プチ炎上の議論では日本の将来とともに、アメリカの将来についても議論の的になっていました。ここでアメリカの将来をどう見ているか、日本と比較しながら私の考えをお示ししたいと思います。といっても、これまでとは特段の変化はないことをあらかじめ申し上げておきます。
アメリカの格付けと成長力に関して、9月19日にロイターが以下の記事を書いています。
タイトル;アメリカの成長力
格付け会社フィッチ・レーティングスは19日、米国の長期外貨・自国通貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を「AAA」に据え置いた。見通しは「安定的」。フィッチは声明で、米経済の回復ペースは他の多くの先進国を上回っていると指摘。米成長率は、2014年は2%、2015年は3.1%、2016年は3%になるとの予想を示した。また、米連邦準備理事会(FRB)によるぜロ金利政策解除時期は2015年半ばになるとの見方を示した。
一国の信用格付けは債券の安全性を見る上で重要です。ソブリン格付けでは調査力からみて信用をおけるのは、フィッチ・レーティングス、ムーディーズ、S&Pの3社です。そのうちS&Pだけが3年前にアメリカの格付けをAAAからAA+に引き下げています。私はこれを「ミス」だと申し上げてきました。何故はっきりミスといえるのか。
私の著書が出版される直前の11年7月にアメリカ議会が大混乱した「財政の崖」問題を巡って、S&Pはそれが政争ではなく深刻な財政危機だと見誤ったのです。その後崖が来るたびに私が何度も何度も「たとえ本当に利払いや償還が延期されても、そんなものは単なるスリップダウンで、ノックアウトではない」と言い続けたあのバカ騒ぎです。先日コメント欄で書かれていたダイヤモンド・オンラインでの私の連載でもそのことを書いています。
その時にS&Pはアメリカの財政赤字の将来見通しの数値を100兆円も計算間違いをしてそれを財務省などから指摘され、発表からわずか2週間後に会長の首が飛びました。それでも挙げたコブシを下ろさずに、いまだに「ダウングレードは間違っていなかった」と言い張ってAA+にしたままです。今後またどこかで「財政の崖が・・」とか言い出したら、みんなで笑い飛ばしてあげましょう(笑)。
先ほどの引用にありましたが、フィッチ・レーティングスは将来のアメリカ経済の成長力見通しを3%程度と見通しています。証券会社のイケイケ見通しよりも常に物事を慎重に見るクセのある格付け会社の見通しのほうが、信頼がおけそうです。ではその妥当性を私なりに見てみます。
それぞれの国の経済にはその国が潜在的に持っている潜在成長率というものがあります。それはまず2つの指標で計られます。
1. 労働人口増加率
2. 資本増加率(設備など)
そして同じ一人の労働者が生産性を上げれば経済にはプラスアルファを生みだせます。設備も同じで、設備の生産性が高くなればプラスアルファを生み出せます。そこで上の2つに加えて
3. 2つの要素の生産性向上率
これら3つの足し算が一国の潜在成長率と言われる指標です。IMFが見ている今後5年ほどのアメリカの潜在成長率の見通しは2.5%程度で、日本は0.7%程度です。アメリカと日本は仮に資本の増加率や生産性の要素に違いがないとしても、労働人口の増加率がかたやプラス、かたやマイナスという、いかんともしがたい差があります。安倍政権が女性の労働参加を前面に取り上げているのは大いに評価されてしかるべきです。
加えて、シェール革命の影響については、今後アメリカにかなりのプラスの影響をもたらすものと思われますが、大和総研がそれによる将来の潜在成長率への寄与はプラス0.3%と推定数値を出しています。数字は小さく見えてもとても大きなインパクトを持っています。それを単純に加味すると日米の潜在成長力差は2%を超えてくることになります。IMFがそれをどの程度加味しているは不明です。
今後の成長率はここで示した潜在成長力に現在は想定できていないイノベーションによる生産性向上や競争力を足し引きし、さらに景気循環や世界経済の動向などを織り交ぜた数値になります。私はベンチャービジネスの大きさと幅の広さが、今後のアメリカに大きなプラスアルファをもたらすと見ています。とすると先ほどのフィッチ・レーティングスの経済見通しである3%程度の成長は、十分に実現可能な数値に思えます。
アメリカ
IMF見通し2.5%+シェール革命0.3%+イノベーション?=3%程度
一方日本はどうか。
IMF見通し0.7%+アベノミクス?+イノベーション??=0.7%±?
