アメリカ国債と日本国債のリスクを比較するにはまず前提となる経済力に関して見ておく必要があります。前回は両国の潜在成長力には大きな差があるというお話を差し上げました。最後の部分をおさらいしますと、
アメリカ
IMF見通し2.5%+シェール革命0.3%+イノベーション?=3%程度
日本
IMF見通し0.7%+アベノミクス?+イノベーション??=0.7%±?
そして(?)となっているイノベーションについても、ベンチャービジネスの状況を見ると、日米の差はさらに開きそうだ、と申し上げました。
今回は日米の国債の安全性を、債務残高と返済能力から見てみましょう。政府の債務残高のGDP対比はOECDのEconomic Outlookにある2013年末ベースによりますと、
アメリカ= 106%
日本 = 232%
累積債務の返済能力はどう推定するのかと申しますと、まずはGDPの大きさから見ます。その理由を簡単に説明します。
GDPの6割を占める最大項目である消費の額に消費税率を掛ければおよその消費税収入額となります。(厳密には非課税のものが多いこともあり金額は大きく違いますが、傾向はちがいません。)そして消費の裏付けとなる所得に税率を掛ければ所得税収になります。法人税も利益に税率を掛けるのですが、両者ともにおよそGDPに比例的に動きます。
そのベースとなるGDPは毎四半期ごとに発表される実質GDPではなく名目GDPのため、デフレはGDPを縮小させ税収を縮小させる効果を持ちます。ですのでインフレ率が常に日本を上回るアメリカの返済能力はより高くなります。日本はこれまでデフレが長く続いたため返済能力は実は年々小さくなっていったのです。ちなみに7年前に515兆円だった名目GDPは、直近(4‐6月期の年率換算)で487兆円。5.4%も減少しています。
ということは、日本のように名目GDPが減ると債務が増加しなくともGDPに対する債務比率は増えてしまうのです。債務返済の原資となる名目GDPはなんとしても増やさなければいけません。その意味である程度のインフレが必要という政策の方向性は間違っていません。
しかし何度も申し上げ、山ちゃんも言っていましたが、賃金が増えてのディマンドプルインフレならみんなが幸せになれても、賃金が増えないのに物価が上がり消費税が上がるのは単なる不幸の連鎖なのです。私を含めベースアップのない世界に暮す人達は、物価上昇、消費増税に対しては財布のひもを締めるしかないのです。
そしてこの不幸の連鎖は高齢者を中心に預貯金の食いつぶしにつながり、日銀が買わなくても預金を取り崩された銀行が国債を売ることにもつながるのです。
もう一つ大事なことがあります。
ここんとこ、テストにでますよ!古いか(笑)
インフレで税収が上がったとしても、物価や人件費が上昇すれば財政支出も増えてしまい、財政健全化にはつながらないことです。
特に日本の場合、財政支出の大きな割合を占める社会保障費は医療・介護など人件費の割合が大きいため、インフレと賃上げで財政収支は悪化するというジレンマを抱えているのです。
このことは将来ハイパーインフレで国が借金の実質踏み倒しに成功した暁にも、財政の健全化は容易には達成できないということにもつながるので、テストに出るほど重要なのです。
こうして一国の経済を分解したり、潜在成長力までしっかり見たりすると、日米の国債のリスク差は今後も間違いなく拡大の一途をたどるのがよくご理解いただけると思います。
さて、私は以前から「アメリカに失われた10年など来ない」と言い続けてきました。リーマンショックの吸収力の高さがそれを証明しています。それでも、「現在の先進国経済は中央銀行によるカンフル剤注射で生きながらえているので、それをなくせばまた不況に戻る」と言う人がいます。先進国を一緒ごたに考えてはいけません。アメリカは10月で緩和策を停止することが決定しました。それから半年後には金利の引き上げが始まるかもしれません。欧州は周回遅れでこれからが中央銀行の勝負どころだと言われています。
それに対して日本はどうか。すでに手を出し尽くしてしまっています。なのに「まだ買えるものはいくらでもある」と、大本営発表を続けている方がいます。しかしその効果はチョー怪しい。このところの円安はこうした潜在成長力の差から来る安全性の差も大いに反映しているのだと私は思っています。
11月に7-9月期のGDPが発表されると12月には消費税の再値上げと来年度予算でてんやわんやになるでしょう。できれば目白のおっちょこちょいさんやたかさんのようにドルを握りしめて、アベチャンとクロチャンのお手並みを拝見といきたいところです(笑)
アメリカ
IMF見通し2.5%+シェール革命0.3%+イノベーション?=3%程度
日本
IMF見通し0.7%+アベノミクス?+イノベーション??=0.7%±?
