世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

伏見には酒蔵の町並みに加えて酒造りを支えた名水ゆかりの場所もあります

2011-05-01 08:00:00 | 日本の町並み
 山手線のすぐそばにありながら、昔の町並みが残されている根岸の町並み散歩のときに、甘党でなくとも、ちょっと一休みに好都合なところが、文学作品にも数多く紹介されている羽二重団子でした。一方、辛党の日本酒を代表する産地は灘五郷ですが、灘と人気を分け合う酒蔵の一つが伏見ではないでしょうか。酒造りを支えた名水にちなむ場所を含めて紹介します。

 酒蔵が並ぶ狭義の伏見は、京都市の最南端の伏見区に属していて、東海道本線こそ通っていませんが、南北に走るJR奈良線をはじめ、京阪、近鉄と3本の線路が伏見のあたりで東西から集まってきます。電車だけではなく、南を流れている宇治川は、大きく北に蛇行をして伏見に近づいた後に淀川に向かって南下していきます。物の輸送の主役が船であった江戸時代には、この宇治川と京都市内とを結ぶ高瀬川とを使った水運の港町としても発展したのが伏見でした。京都の喉のような場所として、昔から交通の要所でもあったわけです。

 
 伏見に名水が湧くのは、京都の東山から続く山塊が桃山丘陵で終わって、その伏流水が丘陵の南西になる伏見に良質の湧水をもたらしたのです。近鉄の桃山御陵前駅の東には、境内に良い香りの水が沸くことから御香神社と命名された神社があります。御香水の石碑もあり、竹ずつから流れる御香水をペットボトルに汲んでいる人も多かったのですが、良い香りがする?っといった感じでしたが。

 湧水があるのは神社だけではありません。中書島駅の近く、月桂冠の酒蔵と掘割を挟んだ西側にある長建寺には「閼伽水(あかすい)」という湧水があります。閼伽水とは、仏様にお供えをする水のことですが、こちらにも竹筒から湧水が流れていて、人間様もお相伴にあずかることができます。





 

 さて、伏見のお酒ですが、近江の酒米と伏見の伏流水、それに冬の寒さの厳しさが酒造りに適していたことから銘酒のふるさとになりました。生産されたお酒を運ぶ水運に恵まれていたこともプラスにはたらいたようです。兵庫県の奈だの酒は、六甲山系の硬水を使って作られることから、アルコール度数の高い辛口ですが、伏見の水は中硬度のため、滑らかできめの細かなお酒が特徴です。このために、このため京料理に合うお酒として洗練化されていったそうです。京阪の伏見桃山と中書島との間には、月桂冠の大倉酒造の酒蔵をはじめ、数多くの酒蔵が通りの両側に並んでいます。板塀についた黒かびの微妙な模様と、その上の白壁とが面白いコントラストで町の顔を作っています。特に、裏側の掘割側からの眺めは、水面に映った酒蔵が絵葉書的な風景を作っています。

 月桂冠の酒蔵から西に行くと、寺田屋跡があります。昨年はNHKの大河ドラマの影響で観光客がひしめいたようですが、ご存知「寺田屋事件」の舞台となったところです。寺田屋に投宿していた坂本竜馬が、幕府の捕り方に暗殺されそうになり、お龍さんの機転で命拾いをしたというものですが、この時には伏見のお酒を飲んでいたでしょうね。寺田屋に入ると、これが柱に着いた当時の刀傷ですとか、お龍さんが入っていたお風呂ですとかの説明があったようですが、竜馬が襲われた当時の建物は鳥羽伏見の戦いで焼失し、現在の家屋はその後に再建されたものだそうです。

 日本の名水というのは、灘の宮水は例外的で、硬度が100以下の軟水が多いようです。防府や松山で紹介した山頭火が好んだ名水も、大部分が軟水であったようです。一方、海外でミネラルとうたう場合は、一定量の硬度が必要なことが多く、フランスを代表するペリエの硬度は400近くあります。硬度の高い水は苦く感じ、飲みなれないと下痢をすることもあるようです。水に含まれる鉱物質は複数ありその比率もさまざまなので、特定の鉱物質に換算しますが、その換算方が各国で少しずつ異なる定義となっているようです。電子式の硬度計なるものがあって、スイッチで異なる定義の元での硬度が測定できるようです。硬度だけではなく、センサーなどの技術の発展で、pHや溶け込んでいる酸素や炭酸ガス濃度も簡単に測定できる遥ですが、水のおいしさはの最終的な判定を行うセンサーは、人間の舌なのでしょう。