約定タイミングでの為替レートになります。店頭型証券の口座、といっても億単位の預け資産がなければ、担当者が付かないネット取引の「零細口客」に分類されてしまうので、コールセンター職員が強引に別の商品の説明をする事などは一切なく、淡々と事務的に処理してくれますので、安心して「米国債だけ」購入することが出来ます。大和の場合は、ネットから直接購入できます。

私は現在、三菱が中心で野村でも米国債を買っていますが、今後大口購入では、大和でも買う予定です。

 このような流れで、各自のライフプランに合わせて任意の償還日の米国債を購入してください。

 

(4)外国債券の売り方

 今度は、買った外国債券の売り方について、やはり例として米国債を取り上げます。

債券は一般に、満期償還を待つか、中途売却をするか、の何れかで換金します。満期償還の場合は、その時期が来ると自動的に換金されます。換金額は、その債券の額面価額になります。米国債の場合は、1,000米ドル単位ですのでその金額が還ってきます。中途売却の場合は、預けている証券会社に買い取ってもらいます。中途売却の場合の買取り金額は、残存期間とその時点の金利水準によって変わります。実務上は、証券会社によって多少違うかもしれませんが、手続きに一定期間必要なので満期償還日の約1週間から10日くらい前までに申し出れば、中途売却が可能です。

 受け取りは、外貨でも円貨でもどちらでも選択可能です。何もこちらから申し出がなければ、その時点の為替レートで換算して円貨で還す証券会社が多いようです。引き続き外貨で保有するか、新たに別の外国債を購入する資金に充当したい場合は、外貨MMF(一日満期の外貨建て投資信託で、日々の分配金が繰り延べられて毎月の分配再投資日にまとめて自動的に再投資される)での受取り手続きを事前にすれば、外貨のまま受け取れます。

 

あと、重要なのが税金の話です。現行では、利付債(原則利率0.5%以上)は、(1)譲渡損益のうち、利益は非課税で、損失は他の利益と相殺できず「なかったこと」にされる、(2)償還損益は雑所得として総合課税、(3)利子は利子所得として税率20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉分離課税。また、割引債(原則利率0.5%未満)は、(1)譲渡損益が譲渡所得として総合課税、(2)償還損益は同上、ということになっています。

米国債ゼロクーポンの場合は、割引債に該当しますので、いずれの売り方をしても総合課税、ということになります。

これが、2016年1月からは、先程(2)のスーパーソブリン債の項で触れたように、「社会保障と税の一体改革」の実施で新税制が施行され、全て一律に特定口座の対象として、「申告分離課税」になりますので、注意が必要です。特定口座扱いになる利点は、自分の保有するすべての証券会社での株式などの他の投資商品の売買損益を、損益通算して相殺することが可能になり、さらにトータルでの損害は3年間繰り越せるようになる点です。私の持つ店頭型証券会社の担当者の話では、証券会社からは2015年秋頃に顧客に対して、特定口座扱いになる資産一覧が通知される手順になっているそうです。なお、同時期より、マイナンバー制度が稼働するので、もうお目こぼしは期待できません(税務署は年間3億枚の源泉徴収票を手作業で名寄せする事から解放されるので)。正直に申告しましょう(笑)。

 

 

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1 コメント

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野村證券の口座管理料 (マッピーランド)
2015-08-27 22:54:07
Puffinさんがこの資料を記述した時点と現在では事情が異なっているのだと思いますが
今は野村證券の本支店で口座開設しても口座管理料は無料かと。
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