そして(?)となっているイノベーションについても、ベンチャービジネスの状況を見ると、日米の差はさらに開きそうだ、と申し上げました。
今回は日米の国債の安全性を、債務残高と返済能力から見てみましょう。政府の債務残高のGDP対比はOECDのEconomic Outlookにある2013年末ベースによりますと、
アメリカ= 106%
日本 = 232%
累積債務の返済能力はどう推定するのかと申しますと、まずはGDPの大きさから見ます。その理由を簡単に説明します。
GDPの6割を占める最大項目である消費の額に消費税率を掛ければおよその消費税収入額となります。(厳密には非課税のものが多いこともあり金額は大きく違いますが、傾向はちがいません。)そして消費の裏付けとなる所得に税率を掛ければ所得税収になります。法人税も利益に税率を掛けるのですが、両者ともにおよそGDPに比例的に動きます。
そのベースとなるGDPは毎四半期ごとに発表される実質GDPではなく名目GDPのため、デフレはGDPを縮小させ税収を縮小させる効果を持ちます。ですのでインフレ率が常に日本を上回るアメリカの返済能力はより高くなります。日本はこれまでデフレが長く続いたため返済能力は実は年々小さくなっていったのです。ちなみに7年前に515兆円だった名目GDPは、直近(4‐6月期の年率換算)で487兆円。5.4%も減少しています。
ということは、日本のように名目GDPが減ると債務が増加しなくともGDPに対する債務比率は増えてしまうのです。債務返済の原資となる名目GDPはなんとしても増やさなければいけません。その意味である程度のインフレが必要という政策の方向性は間違っていません。
しかし何度も申し上げ、山ちゃんも言っていましたが、賃金が増えてのディマンドプルインフレならみんなが幸せになれても、賃金が増えないのに物価が上がり消費税が上がるのは単なる不幸の連鎖なのです。私を含めベースアップのない世界に暮す人達は、物価上昇、消費増税に対しては財布のひもを締めるしかないのです。
そしてこの不幸の連鎖は高齢者を中心に預貯金の食いつぶしにつながり、日銀が買わなくても預金を取り崩された銀行が国債を売ることにもつながるのです。
もう一つ大事なことがあります。
ここんとこ、テストにでますよ!古いか(笑)
インフレで税収が上がったとしても、物価や人件費が上昇すれば財政支出も増えてしまい、財政健全化にはつながらないことです。
特に日本の場合、財政支出の大きな割合を占める社会保障費は医療・介護など人件費の割合が大きいため、インフレと賃上げで財政収支は悪化するというジレンマを抱えているのです。
このことは将来ハイパーインフレで国が借金の実質踏み倒しに成功した暁にも、財政の健全化は容易には達成できないということにもつながるので、テストに出るほど重要なのです。
こうして一国の経済を分解したり、潜在成長力までしっかり見たりすると、日米の国債のリスク差は今後も間違いなく拡大の一途をたどるのがよくご理解いただけると思います。
さて、私は以前から「アメリカに失われた10年など来ない」と言い続けてきました。リーマンショックの吸収力の高さがそれを証明しています。それでも、「現在の先進国経済は中央銀行によるカンフル剤注射で生きながらえているので、それをなくせばまた不況に戻る」と言う人がいます。先進国を一緒ごたに考えてはいけません。アメリカは10月で緩和策を停止することが決定しました。それから半年後には金利の引き上げが始まるかもしれません。欧州は周回遅れでこれからが中央銀行の勝負どころだと言われています。
それに対して日本はどうか。すでに手を出し尽くしてしまっています。なのに「まだ買えるものはいくらでもある」と、大本営発表を続けている方がいます。しかしその効果はチョー怪しい。このところの円安はこうした潜在成長力の差から来る安全性の差も大いに反映しているのだと私は思っています。
11月に7-9月期のGDPが発表されると12月には消費税の再値上げと来年度予算でてんやわんやになるでしょう。できれば目白のおっちょこちょいさんやたかさんのようにドルを握りしめて、アベチャンとクロチャンのお手並みを拝見といきたいところです(笑)
消費増税見送りは難しそうなので、景気下支えとかいって追加緩和と懲りずに財政出動をしそうな感じがします。市場がどこまで日本を安全と見るか恐ろしい感じがします。まるで黒ひげ危機一発的な金融政策になりそうです。
国債の場合、個人の借金と違って、完全返済の必要はない。償還のたびに、借換えていけばよい。
借換債の引受先さえ見つかり続ければ問題は無い。
メガバンク、GPIF、個人(個人向け国債の場合)など、諸外国に比べて、国債を選好する度合いは大きい。
将来のキャッシュフローの見通しだが...
1.相続税の増税 →税収の増加要因
2.相続税回避 →消費増による消費税収増加、企業増収による税収増
3.少子高齢化により、公共サービス縮小可 →公務員の頭数減らせる
4.少子高齢化による人口減 →公的年金負担減
など
国の歳入と歳出は、良化する可能性がある。
なお、アメリカの場合は、オバマケアが本格稼働することによる影響を分析して、盛り込んでおかなくてはいけない。
> できれば目白のおっちょこちょいさんやたかさんのようにドルを握りしめて、
> アベチャンとクロチャンのお手並みを拝見といきたいところです(笑)
本当ドルを握りしめることになるとは人生の予定にはありませんでした(笑)
が、林さんのおかげでとてもストレスフリーで気分良く毎日を過ごしています。
最近ブログコメント欄で今後の見通しなどの議論が活発ですが、ドル→米国債路線に決めてからはこの手の議論に左右されずにいられます(失礼!)
