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日本の金融政策の危うさ その4.日本の住宅ローン

2019年12月05日 | 日本の金融政策

  ある方から「新しい著書の出版はどうなっているのか」という問い合わせをいただきました。ゆっくりと進んでいます。

  実は今年の夏前にすでに出版社は決まっていました。ラッキーなことに今回も最初に持ち込んだ出版社から、「出版をしたいので、話を進めたい」との回答をいただきました。

   ただ私を担当してくださる編集者の方がある理由から超多忙で、少し時間がかかるかもしれないとのこと。私は特に急がなくてはならない都合があるわけでもないため、「おまかせします」というスタンスで臨みました。

   それが約2か月くらいたつと、「打ち合わせをさせていただきたい」と反応があり、いよいよかと出かけて行きました。驚いたことに私の原稿を詳細に把握したうえで、すべてプリントアウトし、赤ペンを入れてくれていました。彼はすでに細部にわたるチェックを終えていたのです。赤ペンは全体構成から言葉づかいにいたるまで実に詳細にわたっていました。私は突然大きく進展したためおどろきました。そして全ページのコピー1部を私に渡し、大事なポイントの数々を2時間くらいかけて細かに話し合いました。彼からの修正提案などは驚くほど的を射ていたため、私からコメントあるいは反論するようなことはほとんどなく、充実したミーティングだったとの印象を持ちました。

   私は正直申し上げて、この方ならすべてお任せできると、とても安堵しました。出版の作業は担当される方に大きく依存するからです。ところがそれからしばらく進展が止まってしまいました。その間、「遅れて申し訳ない」とのメールはあったのですが、11月下旬になってやっと「再起動します」と連絡をいただきました。

  出版社はみなさんがきっと意外な感じを受ける社ですが、今回の「幸せ投資」という投資本としては若干キワモノっぽい趣旨からすると、私にはピッタリとくる出版社なのです。出版時期はまだ不明確ですが、みなさんどうぞご期待ください。以上がみなさんへの経過報告です。

 

  地銀のシリーズに戻ります。かぼちゃの馬車で万事休すとなったスルガ銀行の不動産融資問題から、日本の不動産ローンのおかしな点などを指摘します。大事な教訓が含まれていますので、しっかりお読みください。

   さて日本では不動産ローンで担保をとっているにも関わらず、返済に窮すると銀行は担保を差し出しても許してくれません。不動産の価値は担保流れの処理、つまり売却をする場合買い手が強いため、多くのケースで担保物件の価値は残存ローン額より少なくなります。すると不足分の返済を継続する必要があります。しかし世界では不動産を差し出すことでそれ以上の返済からは免れるノンリコースローンが一般的です。

   そればかりではなく、日本では担保を取った上に連帯保証人を要求するのがまかり通っています。この日本独特の慣習は絶対になくさなくてはいけないと思っています。

   そもそもみなさんは保証人と連帯保証人の違いをご存知でしょうか。連帯保証人のほうが本人と連帯して返済保証をするので、責任は小さいと思っていませんか。それは大きな間違いです。連帯保証人のほうがはるかに大きな返済義務を負っています。

   たとえば借り入れた本人が経済的には返済に窮していないのに返済を拒否したとします。するとただの保証人であれば「まずは本人に払わせろ」と言えるのですが、連帯保証人は借り入れた本人に資産があり、かつ十分な収入があっても、拒否したらすぐに肩代わりする義務が生じます。そんなばかな、と言っても後の祭り。連帯保証をしたら最後、とことん借金取りに追われることになるのです。ゆめゆめ連帯保証などしないことです。

   話が逸れましたので、戻します。

   そもそも日本でも欧米でも「おカネ」の価値がなくなりつつあると私は思っています。「世界は欲しいモノにあふれている」というタイトルのNHKBSのTV番組があります。私はそのタイトルを聞くたびに、もう「欲しいモノなんかないよ」。逆に「世界は貸したいおカネにあふれている」と思ってしまうのです。つまりおカネは欲すればいくらでも手に入る世の中だと感じるのです。どういうことか説明します。

   身近なところで言えば、企業を経営されている方なら、銀行が「借りてくれませんか」と頭を下げてくる場面に数多く出くわしていることと思います。昔とは立場が全く逆転してしまっています。その銀行に預金が潤沢にあるのに銀行は借りてくれと言ってきます。すると古くから付き合いのある経営者は定期預金するほど余裕があるのに、将来資金繰りに窮する場面を考えて、いりもしないお金をお付き合いで借りるということがままあるのです。特に相手がメインバンクであればおいそれとは断れないのでしょう。

   先日もコメント欄で山ちゃんが、欲しくもない投信を買わされそうだと書かれていました。それに対し私は山ちゃんに、「投信の購入を断るのを怖がりなさんな」と申し上げました。すでに現状は「世の中は貸したいおカネにあふれている」からです。

   そして銀行も貸す資金の調達には困りません。銀行に貸したい預金者はいくらでもいて、金利などほぼゼロなのに預金として銀行に貸しているのです。そう、あの1800兆円にのぼる日本人の金融資産がその原資です。銀行はほとんどコストのかからない資金調達が可能になっています。

   しかし地方に行くと県庁所在地ですら商店街はシャッター商店街になっているところが多く、中小の企業や商店は後継者不足により存続が危ぶまれ、地銀は貸出先に窮しているのが実態です。それが例えばスルガ銀行による怪しいかぼちゃの馬車へのローンにつながってしまうのです。一方預金者も少しでも多くのリターンを得ようと、あのインチキ商法のジャパンライフに引っかかる人が多数出てしまっています。

つづく




  

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2 コメント

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無題 (Jake Jack)
2019-12-07 19:45:52
<<日本では不動産ローンで担保をとっているにも関わらず、返済に窮すると銀行は担保を差し出しても許してくれません。

こんなことするから、銀行からの借り手がいなくなるんでしょうね。
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Unknown (しこ)
2019-12-17 22:55:19
≫「世界は貸したいおカネにあふれている」と思ってしまうのです。つまりおカネは欲すればいくらでも手に入る世の中だと感じるのです。

増税後のキャッシュレス(キャッシュバック)でも、すぐに数円戻るのが怖く感じます。

わざとお金を使わせるのか?お金の価値が下がっている印象です。でもインフレではない?

株価も異常だし、現金保有でも怖いので、仕方なくドルに変えています。
ただ、今が円安なのか円高なのかもよく分からなくなってきました。

来年上旬あたりに何かしら起こりそうな気もします。
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