世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

鑑真が住職であった揚州の大明寺の近くには痩せた西湖という名の湖もあります(中国)

2012-04-08 08:00:00 | 世界の町並み
 ユーラシア大陸の西の端にあるのがポルトガルのロカ岬でした。大航海時代には、この岬を眺めてアジアに向けて船出をしていった舟も多かったと思いますが、ヨーロッパ人にアジアへの夢を抱かせる源となったのがマルコポーロの東方見聞録です。マルコポーロの旅は陸のシルクロードをたどったものですが、中国滞在中に高官を務めた都市が揚州です。今回は、日本にも関連の深い鑑真和上の出身寺院の大明寺の周辺を中心に紹介します。

 揚州は、上海の西の揚子江の北岸に位置し、上海から列車で1時間ほどの鎮江まで行き、バスで揚子江に架かる橋を渡って1時間ほどで到着します。7年ほど前までは、揚子江をフェリーで渡っていて時間がかかったそうですが、橋ができた現在はバスはあっけないくらい短時間で向こう岸に着いてしまいます。京都市より少し広いぐらいの市域を持っていて、鎮江からの長距離バスが着く市の南西部から大明寺の東北部までは市内バスで1時間ほどもかかります。このバスは市の中心部を通り抜けますが、緑や水が多くて、時間があれば途中下車をしたくなる景色がたくさんあります。

 
 大明寺は、バスを降りて急な坂を上がった所にあって、巨大な九重塔が出迎えてくれます。鑑真の出身寺院ということで期待をして訪れたのですが、鑑真が創建した日本の唐招提寺に比べると少々期待はずれでした。中心となる建物の規模も小さく、中には塔を初め新たに建てられたものも目立ち、仏像も見るべきものが無かったことによるかもしれません。中国では、文化の違いなのでしょうが、古色蒼然という仏像は見かけません。仏像は、当然ながら、信仰の対象で、その対象は金色に輝いている必要がある、という考え方のようで、とにかく金ぴかなのです。信仰が現役と感じたのは、大明寺の後方には、広大な土地に僧侶の教育機関のような施設があり、観光だけの寺院ではなさそうでした。

 
 金ぴかの仏像が多い中国ですが、鑑真記念館にあった鑑真像は、古めかしい色をしていました。1973年に唐招提寺にある像のレプリカを安置したようです。さらに、唐招提寺と似ていると思ったのは、屋根の両端に乗っている鴟尾ですが、どうもこれは中国がオリジナルで、その意匠が日本に伝わったようです。もう一つ、奈良遷都1,300年の時に会場に遣唐使船の模型が置かれていましたが、そっくりの模型が飾られていました。おそらく、奈良の模型は、大明寺の模型も参考にしたか、オリジナルの資料が同じものなのでしょう。

 大明寺の南側には、緑と池の広大な公園があり、名前を痩西湖公園といいます。杭州にある世界遺産の西湖に似ているけれど、細長い、つまり痩せた西湖という命名です。大明寺や痩西湖公園の一帯は水と緑が南北に3km、東西に2kmほど広がる地域で、痩西湖公園自体も500mほどの幅で2kmほど南北に分布しています。広い公園内には、トラムが走っていて、入り口から池のそばの、公園の中心地まで歩かなくて行けます。ただ、南北に長い割りに出入り口が3箇所なので、出口を探すのにちょっと焦ります。中心地には、五亭橋や白塔などもあり、現地の人たちもこの周辺に集まってきているようです。池には遊覧船が浮かび、回廊つきの庭園も造られています。地元の人々にとっては、子供や家族と一日遊ぶのに好都合な場所の一つなのでしょう。

 
 五亭橋は痩西湖に架けられた橋の一つですが、中央に5つの亭を持っていて、橋と言うより湖の上に作られた東屋といった感じです。池の中にある島から眺めると、なかなか典雅な形をしています。白塔のほうは北京の北海公園のものを真似て作ったということで、急いで作ったので最初は塩で作ったという逸話のあるものです。この塔、遠くから見ると、なんとはなく徳利に見えてしまいます。

 鑑真は律宗の開祖で、わが国に授戒のシステムを伝えた僧です。戒律は僧侶として守らなければならないルールで、日本に仏教が伝わった頃には重要性が認識されていなかったようです。奈良朝になり、その重要性が見直され、招聘を受けて、困難の末に来日した高僧が鑑真だったわけです。集団で生活をする人間の世界では、どのような場面にもルールが必要になるようで、IT分野でもしかりです。ネットにつないぐばあいも、プロトコルと呼ばれる通信手順に従わないと、何もできません。ちなみにプロトコルという名称は「外交辞令」という英語からきています。もちろん、この手順はパソコンなどのキホンソフトの中に組み込まれていて、利用者が意識することは少ないのですが。しかし、装置やソフトを作る人たちにとって、どのルールが採用されるかにより、有利/不利が生まれ、ルールを決める国際会議などでは火花が散るというわけです。


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