為替相場が動き出してから、ストレスフリーという観点からフォーカスが少し外れているようですね。
私は、
1. 「ドル→米国債」の安定感
2. この決断に至るまでに投資の断捨離が出来た
と思っています。
林さんの本で 1. の理論的な支柱が出来、その上で 2. が断行でき、ストレスフリーになりました。
国のバランスシートで考えて国内の国富がマイナスなった時点で、外国からファイナンスする必要があります!この低金利で借りれますかね~(^-^)
おまけに国の使うお金が減ると今度はGDPが減ることも計算に入れてないのでは?
生活不安がでると消費はもっと落ちてますます負のスパイラルだと思いますよ~(^-^)
今回の林先生のコメントが一番わかりやすいですねヽ(^o^)丿
こんにちは。
私は、やはり、「デフレの正体」「里山資本主義」等の著書で有名な藻谷浩介氏が言っていることが正しいと思います。
結局、デフレで何の問題があったの?
(いやそれどころか、日本の場合、通貨が安定していた)
という点に尽きるわけで、確かに給与は、上がらないけど、ほとんどの日本人は、何らかの仕事につけたし、老人もささやかながら、生活できたし、それで良かったのでは・・・ないでしょうか。
おまけに、円高を利用して、仕事に就けないような若者だって、海外旅行をしているし、世界から見たら、あり得ないほど裕福です。
日本は、確かに財政赤字が大きいのは事実です。ただし、それは、ほとんど国内貯蓄から賄っているのが現状で、下手な支出をしなければ、金利も安定させることが可能です。
この金利さえ安定させれば、破綻は当分先の話になりましょうし、
そうこうしているうちに、国内の個人財産だって、いずれは寿命という形で、若者や国庫に還元されていくはずでしょう・・・。
なぜ、今の時の政府が、危険極まりないインフレ政策をとるのか、本当に理解に苦しみます。
個人的には、何も考えず、日本の円で持っていられた現状は、本当に幸せだったと思ってますので、本当に残念です。
しかし、こうなった以上、できる限り外貨に換えるなどせざる得ないでしょう。
別のところで、私の書き込みに返信をいただきました。本来、そちらに書き込むべきでしょうが、こちらに付けさせていただきます。悪しからずご了解ください。
ジャック・アタリという人物だったかと思いますが、国家の財政問題について、これまでの歴史を調べ、結論を以下のように記していました。ご紹介します。
公的債務の解決策として、歴史的に八つの方法しかない。増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、外資導入、デフォルト、以上です。
Owlsさん
に出すべきでした。お詫びして訂正させていただきます。
たぶん、アベノミクスが始まる前にチラホラ見かけたメガバンクトップからの国債へ対する不穏当な発言からすると、国債を国内の貯蓄で消化し続けるという体制は限界だったのでは?
遅かれ早かれインフレで政府債務の圧縮に動くのは避けられなかったと思います。何にせ、稼ぐ人が減少し、使うだけの人が増加していくのですから。いつまでも同じことができるわけではないという事だと思います。
私はアベノミクスには賛成できませんが、だからといって、やらなければ安泰だったという話にも賛成できません。膨張する政府債務を無視し続ければ、いずれは限界が来るからです。無視を続ければツケは大きくなる。大きくなったツケは通常の政策では処理できなくなる。そんな感じだと思います。
国家が保障しているからである。
これは、実際にギリシャのように破たんすることがあっても、経済学の教科書や金融の初歩のテキストにも載っていることである。
そして、公的年金のファンド、生命保険のファンド、資産配分型のファンド、民間の年金のファンド、その他、安定運用を掲げる諸ファンドは、その保有資産の一定割合を国債で運用するようにしている。
つまり、この意味では、国債というものに対する需要があるわけだ。
そして、この意味では、需要に対して、国が必要なものを供給しているとみることが出来る。
つまり、この部分に限っては、国債とは借金ではないのである。
国家が提供する、金融上のインフラの一種と見ることができるわけである。
従って、国債残高の全額を借金と考えるのは、実は、シロウトなのである...
>生活不安がでると消費はもっと落ちてますます負のスパイラルだと思いますよ
ここだ。
日本国内で買い物をするのは、日本人だけではない。
観光で日本にやってきた外国人も、日本国内で買い物をする。
そして、日本に観光にやってくる外国人は年々増えている。
これは、データが、キチンと出ている。
そして、円安になればなるほど、増えるのは当然だ。
しかも、日本人より金をたくさん使う。
せっかく来たのだから、楽しみたいから、そうなる。
日本に1千万人の外国人観光客が来たら、1,500万人相当の買い物をする、と見ることも、大目に見積もれば可能だ。
というわけで、外国人観光客の購買力を考えないと、議論にならず、ナンセンスである。