世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

町中にお醤油のよい香りがただよう千葉県の野田

2006-07-09 14:24:48 | 日本の町並み
 酒どころの紹介が続きましたが、お酒といえば肴、その肴には生きの良いお刺身が日本酒には合うようです。刺身につきものはお醤油ですが、関西の薄口醤油に対して、関東では濃い口醤油が中心でその産地は銚子や野田が有名です。その中で千葉県の野田は利根川と江戸川の水運に恵まれて江戸時代から醤油生産の中心地として発展しました。醤油は、もともと和歌山県の湯浅などで生産されたものが船で江戸に運ばれていましたが、大消費地の江戸をバックに関西からの技術移転により野田などで生産されるようになったようです。

 西洋料理の味付けではもっぱら香辛料が活躍します。大航海時代にアジアから大量に運ばれたものも香辛料でした。ところが、その香辛料の産地のアジアでは発酵調味料が発達しました。魚や貝それに豆類のたんぱく質を発酵させて、アミノ酸などをのうまみ成分を利用するものです。タイやベトナムでのニョクマムは魚を原料としたもの、醤油や味噌は大豆と米を原料としたものです。韓国のキムチも魚介類を入れて発酵させるので、一種の発酵調味をした漬物といえるかもしれません。

 東武線の野田駅で下車して町の中を散歩すると、あちこちに大小の醤油工場が並んでいるのを目にします。大工場では、太いパイプが石油コンビナートを感じさせ、ちょっと味気ないところもありますが、同じように液体を扱う工場ゆえ外観が似てくるのかもしれません。これらの工場の中にキッコーマンの製造工場の煉瓦蔵が公開されていて、昔ながらの醤油作りの様子がガラス越しに見学できます。煉瓦蔵の筋向いには、江戸から昭和初期まで続いた醤油醸造の商家の遺構として上花輪歴史館が公開されています。昔使った道具やかつての醤油のラベルなどの展示に加えて、建物もお庭もずいぶんと広く予想外に楽しい時間を費やしてしまいました。

 香辛料による調味の西洋と発酵調味の東洋とで食文化の差を感じますが、日本ほど世界各国の料理が簡単に食べられる国も珍しいとも言われています。それぞれの国の文化は、歴史に支えられて時間をかけて培われてきましたが、交通や高速の通信回線などの発達で情報の流通の速度が速くなった現在では、お互いの国同士での文化が影響しあう速度も格段に速くなったと思います。独自の文化をどこまで保つべきか、文化の融合をどこまで許すか、という問題は、わが国にとっても今後ますます難しい課題となるのかもしれません。