世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

芭蕉の故郷の伊賀上野には忍者屋敷だけではなく土蔵造りの家並みも残っています

2009-04-19 10:18:54 | 日本の町並み
 奥の細道むすびの地は、町中に湧水のある大垣でしたが、奥の細道の作者の芭蕉は伊賀上野の出身です。伊賀と甲賀と並んで忍者の故郷でもあるので、芭蕉関連の施設の他にくノ一忍者による実演入りで忍者屋敷が公開されています。今回は、上野市駅の南に広がる土蔵造りの町並みもあわせて紹介します。

 伊賀上野は、三重県の西北に位置していて、2004年に旧上野市と周辺の町村が合併して伊賀市となった市の中心地です。JR関西線の伊賀上野から伊賀鉄道で7分ほど乗車すると、伊賀上野城や芭蕉関連の施設のある上野市駅に到着します。直線距離で2kmほど3駅の乗車なのですが、長方形の3辺を廻るような大回りをしています。この伊賀鉄道は、もともとは近鉄の支線でしたが、赤字続きのために切り離され運行だけを行う2種鉄道として(施設は3種鉄道として近鉄が保有)存続している鉄道です。

車体にくノ一忍者の顔を描いたりして存在感をアピールしようとしていますが、苦しい経営が続くようです。

 芭蕉関連の施設や忍者屋敷、それに伊賀上野城址は上野市駅の北側に、古い町並みは南側に広がっています。芭蕉翁記念館は芭蕉関連の資料の展示を、俳聖殿は芭蕉の旅姿を象徴的にあらわしたという2層の建物です。城址公園内に建てられてから70年ほどのようですが、少し古色も加わって、なかなか美しい建物です。

忍者屋敷は、市内にあった古民家を移築して、忍者屋敷に仕立てたようで、くノ一人忍者に扮して実演入りで解説をしてくれますが、どうも子供だましのようでいただけません。まさか、忍者が目立つピンク色の装束を着ていたとも思えません。ディズニーランドのアトラクションと思えばいいのかもしれませんが。

忍者の2大流儀は伊賀と甲賀ですが、この二つの地域は県こそ違いますが、峠を挟んで十数キロの距離しか離れていないのです。いわばご近所さんで、徳川と豊臣とに分かれて代理戦争をさせられたのですから忍者という商売も因果なものですね。

 駅の南の二之町通りあたりの町並みは、土蔵造りに虫篭窓がある家、

格子の連なる家、

それに古風な木彫りの看板のある家などがかなりの長さで町並みを作っています。

もちろん、虫篭ならぬ虫食い状態で近代的というか、薄っぺらな建物が侵食はしてきていますが、市街地の中心の商店街でこれだけの古い町並みが残っているのも、数少ないのではないかと思います。新しく侵食してきた建物の中にも、古くはありませんが、旧来の家並みとうまく溶け込んでいる店もあって、散歩して気持ちの良い町のようです。ただ、芭蕉や忍者の方が観光客を呼び込みやすいのか、観光パンフレットなどにもあまり宣伝されていないようです。

 忍者は、超能力の持ち主で、荒唐無稽の存在のように思われるのは、フィクションの世界がそのような虚像を作り上げたからであろうと思います。忍者の実像は、自然界の仕組みや人間の心理などを熟知して、それらをうまく利用して、常人では難しいような行動をこなした、職人集団だったのではないかと思います。そこには、自然を征服する西欧流の科学技術ではなく、自然と融合してうまく利用する東洋流の哲学が生きているように思います。莫大な資金力で、自然ばかりではなく競争相手をもねじ伏せるIT技術開発の手法ばかりでは、そろそろ限界ではないでしょうか。