世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

天井からぶら下がる鮭の多さにびっくりする村上

2006-12-17 13:44:29 | 日本の町並み
 落ち葉が降り積もる季節です。掃いても掃いても降り積もる落ち葉で掃除をする人は大変でしょうが、落ち葉を踏みしるカサカサという音も季節を感じる音の一つではないでしょうか。この落ち葉の香りの付いた水を嗅ぎ分けて自分の生まれ育った川を遡上するのが鮭です。鮭は鋭い嗅覚で、数ある川の中から故郷の川を峻別するのですが、川の水の香りには流域の樹木の落ち葉が大きな影響を与えているといわれています。今月は、おびただしい数の鮭が通り土間にぶら下がる喜っ川(正式には七の字を3つ重ねる喜の略字を使われています)のある村上を紹介します。

 落ち葉は、ダンゴムシやミミズなどによって食べられたり、バクテリアによって分解されて、腐葉土になり樹木の養分になるというサイクルを取ります。園芸店で市販されている腐葉土は、ナラやクヌギなどの落ち葉が原料に使われることが多いようですが、同じ広葉樹でもイチョウの葉は腐りにくいので腐葉土の材料としては不向きなのだそうです。

初冬の風情を醸し出す落ち葉ですが、列車にとっては厄介もののようで、初冬の頃にはレールに積もった落ち葉で、スリップをして立ち往生をする事故がけっこうあるんですね。

 村上は新潟県の北部、もう少しで山形県という位置にあります。市街地は羽越本線の村上駅の東側にこじんまりと広がっています。鮭がぶら下がる喜っ川は、市役所の裏あたり、南北に通る商店街に、格子のある古めかしいお店を構えています。

 鮭と大書された暖簾をくぐって中に入って、

売り場を通り抜け、通り土間に踏み込むと、異様な景色にびっくりします。見渡す限りの頭の上に、天井から紐に結わえられた鮭がぶら下がっているのです。

酒浸しや焼漬などの原料となる鮭を熟成しているのだそうです。村上と鮭の結びつきは古く平安朝時代からで、三面川を遡上する鮭を献上品としていたようです。

 この村上では、商店街を中心に春の人形さま巡り展と秋の屏風まつりが開催されます。ともに、町家の中に雛人形や屏風が飾られて、訪問者は各々のお店に入ったり上がり込んだりして拝見します。筆者は屏風まつりのときに訪問しましたが、そのお店の方々から、屏風の歴史やいわれをお聞するだけでなく、伝統的な造りの町家の内部が拝見できたりで、なかなか楽しい思いをしました。

前述の喜っ川では屏風など伝統の品々を後世に伝えてゆく大変さをお聞きしたような気がします。

 都会では街路樹があっても、周りは舗装されているので、落ち葉はゴミとしてしか扱われなくなってきています。自然のサイクルが切れてしまい、落ち葉の養分が植物の栄養として利用されなくなっています。このサイクルを切れなくするのは、おそらく大変なコストがかかり、化成肥料などを木の周りに施すほうが安く済むのでしょうね。一方、携帯電話やコンピュータの世代交代は、めまぐるしい速度ですすみ、旧製品のおびただしい廃棄物を生んでいます。これらをリサイクルして再利用するのは、新しい材料よりコストがかかるのでしょうが、このコストは資源を次の世代まで伝えてゆくためには必要な社会投資ではないでしょうか。