アベノミクスは不成功の確率もみておく必要があるため±と書きました。
ということでひとまず潜在成長力の観点からみた日米の将来の成長力較差は、かなり大きいと言えます。
国債の安全性を考える際に最も直接的に重要な債務残高や返済能力については次回に述べることにします。
何十年も先の事はわかりませんが、しばらくはアメリカ経済が有利なのは間違いないでしょう。林先生がご指摘された通りだと思います。
個人的な意見ですが、アベノミクスの失敗は確実だと思っています。アベノミクスのコンセプトを思い出してみますと、まずは輸出促進とバラマキによる景気回復、それによる貿易・経常収支の改善と日銀の国債大量買取による財政問題の先送りといったとこだと思います。
経済の前提条件として、景気を引っ張るほどの輸出産業の生産力があることが前提の経済政策ということになります。しかし、生産の海外シフトと労働人口減少を相当に過小評価していたので、肝心な輸出が増えていきません。おまけに、消費税増税して消費が落ち込んでるはずなのに、ほとんど貿易収支は改善せず、経常収支は更に悪化。もともと博打的政策なのに、既に前提條件からして間違っていました。これでは成功するはずがありません。
景気回復優先で消費増税を先送りすべきという意見もありますが、それはアベノミクス失敗の修正にはなりません。消費増税を見送ったところで、景気を引っ張るはずの輸出が増えるわけではないからです。むしろ、消費増税10%になることを前提に考えられていた財政の長期計画が完全崩壊です。経常赤字転落寸前で、はたして先送りできるか疑問です。先送りして、様々な財政上の問題がゾロゾロ出てくると予想します。黒田総裁が懸念してる通りだと思います。
アベノミクスが失敗確実な状況で、日本国債は安全と言い張るのは無理があると思います。まあ、実質、そうとうな価値の低下は避けられないのではないでしょうか?
経済政策を成功させるための前提條件を間違った認識をしていたアベノミクス。まず成功の可能性はないと思います。失敗することを前提とした予測と行動が必要だと思います。
ドル転のおかげで120万円ほど現時点で差益が出ました。今は資産の60%程がUSDですが、今月来月で80%程度まで比率が上がる予定です。
95%まで行きたいところですが、日本円で持たなくてはいけないものもあり、そこまでは行けません。
まだ年末か年始に頃合いをみて2014年の総括をしたいと思います。
話は変わりますが、最近アベノミクスはなんだか破綻までの時間稼ぎに見えて仕方がありません。
国債が破綻するのはもう分かっていて、破綻する前にすべて日銀がかぶる作戦なんじゃないかって勘ぐってしまいます。
破綻後を見据えて出来るだけ国の資産を保全する作戦。
「貯蓄から投資へ」というかけ声やNISAも、GPIF改革も、なんだかんだと国債から離れていって保全する・・・そこまでやってくれてるとうれしいですが(笑)
こんにちは。先日、私が利用している証券会社の上席クラスの人と話をした折りに、「私もアベノミクスは失敗に終わると思っています。」との意見が初めて聞かれました。私の投資行動は「日本の危機に備える」ことを根拠にしていることは伝えていて、ドル転→米国債券購入予定に対しても賛同されました。業界内部だからこそ、「かなりヤバそう…」な空気を直に感じているのかもしれません!
証券会社の上席の人もそんなこと言ってますか・・・
ただ、証券会社のエコノミスト達も相当に生産の海外シフトと労働人口減少の影響は過小評価してましたよね。多少はポジショントークがあったにしろ、貿易・経常収支の予想の外しっぷりを見ると、安部政権の経済ブレーンと同じ誤認をしてたように思います。最近になってやっと、日本の経済構造の変化を認め始めたくらい。何でも、海外の投資家からJカーブ効果はどうなってるのだと問い合わせが相次いだとの話を耳にしました。海外の投資家にもアベノミクスの能書きと同じことを説明していたようです。
どうもチャート解析とかは熱心ですが、日本経済の実態がどうなってるのかという意識を持ってる方は少なかったのではないでしょうか。
こちらに書き込みしている皆さんは、
アベノミクスが失敗すると見ている人が多いようですね。
もし、アベノミクスが失敗すると、
日本の経済はどうなるとお考えでしょうか。
株安、債券安、通貨安のトリプル安でしょうか。
私は、アベノミクスが失敗した場合は、
スーパーインフレで、資産価格(株、不動産)が
上昇すると思っています。
(為替はキツい円安)
また、アベノミクスが成功した場合には、
マイルドなインフレで、資産価格が
上昇すると思っています。
(為替は緩やかな円安)
つまり、どこまで上昇するかは分かりませんが、
どっちにしても資産価格は上昇すると見ています。
