世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

「蔵」の作者が参考にした酒蔵や豪農の屋敷などちょっと途中下車したくなる新発田

2008-02-17 21:38:38 | 世界遺産
 諏訪大社の古い御柱が再利用されているのを発見したのは新潟県の新発田にある諏訪神社でした。新潟から羽越本線へのバイパス線白新線の起点の駅というだけで、見過ごしていましたが、途中下車をしてみるとなかなか見所の多い町でした。

 2001年までは、大阪から青森までの長距離を走った特急に「白鳥」がありました。2002年に八戸から函館までを走る特急に名前を譲り復活しましたが、かつての「白鳥」は、1000kmを超える走行距離を誇っていました。この「白鳥」は、黎明期には新潟と大阪間では大阪と上野を北陸経由で結ぶ車両を併結するという面白い編成でした。長い歴史の中で、新潟に寄ったり、素通りしたりと、走行ルートが微妙に変化しましたが、新潟に寄った場合は白新線経由、寄らない場合は新津から羽越線に入っていました。どちらを通っても合流するのが新発田駅で、かつては、新発田といえばその程度の認識でした。

 新発田市は新潟市の東30km程度の場所に位置する新潟県で第4番目に人口の多い城下町です。御柱があった諏訪神社は駅の正面を出て200m程度の距離です。駅から行くと裏から境内にはいる感じです。

 神社の鳥居をくぐって表から出ると、左手に市島酒造があります。

酒蔵の中を見学させてもらえますが、入り口に「蔵」の一文字と宮尾登美子と彫られた石が飾られています。「蔵」の執筆に当たって、作者の宮尾登美子氏が訪れて参考にしたことを記念したもののようです。

「蔵」の作品の中では、それまで男性の職場とされていた酒造りに、女主人公が初の女性杜氏を目指すことが描かれていますが、市島酒造では、現実に全国初の女性生み現在でも数人の女性が活躍されています。

 市島酒造に寄った後は、国道をそのまま進むと新発田川に出ますが、川に沿って左折すると、新発田藩の下屋敷跡の清水公園と川に沿って足軽長屋があります。

清水公園は回遊式の庭園で、新潟以北では最も美しく規模も大きな庭園の一つのように思います。

 一方の足軽長屋は、八軒の長屋の遺構でおよそ50m程度のかなりの長さの建物です。

足軽といえども武家なのでしょうか、一軒分の広さは都会のマンション並みのようです。

 先ほどの市島酒造を起こした市島家の本家は、この地方の豪農で、その建物と庭園が残されています。新発田駅から羽越線を新津方向に2駅乗った月岡という駅から歩いても15分くらい。この駅の裏側は見渡す限りの田んぼで、こんなところに遺構があるのだろうかと不安になります。駅の表側にはほどほどの民家がありますが、夕暮近くになって訪れたときには、人の気配がありませんでした。さて、その市島邸ですが、さすがの豪農の邸宅です。敷地の面積は先ほどの清水公園の2倍ほどにもなり、こちらも回遊式の庭園があります。

建物や庭園だけでなく、収蔵品のお雛様など見るべきものが多くて、旅程の関係で、余り時間がなく駆け足での参観を悔やむところでした。おなじ羽越線の酒田には大名をしのぐ豪商の本間家がありましたが、かつての地主の財力も、大名にも匹敵するものだったのでしょうか。

 回遊式の庭園に入ると、いつもどのように廻ろうかと迷います。入り口付近には地図が表示されていて、その地図を頭に入れてから廻るのですが、初めての庭園では決まって、思った通りのコースが取れないようです。携帯に地図をダウウンロードする手もあるのでしょうが、地形図だけでは不完全でしょう。ただ、行き当たりばったりに迷いながら巡る方が新しい発見もあって面白いのかもしれません。名園といわれる庭の設計過程では、平面図的なもので作庭を下のでしょうが、3次元に広がる完成時の庭の風景は長年の感と経験で推定したのでしょうか。最近のCADでは、設計途中で鳥瞰図も簡単に見れるようで、前もって完成時の様子が推定できるようになったようです。ただ、生き物の植物を扱い、季節によって姿の変わる日本では、作庭士の技量のほうが勝っているのでしょう。