よって、私は現在、資産の大部分を日本株で持っています。
そして、米国長期金利が魅力的な水準まで上昇すれば、
米国債を購入しようかと思い描いています。
さて、うまく行くでしょうか。
恐れ過ぎず、欲張り過ぎず、
楽しみながら、のんびりと生涯現役で投資を続けようと思います。
みなさんの見通しをご教示頂ければ幸いです。
鉄鋼の男さんはアベノミクス失敗で株価が上がるといっておられますが、私は次のように予想します!(^-^)
アベノミクス失敗と言うことは給与が延びず消費が凹みます!当然給料も上がらず内需中心の企業は倒産が相次ぐと思います!倒産は負債を産みますので金融システムがバランスを崩すと思います!また日本国債は外人の空売りに合うと思いますが規制を世界中で書けるのではと思います!これだけGDPが大きな国をそのままにしておくとは思いません。ただし倒産円は売られインフレには間違いなくなると思いますが、日本円に対しての不動産価値というか物の値段は上がりますが、基軸通貨ドルに対してはさほど上がらないのではと思います
日本が復活する頃に外人が安い日本の企業や土地を買うんじゃないかと、
つまりは初めからどうなるか分からない資産を持っているより、外貨に変えておいた方が確実に非難できると思います!海外比率の多い会社は生き残る物もあると思いますが、損失補填の売りが出ないとは言い切れないのではないでしょうか?(^-^)
ジンバブエは確かに国内通貨に対しては値上がりしてますが、果たして対ドルで上がってますかね?
林先生のご意見お願いします~(^-^)
アベノミクス失敗の暁には、資産価格の上昇を見込んでおられるとのこと。まあ、インフレになって、株も不動産も上がるという読みなのでしょうか。しかし、銀行が保有している日本国債は、間違いなく暴落することは、ご理解いただけるかと思います。そうなると、銀行の資金ポジションが、悪化することは、避けられませんね。規制にも引っかかってくるレベルでしょう。その改善の為に、一番、簡単にできることは、保有株式の売却です。株式の需給関係は、当面、大きく悪化することは避けられないはずですが。簡単に言えば、大暴落を起こすはずですが。
アベノミクス失敗の際には、インフレとなり、
資産価格上昇、債券安、円安になる、というお考えですか。
私の書き方に問題があったかも知れません。
「アベノミクス失敗によって株高となる。」
という文脈に回答して頂いた形になっているようですね。
私の考えの本質は、アベノミクスの成功、失敗に関わらず、
ある時点までは(成否が明らかになるまでは)、
現在の水準よりも資産価格が上昇する、ということです。
もちろん、未来のことは分かりません。
生涯現役で、ストレスフリーな投資を続けようと思っています。
アベノミクス失敗の際には、
債権安、株安になるというお考えですね。
日本国債の暴落、ということですが、
暴落とは、どのくらいの水準を念頭に置かれているでしょうか。
例えば、10年債利回り7%ぐらいまで上昇するとお考えでしょうか。
また、株式は大暴落ということですが、
その起点となる水準は、現在の株価水準よりも上というお考えでしょうか。
(つまり、今後は株価上昇ということでしょうか。)
私の考えの本質は、ただの個人投資家さんへの回答のとおり、
アベノミクスの成功、失敗に関わらず、
ある時点までは(成否が明らかになるまでは)、
現在の水準よりも資産価格が上昇する、ということです。
これは、私なりの大局観です。
日々の動きを見ながら、考えを微調整して、
楽しく投資を続けようと思っています。
現実的には長期金利が3%程度でも財政危機だそうです。黒田日銀が必死に国債を大量に買いまくり、1%未満の超低い長期金利にしているのは、日本の限界は天井が非常に低いからでしょう。私も日銀の異次元緩和の目的は、景気刺激策というより財政ファイナンス目的だと思っている理由がそれです。そして、林先生が以前に指摘されたように、異次元緩和により健康状態を図るのにかかせない長期金利という体温計を破壊してしまいました。危機が迫っているかどうかわからなくなってしまいました。
意図的なのか、知らないのかはわかりませんが、日本の長期金利は低い。だから大丈夫、財政危機なんてのは嘘だという主張は間違いです。限界の天井が欧米よりずっと低い。しかも、体温計が壊れている為に、危機の進行具合もわかりません。
私も国内資産で危機に備えるというのは非常に難しいと考えています。日本は少子高齢化の人口減少社会です。不動産も余程立地条件が良くないと、流動性が低いデメリットの方が大きいかもしれません。日本株も、財政問題で大騒ぎの中で活況というわけにはいかないでしょう。現時点で最もリスクが低い金融商品は米国債以外にはないと思います。